映画レビュー(82)「ホテルローヤル」


原作・桜木紫乃

 北海道、釧路湿原を望む高台のラブホテルの廃墟。
 廃墟でヌードを撮影するカップルのエピソードから、このホテルの過去の物語が始まる。美大受験に失敗した雅代は、家業であるホテルを手伝うことになる。
 アダルトグッズ会社の営業、宮川への恋心を秘めつつ黙々と仕事をこなす日々。甲斐性のない父・大吉を捨てた母は男と駆け落ち。父に代わり半ば諦めるように継いだホテルに訪れる様々な人の物語。心中事件を機に大吉が病に倒れ、雅代はホテルと、そして「自分の人生」に初めて向き合っていくことを決める。
  様々なお客のドラマ。ラスト、ヒロインは初めて観察者ではなく当事者として自分の人生を生きていこうとする。
 淡々とした語りだからこそ、じっくりと心にしみる。

「ホテルローヤル」

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