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うきうきCOCKing

インフルエンザA型にかかってしまった。早めに薬を処方してもらえたおかげで高熱は出なかったが、あと2日間は家で待機しなければならない。
近所の人から譲ってもらった布団の上でオナニーしたり、共有の洗濯機を回したり、またオナニーしたり、廊下にクイックルワイパーをかけたり、またオナニーして寝落ちしたり、ダラダラと過ごしている。
摩擦のしすぎで小陰唇の色が「ローストビーフの端っこ」から「炭」に近づいてきたので、そろそろオナニー以外のこともした方がよさそうだ。
それならば、と料理を作ってみることにした。
「作ってみることにした」と簡単に書いているが、私にとっては「誕生日パーティーに大谷亮平を呼ぶ」とか「ジョン・ウィックの犬を殺す」くらいの難題である。

昔から、料理が苦手だ。
若い頃は「仕事帰りの彼氏のために夕飯を用意したい!」という殊勝な気持ちで料理にチャレンジしたが、できあがるものは皿の上に乗ったうんこばかりであった。自分で作ったフレンチトーストがあまりにも不味かったせいで、今でも匂いを嗅ぐだけで気持ち悪くなる。
学校の調理実習でも鍋の中身を混ぜる係か、あくを取る係くらいしかやらせてもらえなかった。家の台所で母親の手伝いをした記憶もほとんどなく、小さい頃にカレーを混ぜたりあくを取ったりした記憶がかろうじてあるくらいだ。なので、現在も混ぜてあくを取る作業だけは得意である。40年近く経ってもスキルがひとつも増えていないことに自分でも驚きを隠せない。
調理に参加できなかった理由は、ただひとつ。私が鈍臭いからである。
切る・剥く・焼くなどの作業が全くできないわけではないのだが、通常の倍の時間がかかる。なおかつミスも多く、それをカバーするために周りの人は更なる手間と時間が必要となるのだ。
なので、夕飯の時間までに何品も作らなけらばならない家庭や、授業時間内に作って食べて片付けなければならない実習では、私に任せられる工程がほぼないのある。何か手伝おうとすると、母やクラスメイトたちが「いいから座ってて!」と半ギレしていたのは、当然といえば当然のことだ。

それでも何とかやっているうちに、「自分のペースでゆっくり作れば、それっぽいものは出来上がる」ということに気づいた。
「○時までに○○しなきゃ」と焦れば焦るほどパニックになってうんこを量産してしまうので、レシピに書いてある所要時間の3倍を見込んで買い物を始め、休憩を挟んだりおやつを食べたりしながら時間を気にせず作業すれば、それなりの形と味になった。とにかく「焦らない」というのがポイントらしい。
おかげで、ものすごい時間をかければ料理は作れなくもないという自信がついた。しかし、料理好きな夫に毎日3食ご飯を作ってもらえる生活を18年続けた結果、再び「台所でオロオロする人」に戻っていた。
夫の家の台所は女人(というか私)禁制であり、料理どころか冷蔵庫を開けるだけで、「どうしたの!?」と夫が血相をかけて仕事部屋から飛び出してくる。一体、彼にどんなトラウマを植え付けてしまったのだろうか。

長い前置きになってしまったが、せっかくの自宅待機期間中なので、思い切って料理を作ってみることにした。人の数倍の時間をかけて出来上がったのが、こちらの料理だ。


うんこじゃねーかと思った方も多いと思うが、カレーである。
長年鍛え上げられた「混ぜる」「あくを取る」の技術を最大限に活かした逸品だ。味は普通に美味しかった。私が作っても美味しいのだから、日本の食品メーカーの企業努力はすごいと思う。

明日は、パンにつけて食べよう。カレーうどんにしてもいいかもしれない。大学25年生に与えられた突然の夏休みを、のんびり過ごそうと思う。


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