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年の暮れに佐藤さとる「コロボックルシリーズ」を思い出す

いよいよ年末ですね。
今年は年末ギリギリ、31日のついさっきまで仕事をしておりました。
おかげさまで今年も無事に年が越せそうです。

・怠け者の節句働き

皆さんが時間ができた時に声をかけていただく事が多いので、年末年始は比較的仕事をしていることが多く、そのたびに
「怠け者の節句働き」
という言葉を思い出しています。

意味はweblioによれば「普段怠けている者に限って、節句のような皆が休むときに働くものだという慣用句。皆が休んでいるときに限って張り切っている者を嘲る表現」だそうです。

・佐藤さとるのコロボックルシリーズ

この言葉を覚えたのは、昔読んだ佐藤さとるの児童ファンタジー、コロボックルシリーズでした。身長わずかに3センチほどの小人たちが活躍する物語で、ある年代より上の世代なら、一度は手にとったに違いない不朽の名作です。

「豆つぶほどの小さないぬ」は第2作。コロボックルたちが彼らよりもさらに小さな犬を捕まえる物語です。

作中、豆犬を捕まえるために罠を作るのですが、その制作がずれ込んで、正月にかかってしまいます。すると仲間の一人サクラノヒコが、
「こういうのを、怠け者の節句働きと言うんだぜ」
と笑いながら言うのです。

自嘲のようでありながら、余裕を感じさせるこのセリフは、子供心に実にかっこよく思われ、一回で頭に入ってしまいました。
ちなみにこの言葉、この作品以外では一度も見かけたことがなかったのにこれまでずっと忘れない。どれだけ印象に残ったかよくわかります。

それから数十年。とうとうその言葉を使う立場になりました。
嬉しいんだかなんだか。

・たぶん日本初の顎クイ告白シーン

話は変わって、顎クイはご存知ですか?
有名な壁ドンなどと同じく女性をときめかせるシチュエーションの1つ。男性が女性のアゴを指でつまんで自分の目を見つめさせる行為です。

先ほどの「豆つぶほどの小さないぬ」、この顎クイのシーンがあります。
物語の終盤、主人公のクリノヒコと仲間のクルミノヒメ(呼び名は、おチビ)の会話シーン。

おチビは、なにかいいそうにしたが、すぐにだまった。ぼくは、おチビのそばへかけより、あごをつまんでぼくのほうへ顔を向けさせた。
「きみはいい子だ。りこうで、元気で、働きもので、おまけに、魔女で詩人だ。だから大好きだ」

「豆つぶほどの小さないぬ」佐藤さとる

この本の初版が1960年。顎クイ告白のシーンとしてはかなり古いもので、もしかしたら日本初なのではないかと。
さすが佐藤さとる先生、先見の明があります。

ちなみに第三シリーズで、この二人が結婚したらしいことが明かされるのですが、その表現も実にさり気なく、センスあるものでした。

・佐藤さとる作品といえば

子供の物語であっても手加減せず、ファンタジ-でありながらリアルを追求した、素晴らしい作家でした。
代表作に数えられることは少ないのですが「わんぱく天国」も名作の1つ。横須賀の子どもたちのイキイキした遊びを描く物語なのですが、実は静かな反戦文学でもあります。決して押し付けがましくなく、静かに痛みを感じさせるあの作品は本当に…。

語りだすと長くなるのですが、そろそろ時間となりました。
今年の更新はこれで終わり。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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