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バリアフリービーチの全容とこれから・・・

こんにちは。
今回は、8/10に中国地方では初めて開催された“バリアフリービーチ in 三原”について書かせてもらいます。
なぜ、僕がこの企画をしようと思ったのか。これをしたことで何を感じたのか。これからどうしていくのか。そんなことを書いていきます。

来年の活動費にするために、有料にしようか迷ったのですが、幅広く知ってもらうために無料でお届けすることにしました。

なので、シェアしてくれると嬉しいです。
少々長い記事になりますが、どうかお付き合いください。

こちらが、イベント時の動画です。

そもそも私について

僕は広島県三原市在住、27歳です。理学療法士という仕事をしています。いわゆるリハビリ職です。

BFB 報告会 9:27.006

リハビリってどのようなイメージ持たれてますか?
怪我した後のリハビリ、脳卒中になった後のリハビリ、リハビリ体操。
世間一般では“運動”とい意味合いが強いのではないかと想像します。

リハビリ学生は、実習というものが必須科目になっており、何施設か訪問させて頂き、実際の患者さんに対して、評価や治療プログラムの立案、プログラム実施を行います。

僕はTKAという、膝の人工関節の手術をされた患者さんが担当でした。基本的には医師の指示のもと、膝の関節運動や家での生活を考えた運動プログラムを実施します。大半の患者さんは、入院される前より、膝の痛みも減り元気になって家に帰られます。

そういった患者さんを経験させてもらい、いつのまにか、リハビリをすれば身体は良くなり、家に帰ることができるんだ。固定観念を持っていました。

就職した施設で待ち受けていた現実・・・

それは“良くならない”ということでした。

リハビリをすれば良くなるという固定観念に陥っていた僕は何をすれば良いのかわからなくなってしまいました。

リハビリテーションという意味の再考

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理学療法士として何をすればわからなくなった僕は今一度、リハビリテーションとはなんだろうかと考えました。

学生時代に習っていたはずですが、すっかり記憶から抜けていました。
リハビリテーションにも、医学的・教育的・社会的・職業的と4つありました。どれも単体で行われるものではなく、様々にオーバーラップをしています。

例えば、大工さんが屋根から転落して骨折したとします。手術やレントゲンなどの検査、筋力強化や関節可動域訓練をすることがあると思います。これが医学的リハビリテーションです。
並行して、職業復帰をしなければなりません。職業特有の体の使い方や職業によって体への負担のかかり方も異なります。そのように特性に合わせて職業的リハビリテーションも行って行きます。

“1982年に国連・障害者世界行動計画で定義されたリハビリテーション”
「身体的、精神的、かつまた社会的に最も適した機能水準の達成を可能とすることによって、各個人が自らの人生を変革していくための手段を提供していくことを目指し、かつ時間を限定したプロセスである。」

つまり、リハビリテーションは病気の人だけのものでもなく、障害がある人のためだけのものでもありません。誰にでも適応される考え方です。

この中で大事だと感じる言葉は「各個人が自らの人生を変革していくため」という部分です。

主体がリハビリを提供する人ではなく、リハビリを受ける「あなた」であるということです。

BFB 報告会 9:27.009

僕の中でのリハビリテーションは「あなたのありたい姿を支援する」です。

就職して何をすればわからなくなっていた自分。確かに高齢で慢性期や生活期と言われる人たちは、劇的に身体機能は良くならないし、どちからというと加齢に応じて低下していきます。

「身体機能にこだわらなくたっていいんだ」

そう思えた時にパッと視界が広くなったのを今でも覚えています。

働く中での疑問・・・


BFB 報告会 9:27.012

今まで、デイケア、デイサービス、病院、老人ホームと経験してきています。その中で、障害があっても暮らしやすくなるためにはどのようなことが必要なのかな・・・と考えるようになりました。

1つのきっかけ

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僕とって重要なイベントだったのが、「デンマークキャンプ in 焼津」に参加したことでした。

デンマークの障害がある方、そうでない方、日本の障害がある方、そうでない方が一緒に3泊4日のキャンプをしました。

BFB 報告会 9:27.014

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海へ山へと障害が有る無しに関わらず、めちゃくちゃ遊びました。
短い期間ですが、デンマーク人の障害がある方への接し方をみてとても勉強になりました。

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これからの日本に大切なのはこれなのかな。もしかすると、障害があっても暮らしやくなるのかな。と感じました。

デンマーク人は、困っている人を見かけると、障害がある方、そうでない方に関係なく、「手伝おうか?」と気軽に声をかけていました。

「障害」という言葉でくくるのではなく、「困っている」ことに対して。ここが本当に大切だと思います。

日本では、もし声をかけて嫌がられたらどうしようかな。店員さんや駅員さんが声かけるはずだからやめておこうかな。とそうなるかどうかもわからない想像をして、勇気を出せないことが多いのではないかと思います。良くも悪くも空気を読んでしまいます。

その状況から、どうなるかわからないけど、「手伝いますよ」と気軽に声をかけれるように“思いやりのアップデート”が必要だと感じました。

僕にとっても、障害がある人にとっても、「街の人」も環境です。段差を解消するように、環境が変われば暮らしやすくなります。

僕にできる社会的リハビリテーションは「街の人」の意識を変える取り組みです。

1つの手段としてのバリアフリービーチ

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バリアフリービーチは鎌倉から始まり全国へ広がっていますが、西日本では兵庫県であり、さらに西になると沖縄で開催されているだけでした。中国地方や九州本土では開催されていませんでした。

BFB 報告会 9:27.022

資金調達ではクラウドファンディングを使わせてもらいました。このサービスを使うことは賛否両論あると思います。新しい事業を行うときの初期投資に活用されることは良くありますが、継続的な活動に置いて、クラウドファンディングを活用することは望ましくないという認識が僕にはありました。

しかし、前例を作るという意味での初期投資。前例を作れば、助成金を来年度から受託されやすいかもしれません。協賛金だって集まりやすいかもしれません。そして、何より「広報」という役割が大きいと感じ、取り組みました。

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そしてバリアフリービーチを取り組むにあたり、2つの目標を掲げました。障害がある人へのアプローチと街の人へのアプローチです。

そして、イベントとして何より大切したかったことが、「支援する側・支援される側」という関係性ではなく、“共に楽しむ”ということでした。

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立てた数値目標がこちらです。

福祉的なイベントにはどうしても目標や目的意識、評価指標というのが抜けがちです。来年に繋げるためにも、関係各所へプレゼンをするときにも数値で表すというのはとても大切に感じます。

参加者の属性とアンケート結果

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【障害がある人】

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【参加者(ボランティア)】

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全てのアンケート項目において、当初の目標を達成していました。しかし、この回答を鵜呑みにするのではなく、批判的にも捉える必要はあるなと感じています。

やってみて気づいた課題

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・海用車椅子の老朽化
安全ベルトが使いにくかったり、純粋に車椅子のデザインがいまいちでした。もっと乗りたいと思えて機能的な車椅子はあります。


・更衣スペース
今回の会場になったビーチは、珍しく広い多目的更衣室があります。そして、海用車椅子に乗った状態でシャワーを浴びることができる設備があります。これは本当に素晴らしいことです。寝て着替えるベンチも用意されています。残念だったのはベンチが小さいことだったことです。140cm程度の人であれば寝て着替えることができます。しかし、ベンチの幅が少なく、寝返りをしながら着替えることができません。


・場内アナウンス問題
管理人が「今日は特別な催し物をしています。向こうの側(イベント開催地点と反対のところ)も使ってください。」と言われていました。悪気はないと思いますし、管理する側だとしたら、全員に安全に楽しんでもらいたいという気持ちになることは理解できます。しかし、分けるのではなく、譲り合う配慮の方が重要になると思います。


・Tシャツ問題
今回は、イベント参加者と一緒に楽しもう!という思いで作りました。これを作ったことで目立つしイベントをやっている感は出ます。しかし、そのインパクトが強すぎて、一般遊泳客との溝を生む結果となったことも事実です。来年は方法を変えてチャレンジしようと思います。


・環境は整っているけど・・・問題
確かに、会場となったビーチは全国的にみてもバリアフリー化が進んでいるのではないかと感じます。今回、イベントをやってみてわかりましたが、いくら環境は整っていても、実際に着替えをしたり、食事のことを考えたり、行くまでの移動手段を考えたりとかなり大変です。今の自分にはどの部分のバリアを取り除けばもっと行きやすくなるのかわかりませんが、来年はそこ向かっても動きます。

バリアフリービーチの価値とは

BFB 報告会 9:27.029

この事業が誰にとってどのような価値があるのか。これを考えないと来年の予算をとることはできません。
現時点で考えられるのはこの3つです。


・福祉
障害がある方に対してはイベントに参加して何かを達成することによる、自己効力感の向上を図ることが目的です。


・観光
今まで観光にくることができなかった層へアプローチすることができます。実際にこのイベントを開催するにあたり、大分県からも問い合わせがきました。“海”、“バリアフリー”というキーワードにおいては、うまく発信することができれば中国地方より西へアプローチかけることができます。


・教育
小さいころから、障害や福祉というものに対して実践的に学びを深める機会は皆無に近い状態です。このイベントを開催することで、一般遊泳客にも車椅子ユーザーでも海に入ることができる。自分の住む地域に障害がある方が暮らしているんだ。と学ぶきっかけになり得ます。
今回のイベント開催時にも、子供が「車椅子かっこいいね」とコミュニケーションをとる場面もありました。教科書や文字で学ぶのではなく、肌感覚で感じることができるのは非常に大きいと思います。

バリアフリービーチ in 三原 実行委員会で取り組むべき部分

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三原市においても様々な組織が様々なことを取り組んでいます。誰とも競合にならない部分、取り組めていない部分にフォーカスする必要があると考えています。

行政は必要最低限度、つまり生存権に関する部分で整備をしています。これは“生きて”いくために非常に重要です。素人の僕がここに介入できるとも思いません。生きることができなければ“楽しむ”ことはできません。


社会福祉協議会はボランティアを中心に、生きてはいけるけど、もう少しサービスがあれば暮らしやすくなるのにといった狭間をサポートしてくれている印象です。


NPO法人は取り組む会社によって分野が様々なので、守備範囲が広いです。
我々、実行委員会ではそのどれもがあまりできていない、“暮らし”よりで“優先度は低い”部分でポジションどりができたら良いなと考えています。

来年度に向けて取り組むこと

BFB 報告会 9:27.032

・イベント開催
来年も継続して行おうと考えています。しかし、意味合いとしては広い意味で広報が強くなると思います。また、バリアフリー機器の取り扱い方や周知などもしていければと思っています。

・調査事業
そもそも、どれくらいの方が海へ入りたいと感じているのか、ビーチの設備が整っていることを知っているのか。などなど。
海が選択肢になるためにはどのようなサポートが必要なのかを調査していきます。これは、社会福祉課さんにも協力してもらう予定で話が進んでいます。

BFB 報告会 9:27.033

来年は、障害がある方をもう少し増やしたいです。しかし、当日のオペレーションの問題など解決しないといけないことはあります。今後、詰めていければ良いと思います。

今年は“対話”の時間を作るためのきっかけに絵を一緒に書く時間を設けていました。想像していたようにはいかず、上手く対話をデザインすることができませんでした。来年はもっと違う方法でアプローチをしたいと思っています。

そして、当事者の方に運営に入ってもらいたいと思っています。どうしても自分たちだけで企画・運営を進めていたらエゴが強くなっていくし、誰のためにやっているのかわからなくなる時期がくると思います。そういったことにならないように当事者の方に入ってもらって、常に改善をしていきたいです。そして、小さいことでも良いので一緒にやれると、その人の自己肯定感や自己効力感が高まると思っています。

僕が挑戦してみたいこと

僕がこの実行委員でも他の団体の活動においても共通していることは、
“福祉と出会うきっかけをデザインする”ということです。

「福祉」と「暮らし」というのは、なぜか交わり辛い印象があります。それをどうにか馴染ませることができたら良いなと常々考えています。

そのためには「福祉」側に楽しみを持ってくるのではなく、「暮らし」に福祉の要素を入れることが大事だと思います。

そして、「福祉を学ぼう」と思って集まるのではなく、“楽しい・嬉しい・かっこいい・可愛い・おしゃれ”などのポジティブな感情を感じれることが非常に重要だと思います。“結果的に学べてた”というデザインをすることをやっていきたいと思っています。

来年に向けて、バリアフリービーチ、音楽イベント、アートワークショップ、駄菓子屋等々、企画を今から進めています。

僕自身、“楽しい”と思えないと動けないタイプの人間なので、きっと面白くなると思います。

ぜひ、興味あることで関わってくださる方いらっしゃいましたら、嬉しいです。


みんなで、楽しみながら、ちょっとずつ、良い方向へ・・・


橋本

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