ブックガイド(72)「サイコセラピスト」(ハヤカワ・ポケットミステリ)


心理療法士と患者の目線

心理療法士を主人公にした昨今おなじみの設定である。英国の作家アレックス・マイクリーディーズの2019年の作品である。
日本でも12年前に「連続殺人鬼カエル男」(中山七里)という傑作がある。
今作では、心理療法士セオの目線と、彼が接するアリシアという患者の日記が交互に語られる構成で物語は進む。アリシアは本当に夫を殺したのか?
最後の最後に大どんでん返しが待っていて唸った。
でも少々長いけど。

ミステリのキャラクターのお約束

最近ミステリをよく読むようになってミステリの公式がわかってきた。
ミステリの性格上、どうしても「説明」が多くなる。その読みにくさを回避するために、探偵のキャラをエキセントリックなものにする。例としてはホームズをはじめとして金田一耕助もそれだ。
また、いわゆる頭の悪いワトスン役は、読者のミスリードを誘う役である。
いかにも怪しい容疑者を複数提示し、最後は全く予想外の人物を犯人にする。
この作品では、そのエキセントリック具合は、もともとセラピーを受けていたセラピストのキャラクターである。彼の内面的なモノローグ容疑者の日記で語られる。この二つのモノローグで、気持ちよくだまされる。ミステリファンにお勧めだ。
「サイコセラピスト」


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?