ブックガイド(112)香菜里屋シリーズ(北森鴻)


シリーズ第一巻

このシリーズは、バーマン工藤哲也が営むビアバー香菜里屋を舞台に展開される短編ミステリの連作である。
「花の下にて春死なむ」
「桜宵」
「蛍坂」
「香菜里屋を知っていますか」


連作ミステリのお手本

 各話に共通するのは、悩みや謎や迷いを抱えた語り手が、ふと立ち寄った小さなバー香菜里屋で、その内容を語る。常連達が感想や意見を交わし、最後に工藤が「~と言うことかもしれません」と控えめに謎を解く。それは残虐な殺人事件でもなく盗難事件でもない。日常に潜む、当事者の心の決着であったり、誤解の解消と和解であったり、謝罪の気持ちと許しであったりする。そして登場した語り手は、次の話以降は常連客の一人として店に来る。
 やがて、この謎の多い工藤というバーマンの過去が少しづつ明らかになっていく。正に連作ミステリーの王道とでもいえるシリーズだ。

シリーズを超えて登場するキャラ達

 北森鴻氏の他のシリーズでも感じたのだが、工藤の作る料理とカクテルが実に魅力的に描かれていて、それを味わうために冬狐堂・宇佐美陶子民俗学者の蓮杖那智など、他のシリーズの主役達がゲストのように登場するのもうれしい。あたかもマーベル・ユニバース。

映像化に最適では

 各話で謎を解きながら、全話を通すドラマとして、工藤の過去との決着を匂わせる。正に連続ミステリ・ドラマの教科書のような見事な展開。どこかで映像化してくれないものか?
 脚本は野木亜紀子さんを希望。地上波ならテレビ東京の深夜枠。WOWOWでもOK。
 工藤は高橋一生さんとかイメージであろうか。
 ドラマ化希望と、声を上げておく。
花の下にて春死なむ
桜宵
蛍坂
香菜里屋を知っていますか

最終巻

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