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どうしてこんなに色っぽい?恋愛をテーマとした“インドの細密画”……@東京国立博物館

東京国立博物館(トーハク)の東洋館には、東アジアの遺物が展示されています。なかでも、どうしたって目立ってしまうのが、インド系の展示品……特に女性をかたどった像や描いた絵です。なぜって、女性がものすごくセクシーなんですよね。

そうしたインド系の展示品がかたまって展示されているのが、地下一階の「インドの細密画」コーナーです。おそらくトーハクの中では「え!? ここにも展示コーナーがあるんだ?」と思ってしまうワーストランキング 5位以内に入るような、目立たないスペースに“こっそり”展示されています。そして今月1月28日までは、恋愛をテーマに細密画が展開されています。

トーハク東洋館の地下一階 13室の天井までありそうな大きな大きな展示ケース……の“裏”に、隠すように展示されています
《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》ラクナウ派|インド|18世紀前
半紙に水彩、金彩
TA-647-9

「ナーヤカはヒーローを、ナーイカはヒロインを意味」するそうです。解説パネルの文言を見て始めて気がついたのですが、ヒーローのナーヤカが、遠くを見つめながら、ヒロイン=ナーイカの胸をもみもみしちゃっています。解説パネルには「背後から抱きかかえています」とありますけど……いや、そんな生易しいものじゃないっスね。

《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》
ラクナウ派|インド|18世紀前半紙に水彩、金彩
TA-647-9
《テラスで愛し合う王子と王女》
ラクナウ派|インド|18世紀前・半紙に水彩、金彩
TA-647-10

こちらも男女がテラスで愛し合っています。構図としては、だいたい先ほどの《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》と同じです。まぁこちらは王子の手が、すれすれ胸にはかからず、脇に添えている……という感じです。

《テラスで愛し合う王子と王女》
《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》
ファキール・ウラー筆 (ラクナウ派) |インド|18世紀|紙に水彩、金彩
TA-647-11

男女のいちゃいちゃ絵画の第3弾目です。なんでしょうね……引いて見るとすがすがしい感じなのですが、近づいてみるとエロいというか……。こういう絵は17世紀から“しばしば”見られるのだそうです。だれが、家のどんな場所に飾るんでしょうか? でも、リビングの壁に飾ってあったら、家族が少しハッピーな気分になるかもしれませんね。

《宮殿のテラスでのパーティーで酔った女性たち》
ラクナウ派|インド|18世紀中頃|紙にインク、黒鉛
TA-647-13

解説パネルには「宮殿のテラスで催されたパーティーで女性たちがすっかり酔いつぶれてしまった様子を描いています」と、優しい言葉で記されていますが……これは乱痴気騒ぎですね。

素描だからなのか……それともこのまま胸が丸見えの半裸の状態で完成させようとしたのか分かりませんが……赤裸々な感じですね。

これまで何度も、このコーナーでインド細密画を見ています。いつも女性は色っぽいしセクシーな雰囲気をまとっていますが……今回はそれにエロティックがかなり加えられています。なんだかいつもよりも絵師たちの筆致に、勢いがあるように感じる……と言ったら言い過ぎでしょうか。

《三曲法のポーズのナーイカ》
ジャイプル派|インド|18世紀後半 |紙に水彩、金彩
TA-647-32

やっと落ち着いた感じの絵になりました。《三曲法のポーズのナーイカ》……三曲法というのが何か分かりませんが、腰、胴、首をくねくねとさせたのが「三曲法のポーズ」なんでしょうか……。鹿が近づいて誘われるように近づいていますが、実はヒーローのナーヤカが鹿に化けて近づいている……なんてことはないでしょうね。

それにしても、絵の周縁の文様というかテキスタイルが素敵すぎますね……と思ったら、解説パネルには「外縁部の植物文様は後補」とあります。後から追加したということでしょうか。

《木に寄りかかるナーイカ》TA-647-89
ピーカーネール派|インド|18世紀| 紙に水彩、金彩

ナーイカは真っ赤なガーグラーと緑の チョーリーを着て、細い木によりかかっています。右の掌はヘンナで彩られ、ペンダントや腕輪、足輪などで飾り立てています。背景の暗い色調から夕暮れのたたずまいが感じられます。

《木に寄りかかるナーイカ》解説パネル
《棘を抜く女(ヴリクシカ・ナーイカ)》TA-647-160
ジャイプル派|インド|19世紀後半紙に水彩、金彩

ナーイカはヒロインを意味し、インドの諸芸術 に登場する重要な存在です。ナーイカは侍女の助 けを借りながら、左手で細い樹木の枝をつかみ、足裏に刺さった棘を抜いています。インドでは古来、この姿勢をシャーラバンジカーとよび、豊穣を象徴してきました。男女の愛を描いた図の中にもこうした図像が借用されています。

《棘を抜く女(ヴリクシカ・ナーイカ)》解説パネル
《ナーイカを膝に乗せて矢をつがえるナーヤカ(ヴィーバーサ・ラーギニー)》TA-647-85

ベッドの上でナーヤカが膝の上にナーイカ を乗せながら、白い花でできた弓に矢をつがえ、朝の訪れを告げる雄鶏を狙っています。これはヴィーバーサ・ラーギニーという音楽 を絵画に表現したものです。ただこの作品に は雄鶏が描かれていません。

解説パネル《ナーイカを膝に乗せて矢をつがえるナーヤカ》
《木に寄りかかって休むナーイカ》TA-647-90
ピーカーネール派|インド|18世紀後半 | 紙に水彩、金彩

樹の幹にひじをかけ、うつむくナーイカは、物憂げな様子です。背景は薄緑色で彩られ、黄土色の空には白く縁取られた青い雲が浮かんでいます。草が生い茂る丘を緑色で描き、そこには花が咲いた木を1本描いています。

《木に寄りかかって休むナーイカ》解説パネル


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