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すっきり

私の目標は「すっきり」生きることである。
「すっきり」
(1)わだかまりがなく、気持ちのよいさま。また、よけいなものがないさま。さっぱり。
(2)服装・姿勢などが洗練されていて、人に好感を与えるさま。
(3)残るものが何もないさま。すっかり。全部。    (大辞泉より)

(2)は、まあ、努力目標だが、肝心なのは「よけいなものがなくて、気持ちのいい状態」で生きること。そして、死んだら「残るものが何もない」というふうになれたらいいだろうなあ・・・と日夜考えている。

 もう20年前だが、実家の両親を相次いで見送った。数年たって実家の片づけをした。
空き家のままだと物騒でご近所にも迷惑がかかる状態になってしまったからなのだが。
 仕事も子育ても、嫁ぎ先のこともしながらだったので、一人で一軒の家を片付ける、というのはものすごく時間とエネルギーがいるんだ、とあの時初めて知ったのだった。
貧しいながらも、父と母が建ててくれた家・・・。懐かしい思い出がいっぱいだ・・・。
押入れの棚から「お雛様」が出てきた。几帳面だった父が、毎年よく飾ってくれたんだった・・・。当時の父の姿が浮かんで、思わず涙ぐむ・・・。
いや、感傷に浸ってはいられない。まだまだ、居間も台所も手つかずではないか・・・。
箪笥には、母の衣類がそのままになって、あふれんばかりに入っている。
まだ元気だった母の姿が蘇る。
両親が生きている頃は、とても大事だったこの、たくさんのものたち・・・。「ごめんね・・・。」とつぶやきつつ、処分した。まだ使える家具などは、「ほしい」と言ってくれた人に差し上げた。

片付け最後の日は、業者さんに来ていただき、解体工事となった。
費用は、両親が必死で残しておいた貯金を使わせてもらった。

 すべてが終わって、更地になった実家のあとを見ると、両親の姿や、数十年の思い出がすべて空へ舞い上がって行ってしまった気がした。
「あぁ・・・、もう、私の帰る家はないんだな・・・。」
あの寂寥感、そして疲れ・・・を、私の子どもたちには味わわせたくない。
今はそう思う。
だから、日夜「すっきり」したい、とひたすら願っている。
しかし、この暑さだ。理想と現実は程遠い。

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