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エッセイ タイムレンダ

子供に「これは面白いから見た方がいい」
と薦められていたが、観る時間がなく、
そのままにしていたアニメがあった。

ところが昨年の年末に、ある配信動画で、
あと7日で配信終了と通知が来て、
慌てて観た。

「サマータイムレンダ」(2022)である。
※()内は放送・公開・刊行された年。

ジャンプ+で連載されていた漫画をアニメ化
したもので、とにかく面白い。全25話。
(内容には触れません。気になる方は
観てください。)

ちなみにタイムレンダとは何かと、ネットで
調べたが、僕にはよくわからなかった。
タイムループのことかと勝手に解釈。

この手を素材にした映画やアニメ、小説は、
事欠かない。それぞれに工夫が凝らされて
おり、少しずつ状況は変わるのだが、
時間をループしていることは同じである。

映画では、トム・クルーズの
「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
(2014)だろう。原作は桜坂洋による日本の
ライトノベル。これは本当に面白い。
ファミコン世代なら、なおさらだろう。
ミスしたゲームをやり直すために、リセッ
トボタンを押しまくった経験があれば、
リセットしまくる主人公を見て、絶対クリ
アさせるんだ、という熱い想いを思い出す
のではないか。
(何を契機にリセットが行われるのかは、
ネタバレになるのでいいません。)

いったい、何回リセットしているんだと思
うくらい、タイムループを繰り返し、ダメ
軍人から世界を救う救世主に成長していく
主人公に自分を重ね合わせ、一緒にゲーム
をしている感覚で見れるこの映画は、
何回見ても見飽きない映画のひとつだと
思う。

別のアニメでは、これも子供に見せられた
のだが、「涼宮ハルヒの憂鬱」(2009)の
エンドレスエイト。エピソード12~19
の8話。
高校生の夏休みの出来事を1話完結で語ら
れるのだが、8話の内容が全く同じ。
服とか、目線とか、配置が変わるくらいで
セリフも物語も同じ内容が繰り返される。
劇中ではこの繰り返しが1万回以上繰り返
されていて、皆これに気付いていないと
いう設定。

うる星やつら「ビューティフル・ドリ
ーマー」(1984)を思い出すが、驚くのは、
1万回以上繰り返しているこの状況を観察
している人(つまり気づいている人)が
1名いるのだ。8回繰り返し見ただけで
ウンザリしてしまうのに、1万回繰り返す
ことを想像したら、いや想像したくもない。
作り手側がそれを狙って作ってると感じる
ほどの徹底ぶりには、脱帽である。

小説に至れば、たぶん、たくさんある。

最近映画化されたロバート・A・ハインラ
インの「夏への扉」(ハヤカワ文庫)も
そうだ。映画は観ていないが本は読んだ。
原作が日本で刊行されたのは1979年。40年
以上前である。
これまでのタイムループは超常現象的な、
人の手の及ばない形でのループだったが、
この本では人の手でタイムループが行われ
る。しかも、納得が行く形で。
40年を経ても読まれるSF小説だけに
話しの内容も凝っているし、ラストは胸に
残る。いうまでもなく名作である。

もうひとつ、僕が頭に浮かぶのは星新一
の「時の渦」。
(星新一ファンなので、紹介させて
ください。)
新潮文庫「白い服の男」(1968)に収められ
ている。

「その現象はなんの理由も必然性もなし
に、この世界をおおいつくした。」

で始まるこのショートショートは、同じ
時間を繰り返すという点では、上記のお話
しと同じなのだが、こちらは同じ一日を繰
り返すのだ。同じ一日を繰り返しながら、
人間の時間だけが過去に遡り、過去に死ん
だ人が次々と現れ出す。そして過去に起き
た出来事の検証が始まる。
何が本当だったのか、真実が洗われてゆく
という内容。
もちろん、ラストには驚く結末が待ってい
る。少し毛色が違っているけど、
着眼点が星新一ならではで、さすがという
しかない。

こうやって、時間を遡りながら、タイム
ループの物語を紹介してきたが、どの時代
のタイムループ物も内容が古びていない。
そして、その内容のまま現在に現れる。
これもタイムループなのではないかと感じ
るのは、気のせいだろうか。

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