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【発達障害】学校で 好きなことに没頭させてもらえた

読了目安:11分


中学校は難易度高すぎ

長男は交流級に行かなくても良い、
支援級で過ごして良い、となり、
中学校に居場所ができてから 毎日登校するようになりました。

長男にとっての学校生活 ———

それは、簡単にできないこと
困り感を感じることがとても多い生活。

とりわけ学習面は
書字障害、計算障害のある彼にとって
できないことに 挑まなければならない

加えてASD、ADHDなどの特性から
定型の人が気にならないことも気になる彼には
環境面で落ち着けない

定型の人の感じる学校生活の
恐らく何倍もハードルが高く
めちゃめちゃ頑張らないといけない。

加えて中学1年のとき、
学習支援のできる放課後デイに
嫌がる長男を 無理に通わせてしまった。

それが心の傷となってしまった長男。

中学2年4月の時点で
長男の学習に対する抵抗感は
もはや【拒否】になっていました。

 ——どうせやってもできない
 ——俺はバカだから
 ——だからもう二度とやらない

このあたりの情報を
私はS先生と共有しました。

S先生は、長男に何かするよう言うことはなく
いろいろな話をしながら、様子をみていたようです。
学校から帰ってきた長男に話を聴くと
先生と話をした、とよく言っていました。
彼の考えていることや興味のある世界について
話を聴いてくれていました。

そして、何をして学校で過ごすか
長男に決めさせてくれました。
正確には、支援級の生徒皆に
何をして学校で過ごすか 決めさせてくれたのです。

何をして学校で過ごすか 本人に決めさせてくれた

このことが長男にとって、
学校は 必ずしも
できないことに挑まなければならない場所ではなくなった
そして
落ち着いて過ごすこともできる場所になった
のです。


「不登校は甘え」という価値観と戦う

不登校の生徒児童の気持ちを
なんとなく「学校が嫌なんだろうな」と
想像する方は多いと思います。

そして、そのなかの一部の方々は
一方的に 定型発達の多数派の理論を唱えます。
それを少数派である発達っ子とその親に押し付けます。

不登校は甘えだ
嫌なことは誰にでもある
きついことから逃げているだけ
嫌なことも頑張らないと
将来ロクな大人にならない
おうちの居心地が良すぎるんでしょう
子どもの言いなりになって甘やかして
親も負けている

実際 これらの言葉を
私たち親子は 
学校の先生を含めた 複数の人から言われました。

学校が嫌な理由——
これを見誤っている大人のなんと多いことか

怠けているんじゃないんです
家でゲームしたいんじゃないんです

学校は、めちゃめちゃ頑張り続けないと
生活できない場所だからなんです

想像してください
生まれつき運動が苦手なあなたが
スポーツジムに入会させられて
めちゃめちゃスピードの速い
ランニングマシンと
めちゃめちゃ負荷の高い
筋トレマシンが準備されてて
毎日これを朝から夕方までやらないといけない
周りの人は皆、楽々やってる・・・

そりゃ 頑張ればできますよね
でも長続きするはずない

しかも、苦しんでやっているのは自分だけ
周囲の人はなぜだか
自分みたいに頑張らなくても上手にやってる。
運動が苦手なのは努力が足りない、と言われる。

———ジム、行きたくなくなりますよね?

これを想像できない人から
本当にびっくりするくらい
無神経な言葉の数々を
私たち親子は浴びせられました。

そして 面白いことに
このような価値観の人は
長男が学校に行っている、と聞くと
学校で何をしているのかは気にもしないのです。

とりあえず中学2年になって
「不登校は甘え」という価値観の押し付けから解放されて
私たち親子は心穏やかに過ごせるようになりました。

このような「不登校は甘え」という価値観の方は
学校に行くことが目的になっていて
何をするかなんて考えてない
教室の机で6時間我慢して過ごせる子が
社会に通用する大人になれる、と思われているのかと。

今でも
学校に行くことの本質を考えない人からの
無神経な言葉の数々には 納得はいきません。


勉強をしない 学校での過ごし方

話が横道にそれました。
長男の支援級での生活に話を戻します。

何をして学校で過ごすか 決めさせてくれたS先生。

特別支援級の生徒達の学校生活は
S先生と相談して
教室でプリント学習に取り組んだり、
交流級の授業に行ったり、
きついのでのんびりしたり、と
自分で「この時間はどうするか」
その日に決めさせてくれたそうです。
急きょ予定変更も認めてくれたそうです。

長男によると
支援級のクラスメイトの中には
1日中何もせず過ごしていた生徒もいたそうです。

長男は いつもイラストを描いていました。

中学1年の時に通っていた
市の不登校生徒の支援施設でも
長男はいつもイラストを描いていました。
施設では、勉強の時間に
勉強しなくても机に向かわないといけなかったのです。
だから、ひたすらにイラストを描いていました。

リュックの中にはノートと
お気に入りの
おっきな赤い缶ケースに入った
ファーバーカステルの50色色鉛筆を携えて
施設へ通っていました。


イラスト描き そして ノートパソコン持参

中学2年になって、
通う場所が 不登校生徒の施設から
中学校の特別支援級に変わってからも、
長男は毎日イラストを描いていました。

ある日、S先生から電話がかかってきました。

「お母さん、長男くん家ではパソコンで
絵を描いているんですよね?
お家でパソコンを用意してもらえたら
学校に持ってきて、
学校でもパソコンでイラストを描いたら
どうかと思うんです」

「学校でパソコン?」

「はい、GIGAスクールで配布された
ひとり一台のタブレットはありますが
長男くんのやりたいことは
タブレットではスペックが足りません。
今すぐでなくて良いですし
大変ご無理申し上げているのは分かっているのですが、
学校に私物のノートパソコンを持ってきて
家でやっているイラスト描きを、やったらいいと思うんです」

こんな型破りな提案を
学校の先生からしていただけるなんて。
驚きを通り越して、ちょっと呆然としてしまいました(笑

長男と相談して、
中古パソコンを探しに行きました。
そして、スペックと価格で折り合いのつく
1台のノートパソコンを購入しました。

長男は早速、ノートパソコンとマウス、
愛用のワコムのペンタブを通学カバンに入れて
登校するようになりました。

ペンタブとは
写真のように、パソコンとつないで
画面はパソコンの画面を見ながら
手元は液晶ではなく
板状のボードのようなものに、専用のペンシルで
絵や字を描くものです。
不登校の中学1年のときに購入したものでした。

ペンタブ イメージ画像

パソコンで絵を描くことについての参考記事です。
長男は中学1年の時に
ソフトも使いこなせるようになって
自宅で作品を作っていました。


私たち親子のリスタート

長男は学校で
デジタルイラスト作成に没頭するようになりました。
持ち前の特性からくる過集中で
どんどん作品を作っていたようです。

学校でノートパソコンはネットに繋がない約束でした。
なので、出来上がった作品は家のプリンタで出力して
学校の黒板に貼らせてもらいました。

学校に私物のパソコンを持ち込むことは
S先生が校長先生に許可を取って頂いたようでした。

長男が私物パソコンを持ち込んでいることについて
指摘する支援級の同級生もいたそうです。
また、交流級の友達も驚いていたそうです。

この件については
S先生が支援級の同級生にこんな説明をしたそうです。

「長男くんはイラストが得意で
しかも、デジタルでイラストを描くことに興味がある。
興味のあることを見つけて
それをしっかり伸ばしていくことが大事なんだよ。
だから君も、学校で何をすればよいか決められず
何もしないで 1日終わるのはもったいないよ。
長男くんを見習って、興味のあることに取り組んでごらん」

また、校長先生を始めとした管理職の先生が
長男の様子を見に来たそうです。
とりわけ校長先生は、長男の様子を見て
そして黒板に貼った作品を見て、
とても褒めてくださったそうです。

長男の様子が変わり始めました。

今まで、学校は怒られるばかりだった
学校で褒められる経験がほとんどなかった子が
校長先生に褒められて
長男くんを見習ってごらん、とまで言われるようになった。

帰宅して 学校での出来事を嬉々として話す長男。

その様子を見て、これまで暗闇の中で
手探りのような子育てをしていた私は
とりあえず安堵すると同時に、
自分の子育てが 次のステージに移った感覚を
なんとなく憶えていました。

ステージは家の中から完全に抜け出た———
どうしたら良いか 具体的には分からないけど
中学2年の今からがリスタート、と。

そして、それは長男だけでなく
今まで長男の子育てに
自分のリソースをほぼ割いてきた私自身のキャリアも
リスタートの時期に来ていました。
(私のキャリアのお話は またの機会に!)

長男が中学2年生の時、学校で描いたイラストです

小学生のとき、絵画教室に通っていた長男は
お絵描きの経験はありますが
デジタルイラストについては、全くの独学です。
身近にアドバイスできる大人もおらず、
彼がひとりで自ら調べて身に着けた技術です。

イラストは稚拙な部分もあります。
ですが、好きなこと興味のあることをするために、
中学生で ここまでたどり着いた彼の能力は、
親バカですが評価できると思っています。

真の特別支援教育とは

ノートパソコンで絵を描くようになってしばらくして
S先生と面談したときのことです。

先生は、長男を褒めてくれました。

特別支援級を担任された経験から
支援級に在籍する生徒にイラストが得意な子は
少なからずいたが、
中学2年の春の時点で
ここまでデバイスを使いこなして作品を作る生徒は
今まで見たことがない、と。

そして、本当に飽きることなく
集中してイラストに取り組んでいる、とも。

そして、1日中イラスト制作に没頭することについて
「真の特別支援教育」だと
以下のように言っていました。

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特性のある生徒たちに共通しているのが
興味のあること、好きなこと、得意なことが
はっきり定まっている。
つまり、専門学校で学ぶ学生と同じ。
自分の得意なことが、他の子より早く定まっている。
専門学校って、それしか学ばないでしょう?
だから、本当は特性のある子は飛び級で
大学や専門学校に行って、専門的にどんどん学べば良い。
しかし、今の日本の教育システムではそれは叶わない。
そんな子に、無理やり5教科の勉強をさせるのではなく
特別支援級の場で、興味のあることをどんどんやらせて、
能力を伸ばす、それが「真の特別支援教育」です。

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高いIQや特別な才能をお持ちの方の才能を伸ばす
いわゆる「ギフテッド教育」について
国も取り組み始めている等、
昨今、話題に上ることがあります。

私を含めた、発達特性を持つ子の親御さんは
「我が子にビルゲイツのような
特別な才能は無いが
定型のお子さんと比べ、多少秀でた部分もある。
この秀でた部分を何とか生かせないか・・・」と
感じることもあるのではないでしょうか。

現在の特別支援級は
様々な特性のある生徒が一緒くたに在籍しており
どうしても「できないことをできるようにする」
教育に注力してしまっていると感じます。

「ギフテッド教育」までいかないけど
特性のある児童生徒の興味関心を
思う存分発揮させていただけるような
S先生のような柔軟な指導が
広まることを切に願います。

ホッと安心したのも束の間
この後、S先生から高校進学についての話が出てきて、
もう高校?と私たち親子は困惑しつつ
行動開始することとなります。

最後までお読みいただき ありがとうございます!




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