ブックガイド(106)「女たちが死んだ街で」(アイヴィ・ポコーダ)

ハヤカワ・ポケミス、外れなし感。


 現代の南カリフォルニア、サウスウエストを舞台に描くミステリ。
 十五年前に起きた連続娼婦殺人事件と同じような事件が再び起きる。当時の被害者、その家族、隣人達、事件を捜査する刑事、それぞれの視線で綴られる群像劇。
 視点となる人物が、すべて女性キャラクターで、それ故に現代アメリカ社会の抱える女性問題のそれぞれの女性の当事者としての感じ方が自然に頭に入ってくる。街に生きる女たちとは、ストリートに立つ街娼であり、ストリッパーであり、間違われた娘であり、女として軽視される防犯の刑事である。

女性目線で描く

 そして作者も女性。だが、決して声高ではなく、読者を説得調伏するような無粋な物語ではない。読者に気づかせるような語りなのだ。ヒステリックじゃない。そこが優れている。
 現在のエピソードと、過去のエピソード、視点となる人物を章ごとに替えながら進む群像劇の面白さを堪能させてくれる。
 いや本当にハヤカワポケミスには外れなしだ。
女たちが死んだ街で

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