ブックガイド(101)「管制塔に赤旗が翻った日―1978・3・26三里塚」 (1979年)


 1979年、柘植書房から出た本である。
 私が読んだのはその当時、大学3年のころである。買ったのは千種区今池のウニタ書房(と聞いただけで知ってる人ならニヤリと笑う、左翼系書店)であった。
 実は私の高校は公立進学校で、地元国立大学に進んだOBが中央委(生徒会)にオルグに来るほど左翼系の学校だった。卒業式の朝、校門の近くにゲバ棒や投石用の石などが隠してあって大問題になったこともあった。
 何しろ1973年の入学式の日に教室へ入った時、全員の机の上に「三里塚闘争を支援しよう」というガリ版刷りのチラシが置かれていたぐらい。その反動で大学に入ってからは体育会の武道部へ入ったぐらい。
 そんな三里塚闘争の華々しい瞬間がこの、1978年3月26日だった。
 成田空港開港直前、反対派は夜のうちに近くのマンホールから排水溝に潜って1㎞程歩き、管制塔と直線距離で約100m程の地下で一晩待機。翌日昼過ぎに管制塔へ突入、管制室を占拠して機器を破壊し、月末の開港を阻止しようとしたのだ。
 その顛末を、英雄的に歌い上げた書である。当時、これを読んでやや心情左翼だった私は、すべてを捨てて戦いに馳せ参じた彼らを少し羨ましく感じたものだった。
 親から、公立以外の大学なら県内しか行かせない、と言われて豊橋で大学生をやっていた私は、マンガや小説を気軽に出版社に持ち込める東京の学生がうらやましかった。文化活動や政治運動など、中央から離れた無風地内でくすぶっている自分に絶望感と焦燥感も持っていたわけだ。
 当時、そんな自分たち世代を「祭りなき世代」と自嘲していた。
 今、読み直すと、当時の若い世代が政治闘争に飛び込む心理が、その後の世代が「盗んだバイクで走りだしたり」するいら立ちや焦りと大差ないことがわかる。要は青春のもやもやだ(苦笑)
 当時、私の高校から三里塚に馳せ参じていた級友は、今でも社会運動に取り組んでいると人伝に聞いた。スズメ百まで踊り忘れずである。
 そんな、青春を思い出した。
※この本、現在は古本でしか入手できない。
「管制塔に赤旗が翻った日」


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