見出し画像

東京国立博物館で開催中の『国宝展』の見どころ

東京国立博物館トーハクでは、12月11日(日)の期間で、『国宝 東京国立博物館のすべて』と題した特別展が開催中です。同館所蔵の国宝89件が一気に見られるという、スペシャルな企画です(展示替えがあるため、89件の全てを見るのには3回行く必要があります)。

ということで、今回は、その見どころを、これまでトーハクに関して記したnoteを振り返りながら、紹介していきます。

■トーハクに、上野動物園の麒麟が帰ってきています!

トーハクと同じ上野の山にある上野動物園は、日本初の動物園です。一般的にはパンダで有名かもしれませんが、同園に日本初のキリンがドイツからやってきたのは、明治40(1907)年3月15日のことでした。2頭のキリンがやってきましたが、あいにく翌年3月には、2頭とも亡くなってしまいました。

その後、2頭は剥製にされて、当時の帝室博物館(現:トーハク)に移されます。当時の上野動物園は、帝室博物館に所属する動物園でした。いわば帝博グループだったわけです(その後、1924年に分離しました)。その後、剥製となったキリンたちは、関東大震災で展示品の全てを焼失してしまった東京博物館(国立科学博物館の前身)へ移されます(この頃、帝室博物館の自然科学系の展示品が、すべて東京博物館へ移管されています)。そして現在は、茨城県つくば市にある国立科学博物館の収蔵庫に保管されています。

そんなキリンの剥製が、約100年ぶりにトーハクへ戻ってきていて、開催中の特別展で展示されているそうです。これは、見てみたいなぁ……。

■孝明天皇や明治天皇が乗った鳳輦(ほうれん)を展示中!

1868年といえば、徳川幕府が終焉した年ですが、合わせて東京がザワつくことが起こります。そうです、東京へ初めて天皇が来られて、東京が実質的な首都となったのです。

当時の明治天皇が初めて東京へ来られる時の乗り物が……鳳輦ほうれんです。屋根に鳳凰が飾られた天子=天皇の乗り物です。

戦前の……第二次大戦(太平洋戦争)以前の……帝室博物館(トーハクの前身)では、どうやらこの鳳輦ほうれんが常設展示されていた時期があったようです。おそらく戦後は展示されることなく、収蔵庫の中にしまわれていたのでしょう。そんな鳳輦ほうれんが、特別展では最低でも70年ぶりに展示されています(すいません。戦後に展示されたことがないだろうというのは推測です。もしかすると何度か展示されているのかもしれません)。

これも見たいですねぇ……。

見どころのトップ2が、なんと「国宝ではない」という……。ただしですね……トーハク所蔵の国宝は、定期的に展示されているんです。そのため、トーハクで、いつか展示されるんですよ。でも、このキリンと鳳輦ほうれんは、特別展が終わった後は、もう見られないかもしれないんです(キリンは、国立科学博物館が不定期で開催する特別ツアーに当選すれば、見られるようです)。

トーハク公式サイトに掲載されていた、鳳輦ほうれんが展示されている様子です

特に鳳輦ほうれんは、東京都立美術館で開催されたボストン美術館展のため、このまえ来日したばかりの『寛政内裏だいり遷幸せんこう図屏風』にも描かれているもの……かもしれないんです。

吉村周圭『寛政内裏遷幸図屏風(左隻)』江戸時代、寛政2〜7年(1790〜1795)。屏風の左下の、朱色の一団が担いでいるのが鳳輦ほうれんです。(画像は、ボストン美術館より)

これに関しては確証が得られていません。でもおそらく、この寛政の内裏遷幸の際に、光格天皇のために作られた鳳輦ほうれんが、孝明天皇の東京奠都てんと時にも使われたのではないかと思います。今回の特別展の解説パネルで、そのあたりをなんて書いてあるかを確認したいんですよね……いざ、目の前にしたら確認するのを忘れてしまってそうですけどね。

■刀剣好きは、本館の刀剣コーナーもお見逃しなく

特別に刀剣が大好きというほどではないのですが、昨今の刀剣人気は、眼を見張るものがあります。そんな刀剣が大好きという方は、今回の特別展にも多いのだと予想できます。

なぜかと言えば、国宝に指定されている太刀、刀、短刀など19件の国宝が展示されているからです。なかでも『刀剣乱舞』などで人気を博している下記6件(振)は、見逃せないはずです。

太刀 銘 三条(名物 三日月宗近)
太刀 銘備前国包平作(名物 大包平)
短刀 銘 吉光(名物 厚藤四郎)
刀 無銘貞宗(名物 亀甲貞宗)
太刀 銘 長光(大般若長光)
太刀 銘 備前国長船住景光 元亨二年五月日(小龍景光)

そのほか、上記の刀剣用に作られたこしらえも、いくつかがトーハク本館の2階(5室)に展示されているので、見ておくことをおすすめします。

またですね……特別展には、刀剣に分類されていないかもしれない太刀が、いくつか展示されているはずです。

一つが、奈良県の東大寺山古墳から出土した『家形飾環頭大刀いえがたかざりかんとうたち』や『金錯銘花形飾環頭大刀きんさくめいはながたかざりかんとうたち』。

もう一つが、熊本県の江田船山古墳から出土した『竜文素環頭大刀りゅうもんそかんとうたち』や『銀象嵌銘大刀ぎんぞうがんめいたち』ですね。特に後者については、刀身に魚や馬などが刻まれているので、じっくりと見ておきたいです。

銀象嵌銘大刀ぎんぞうがんめいたち
銀象嵌銘大刀ぎんぞうがんめいたち』(部分)
銀象嵌銘大刀ぎんぞうがんめいたち』(部分)

■トーハク所蔵以外の国宝も見られる!……模本や模造ですけどね……

トーハクの特別展を見終わった後に、まだ他の展示を見て回る気力と体力と好奇心が残っていれば……ぜひおすすめしたいのが、本館の2階で開催されている特集展示『東博の模写・模造ー草創期の展示と研究ー』です。

普段は国宝かどうかを、ほとんど意識しないので、同特集展示でどれだけ国宝(の模本や模造)があるのかは分かりません。ただ、いずれも明治大正期に「これこそ、何があっても後世に残さねば!」と、先人たちが製作しておいてくれたものたち。国宝であるかは知りませんが、国宝級の価値があると言えます。

■個人的には『平治物語絵巻』だけでも、見に行く価値があると思います

『平治物語絵巻』は、主にボストン美術館にある「三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき」、静嘉堂せいかどう美術館の「信西巻しんぜいのまき」、それに東京国立博物館トーハクの「六波羅行幸巻ろくはらぎょうこうのまき」の3つに別れてしまっています。

先日、東京都立美術館で開催された『ボストン美術館展』では、このうちの「三条殿さんじょうどの夜討巻ようちのまき」を見てきました。

「やっぱり、素晴らしいわぁ……」と思えるほど、美術の素養がないので、美術的価値は分かりません。ただ、歴史的な価値については感動しました。ということで、今回展示されている「六波羅行幸巻ろくはらぎょうこうのまき」は、個人的にはどれだけ混んでいても、じっくりと見たい! という一品です。

で、美術的には解説できませんが(笑)……歴史解説というか、絵巻のストーリーを解説したnoteが下記になります。このストーリーを頭に入れつつ、絵巻を見ていくと、「あぁ、なるほどねぇ。そういうことかぁ」と……楽しく見て回れるはずです。

■意外に面倒なチケット購入

さて、いよいよ「トーハクの特別展を見に行くぞ!」となったとします。でも、ネットでチケットを購入するのが、なかなかに難しい……というほどではないけれど、面倒くさいです。様々な展示会へ行っている人であれば、「ふふん…このくらいは面倒のうちに入りませんよ」と余裕しゃくしゃくなのでしょうが……慣れていない人には、「うわっ、めんどくせぇ〜」って感じです。あらかじめ、どのくらい手間なのか下記noteを見て、心構えをしておくと、実際には「え? 簡単じゃね」と錯覚できるかもしれません。

それにしても、いつ行こうかなぁ……。『平治物語絵巻』などは、展示期間が決まってそうなので、その期間を調べて……なんて言ってたら、これって来週の30日までしか展示されてないじゃないですか!!

やばい、急がなきゃ……。

この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?