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ごめんなさい曾我蕭白さん。トーハクの蝦蟇鉄拐図……すごかったです

先日、『トーハクの4月の常設展の充実っぷりが半端ないです!』というnoteを記しました。それから隙さえあれば見に行こうと思っていたのですが、やっと先ほど(金夜)、東京国立博物館(トーハク)へ行って、展示替えされた作品のいくつかを見てきました。

思ったとおりに素晴らしい作品があったのですが……意外だったのが、曾我蕭白しょうはくさんの《蝦墓鉄拐龱屏風(がまてっかいずびょうぶ)》です。先日のnoteでは「個人的には《蝦蟇鉄拐図屏風》は、それほど……(楽しみにしていない)」と記してしまったのですが、展示されている本館2階の8室に入り、近くに寄ったところで……「すんません。すごいですね」と思いました。

《蝦墓鉄拐龱屏風(がまてっかいずびょうぶ) А-1295》
曽我蕭白筆|江戸時代・18世紀|紙本墨画

下の写真くらいに右隻が視界いっぱいになるくらいに近づいた時に、「すごいねこれ」と思いました。そもそも、なぜ「そんなに楽しみにしていない」と書いたかといえば、これまで中国の仙人ネタを見ても、「こりゃすごい」って思えたことがなかったんですよね。その経験から、曾我蕭白の《蝦墓鉄拐龱屏風(がまてっかいずびょうぶ)》にも期待していませんでした。

それが、近づいて見ると、Wikipediaに書いてある「濃墨を用い、荒々しい筆致で樹木や岩をデフォルメして描く作風」は、ものすごい迫力で、わたしに迫ってきました。

いや、わたしの中では、この変な顔(↓)はそんなに重要じゃないんですよね。そこではなく、一見すると荒々しい筆致なのですが、よく見ると精緻な筆致という、相反する2つが両立している……けっこう日本画では、こういう人が多くて、これまでもそうした作品に、たびたび接しているような気がします。曾我蕭白さんも、奇想ではなく、ギャップが素敵なんだと思いました……あくまでわたしはそう思っただけですけどね。

もっと服の部分を撮ってくれば説明しやすかった気がしますけれど、ボロッボロの服がぽちゃぽちゃぽちゃと墨を塗ったのか垂らしたのかわかりませんが、おそらく曾我蕭白さんが描いている様子を見たら「雑じゃね?」って思うような描き方だったと想像します。それが、完成して近くまで寄ってみると、ボロッボロな雰囲気がひしひしと伝わってきます。さらに服のはだけた部分から見える強靭そうな肉体の表現も、すげぇな! と感じたポイントです。

2024年4月29日に追加した画像です
2024年4月29日に追加した画像です

そして、飛び出てきそうな鉄拐てっかいさんの背景には、巨木がうっすらと描かれていることで、奥行きを感じさせます。その巨木に目を向けると、枝が右隻の左側へと伸びています。この枝の線が繊細なこと。

で、フッとなにかを飛ばしていますよね。これは鉄拐てっかいさんが魂を飛ばしているそうです。この方、今の言い方であれば、幽体離脱ができた人なんですね。その飛ばした魂も、屏風のどこかに描かれているのかもしれませんが、わたしには分かりませんでした。

さらに左隻に描かれているのは、「蝦蟇(がま)仙人」です。詳しくは知りませんが、この蝦蟇さんと鉄拐さんは、別に同時代の人でもなさそうですし、知り合いだったわけでもないようです。なんか、屏風を見ると、互いの得意技を出し合って、対峙しているように見えるのですが……これは顔騎がんきという人が、蝦蟇と鉄拐を対にして描いたことから始まっているようです。この顔騎がんきさんっていう人……かなり影響力があった絵師なんだなぁ……。

この蝦蟇仙人は、解説パネルによれば「3本足の蟾除(ヒキガエル)を操り妖術を使うことができた」ということです。どんな妖術を使っていたんですかね……。

ちなみに中国のこの2人の仙人ですが、Wikipediaによれば、鉄拐さんは人気でメジャーですが、蝦蟇さんについてマイナーな仙人だということです。それなのに日本では、仙人の中でも特に蝦蟇さんは「絵画、装飾品、歌舞伎・浄瑠璃など様々な形で描かれている」そうです。

蝦蟇と鉄拐の2人をまとめると……
鉄拐さん:魂を他の場所へ飛ばす……幽体離脱が可能。足が悪く鉄の杖を持っている。
蝦蟇仙人さん:ヒキガエルを自在に操れる……操って何をするのか? なぜか桃を持っている。

そしてカエルと言えば……

楽しみにしていた増山雪斎さんの『虫豸帖(ちゅうじじょう)』の、春か冬のどちらかにたくさん載っていました(春ですかね…)。『虫豸帖(ちゅうじじょう)』……カエルや蝶(蛾)が精緻に描かれた素晴らしいものでした。

カエルと言えばさらに……

……本館2階にある高円宮の根付コレクションの部屋にも、カエルがいました。たしかこの部屋も最近展示替えされたかと思います。今回は少ないのですが、以前紹介した時には、このカエルを含めた数個のカエル作品が同時に展示されていました。カエルの置き物って色々と売っているし、日本人ってカエルが大好きなのかもしれませんね(日本人に限らないかもしれませんけど)。

ということで、その他にも伝岩佐又兵衛や本阿弥光悦、円山応挙なども見てきましたが、どれも期待通りにすばらしいものでした。今日は混んでいてゆっくりと見られませんでしたが……今度またゆっくりと見られればいいなと思っています。

それでは

《写生帖(しゃせいじょう) 乙帖》
円山応挙筆| 江戸時代・18世紀|紙本着色
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