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【発達障害】書字困難サバイバル <小学3~4年生編>

読了目安:13分



小学校1~2年生編はこちら ↓ ↓ ↓


特性に応じた 環境整備と個別指導

長男は、小学3年生になりました。
その年、校長先生のご尽力で特別支援学級(情緒級)が
通っている小学校に設置されました。
当市の小学校の支援級名は、「1組」等の数字ではなく
それぞれの小学校毎に「なかよし学級」等の名前が付けられています。
長男は当校の、特別支援学級「みずいろ学級(仮名)」の
最初の児童のひとりでした。

みずいろ学級の担任は、
特別支援教育に造詣の深い「Y(ワイ)先生」が
着任されました。

みずいろ学級の環境と、Y先生のご指導のおかげで
長男は小学2年の頃と比べ
まるで別人のように落ち着きました。
大げさではなく、本当に別人のように。

長男は 毎日学校に朝一番乗りで登校する!と
朝早くから張り切って登校し
校門が開くのを、校門にしがみついて待つようになりました。
私の、毎日の付き添い登校も終わりました。
長男が元気で楽しそうな 
「普通の」小学生男子の生活を送れることに
私は心から感謝しました。

そして
小学校低学年~中学年における
発達障害児にとって
環境調整の大切さを痛感しました。

環境が整えば
問題児は問題児ではなくなる

児童の行動の原因は
その子に合った環境を整えてあげることができない
親、学校、自治体
大人の側にあるのだと。
それを長男が証明した、と 私は思っています。

みずいろ学級の生活が始まり、落ち着いてきたころ、
Y先生に書字障害の件を相談しました。

小学4年生の時の長男の書字 
小学1年生のころと比べ、マス内には収まっていますが
いろいろと気になる点が多いです。

先生は、長男の様子を見ながら
既に手探りで、特性に応じた指導をしてくださってました。

まずは、ADHD特性の集中の難しさから
1校時すなわち45分間
課題に取り組むことができない長男の特性を把握。
100均のタイマーで時間を計りながら
5分プリントに取り組んだら、5分休憩、という
インターバル方式の学習方法をY先生はすぐに取り入れていました。

短時間、そして分量が少なければ長男は集中できました。
そして、日に日に集中時間と分量は伸びていったそうです。
宿題も、長男のために
Y先生はオリジナルの1枚プリントの宿題を
毎日作ってくださいました。

小学4年生の時の宿題プリントです
長男の苦痛にならない内容と分量
そして長男の興味のあることを織り交ぜながら
毎日1枚の宿題が継続できるよう、工夫がされています


長男を含めたみずいろ学級の児童が、
集中できて、必要に応じてリラックスできるよう
特別支援級の教室のあちこちに配慮をしていただきました。

この環境調整と個別指導で、ようやく長男は自分のペースで
学習に取り組むことができるようになりました。

書字の工夫「連絡帳フォーマット」

Y先生の、長男の特性に応じた対応のひとつに
「連絡帳フォーマット」があります。

板書の書き写しが困難な長男のため、
先生が作成してくださいました。
大きく、文字の書きやすいA4サイズで
長男は「明日の予定」と「今日の反省」「明日のめあて」「一言(ひとこと)日記」を書き、
残りのスペースでY先生と私がやりとりする、という
Y先生が作ってくれたフォーマットです。


小学4年生の時の 
連絡帳フォーマットを用いた実際の連絡帳です

連絡帳の「一言(ひとこと)日記」の欄。
自分の気持ちを、言葉に表現する練習を、という
先生の想いが反映されています。

現在、ひとり一台のGIGAスクール端末の活用ができている
自治体や学校であれば
明日の持ち物などの連絡事項は
既にアプリで管理しているかもしれません。
連絡帳もその形がどんどん変わっていっていると思います。

ただ、連絡帳も書字や文章作成の練習、と捉えれば
この連絡帳フォーマットはとても良い、と感じます。

誰に相談したらいいの?

私は、Y先生と長男のことについて話し合いや
情報共有を重ねていました。

読み書き障害等の学習障害については
先生も詳しくはなく、情報があればぜひ欲しいとのこと。

ここで、まず私はひとつめの問題に直面しました。

書字障害のことを
誰に相談したら どこに相談したら良いのか
全く分からないのです。

小学2年生の時に、書字障害を最初に指摘いただいた
教育相談は、「もう受けられない」と言われました。

・・・なぜ受けられないのか?
【教育相談は通常級に在籍している児童とその保護者向けの
支援サービスで、特別支援級に在籍していると利用できない】という
説明があったのです。

なんだかなぁ・・・という気持ちでした。
特別支援級に在籍していても
ベテランの先生の知見や助言は必要なのに。
ひとつ相談先を失ってしまいました。

そこで、療育機関に、書字困難のアセスメントについて相談しました。
そして、作業療法士による評価と助言を提案いただきました。
加えて、療育機関の眼科で、
視機能についての評価をしていただくことになりました。

ただし、療育機関も
学習障害は正直詳しくない、との説明。
作業療法士の先生も、手探りでの様子でした。

療育機関は福祉と医療の分野。
一方、学習障害は教育分野。
ふたつの領域のある意味狭間といえるため、
現行のシステムでは専門家を名乗る方や組織が
圧倒的に少ないことに 当時、気づきました。


特性に応じた漢字学習

長男は、みずいろ学級で落ち着いて生活できていた
小学3、4年の間に
作業療法士の先生へ定期的に通いました。
そこで、書き写しの能力等を評価していただきました。

視機能の評価も、療育機関の眼科で行っていただきました。
眼球の動き等を評価いただき、
大きな問題はないが、視線が動く時のものの見え方が弱く
黒板と、手元のノートの間を
視線が行ったり来たりしながら正確に書き写すのは、
長男にとって難しいことが裏付けられる結果でした。

     ***

ここで、次なる問題が発生しました。
評価後、それを日々の学習指導にどう活かしていくのか
「アクション」の部分が
すっぽり抜け落ちていたのです。

例えば、作業療法士の先生の評価を
親である私はくにゃんが、専門的な内容を含めて聞いて
漢字学習の指導方法について助言をもらい、
それを改めて一(いち)から学校担任に伝える———

今回、私には正直自信がありませんでした。

今まで幼稚園時代から、
療育機関と幼稚園の間に立って、
情報共有のやり取りは行ってきました。
専門機関と、障害児の日常との間を繋いで
取り持つのは、基本、障害児の親なのです。

しかし、幼稚園時代ではなく
学習指導内容に踏み込んでくるとなると
私にはそこまでの専門知識はありません。
間に立っても、誤った伝え方をしてしまうのでは、と
不安に感じました。

そこで、みずいろ学級のY先生に相談したところ
快く、夏休み期間中に先生自ら療育機関を訪問していただきました。
そして、作業療法士、心理士の先生と意見交換をしていただき、
その結果を、Y先生が日々の指導の参考にしていただいたのです。

漢字学習の指導方法についてアドバイスを頂いた結果———

長男は全体像をぼんやり捉えることはできるが
細かい部分を正確に捉えることが苦手ということが分かりました。
そこで、漢字学習の際に
漢字をパーツごとに捉えて
そのパーツが組み合わさって漢字が構成されていることを
意識できるように、色分けして学習する方法を助言いただきました。


小学4年生のときの漢字学習ドリルです。
それぞれのパーツを先生があらかじめ色分けして書いて
それを長男はなぞり書きしながら学習しました。
慣れてきたら、自分で色鉛筆で
パーツごとに分けて書いて
学習していたようです。


現在、中学3年の長男がこの時の学習を振り返って
以下のように述べています。

漢字は、中3の今でも、細かいところが分からない。
ただ、小学生のころは、漢字のそれぞれのパーツが
それぞれ独立している感じだった。
下の図でいう、左側のイメージ。
パーツをくっつけるのは 当時の自分には難しかった。
でも、Y先生の学習のおかげで、下の図の右側のように
パーツが近づいてくっついて
ひとつの字になることが理解できた。

長男が説明のために、書いたイメージ図
小学4年生の時のドリル
「洋」「服」に着目してください。
どちらもへんとつくりが離れています。
上記のイメージ図の左側が
まさに、この書字なのです。


ここまで個別指導をしていただいたY先生には、本当に感謝です。
感謝しても、しきれないくらいです。
加えて、
義務教育9年間の経験から、
今回のY先生のような対応をしていただけたのは
当市においては、特別だと感じます。
Y先生だから、そして当時の管理職のご理解もあったから
実現した幸運なケースだと感じます。

ご尽力いただける先生方にめぐり会えるのは運まかせ・・・

———運まかせではなく
困っている児童生徒が 
必要なときに適切なタイミングで
アセスメントが受けられるような体制が整備されること、
そして、アセスメントの結果を踏まえて
書字障害に対する適切な専門的指導方法がもっと広がること、
そのうえでのタブレット等ICT機器を活用した
積極的な合理的配慮を 児童生徒が望めば受けられること。

これらを望んでやみません。

大阪医科薬科大学LDセンターのオンライン講習で学ぶ母

私はくにゃんが、個人的に継続的に情報収集をしているなかで
読み書き障害指導については、
「大阪医科薬科大学LDセンター」が大変有名かと思います。

発達障害関連の専門的な情報、
特にLDの専門的な情報を、私たち保護者が得ることは
以前は容易ではなかったと思うのですが
コロナ禍以降、現在はオンライン講習会が盛んに行われており
専門的な知識を、保護者も気軽に学ぶチャンスが増えました!

「Peatix(ピーティックス)」のLDセンター オンライン講習会は
家に居ながら、専門的な知見を手頃な料金で学ぶことができます。
何より、自宅で都合の良い時間に講義を聞けるオンデマンド方式は
働く保護者にとって本当にありがたい!
私はくにゃんも、何度か参加させていただいています。

親が専門的な知識を学んでも、親が学習を指導するわけではないし
意味がないのではないか?と思ったこともあり、
ただの保護者である自分が、このような知識を知ることに
以前は なんとなくためらいを感じていました。

しかし、正しい最新の専門知識を学び知ることで
我が子の状況を客観視できたり、
今は 不登校だったり学習を拒否していたとしても
いつか、本人が学びたいと思ったときに
保護者の正しい情報は、必要な支援に繋げる手がかりになる、と
私はくにゃんは思います。


長男の脳内では、地図も漢字も同じだった!

最後に・・・

長男は、地図を見ずに、地図を書くことが特技です。
下の絵は小学4年生の時の落書きです。
ささっと、これくらいの地図をどこにでも落書きできます。
小学生のときから、中学3年の今も、
学校の黒板にフリーハンドで地図を描いて、
先生や友達を驚かせています。

小学4年生のときの落書き
地図を見ずに、フリーハンドで描きます。
もっと精度高く書くこともできますが、
ぱぱっと描くとこんな感じです

中学3年生の彼が、
今だから言語化して説明できるようになったこと———
それは
長男にとって
地図を描くことと、漢字の書字は 同じなんだそう。

地図は、地形の特徴だけを描いている。
島や、半島、湾の形を記憶していて、それを描いている。
だから細かいところは不正確。

漢字も同じ。特徴だけを書いている。
僕は、細かいところは憶えられない。
だから地図と同じく、細かいところは不正確。
僕にとっては同じ。

だけど、地図は「すごい」と褒められる
一方で、漢字は「正確ではない」とダメ出しされる
僕にとっては、どちらも同じなのに。

長男の脳内の特性を、彼が言語化でき、
彼の書字の特性を長年傍らで見ていた私はくにゃんは、
長年のモヤモヤがすっきり、納得することができました。

長男は、細かいところが憶えられない代わりに、
特徴を瞬時に把握して、記憶することに長けています。
文章読解力もあります。
だから、パソコンのタイピングで
正確な漢字を選択することはできるのです。

例えば文章を書いていて「ながい」という言葉を書くとき、
「長い」と「永い」の意味の違いを理解して、
正しい漢字を選択すること、
これは長男はできます。
でも、横棒がたくさんある「長」という字を
彼は手書きで、正確に書字することができない。

この特性が彼の個性。

この特性のせいで 小学生時代から今に至るまで
こんなにも自己肯定感を下げながら
苦しい思いをしながら 
生きていかねばならなかったのか———

【長男】という人物を
正確ではないから、とダメ出しする場所ではなく
特徴を捉えてすごい!と評価してもらえる場所で
彼は生きていけるよう
そんな場所に出会えるよう
進路の選択を控えて、そう願っています。


この後、暗黒の5、6年、中学1年時代に
突入する私たち親子!
学校に行けない3年間の間、
書字障害について進展はありません。

この後「書字困難サバイバル」は
中学2年生になった長男のお話へと続きます!
高校受験どうするっ?

最後までお読みいただき ありがとうございました!



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