ブックガイド(108)「地上最後の刑事」


ハヤカワポケミスで読んだ。

 半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されている世界。ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。未来に悲観した自殺者は少なくないのだ。
 刑事たちも自分の長年の夢をかなえるために退職したりして人手不足である。
 新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。めんどくさい同僚たちは、自殺でええやんといった態度。パレスは呆れられながらも地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに……なぜ捜査をつづけるのか?
 巡査から刑事へ異動したパレスにとって、刑事こそがかなえたい夢だったのだ。

「半年後に滅びる世界」の設定部分はSFだが、それ以外は純然たるハードボイルドミステリ、警察ミステリとして進行する。そこが面白い。日本でも「屍人荘~」が孤立状況を生むためにゾンビというSF的設定を使った後、純然たるミステリとして進行する作品があり、昨今のトレンドなのかもしれない。
地上最後の刑事
(追記)
タイトルは原題も「THE LAST POLICE MAN」とそっけない。どうせならフィリップ・K・ディックの「流れよ我が涙と警官は言った」とか「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」とか「世界の中心で愛を叫んだ獣」みたいにひねったらいいのにと思った。

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