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【詩】裂けるチーズの朝

裂けるチーズの朝

裂けるチーズの朝

妻の好物は裂けるチーズだ
朝の食卓で
ぼくが棒状のそれを囓ると叱られた
こうやるのよ
しなやかに裂けゆく白いつやつやのひと筋

ぼくがやると 太すぎるといってまた叱られた
妻はじつに優雅に裂いて
そうめんのような極細のそれを皿に敷いていく
旨いのかそれ ときくと
バカね 裂くのがおいしいのよ といった

ぼくは 珈琲をひと口飲んで
こどものころさぁ
はじめてチーズ食ったとき
石鹸の味がしたんだ と話題をそらすと
妻はつぎのようにいった

それがあなたの初体験ってわけね
なんでも慣れよ
わたしも納豆、もう平気になったわ
関係性も発酵するのよ

ぼくはここぞといった
ぼくもきみもとろけるチーズになっちゃったりして

ばかか と妻

たしかにばかだった

その夜は
チーズをしなやかに引き裂いていく
残虐な妻の発酵している夢をみた


妻にはよくバカと言われます。
昨日は3度。
さからってはいけません。
外は冬まっさかりです。
熟練のたまもの。

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