薄楽俊

退屈にそこはかとなき愉しみをかんじるようになってきた半世捨て人です。 つれづれなるまま…

薄楽俊

退屈にそこはかとなき愉しみをかんじるようになってきた半世捨て人です。 つれづれなるままに日々感じたり、思ったりしたことを文芸にしていきたいと思っています。 性格上、ジャンルも内容も適当、支離滅裂になりますが、おつきあいください。

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「山月記」を読む② アリストテレスで読む「山月記」

Ⅰ アリストテレスの悲劇論『詩学』はアリストテレスが著した芸術論である。タイトルから「詩」について論じているような印象を受けるが、その大半は「悲劇」について述べてある。この『詩学』で、アリストテレスが提示した「悲劇」の要素は以下の5つである。 1.〈悲劇の5つの要素〉 アリストテレスは、優れた悲劇には「逆転」と「認知」が同時に起こると述べ、その好例としてソフォクレスの『オイディプス王』を挙げている。そして、悲劇の典型とされるこの作品には、先に挙げた残りの3つの要素も備わ

    • 【詩】かなしみのアリバイ

       かなしみのアリバイ  かなしみはそれっきりだった 西日はどこまでも赤かったような気がする 葉が揺れて夏なのに散って 人の命の尽きた日にラムネ飲んで おれは風の中にでた 愛すべきしがらみは プラカードでこしらえた棺と一緒に燃え 野辺のけむりとなって消えていった あの連山の端は うつむいて笑うお前の横顔のようだ ああ やっぱり 西日はあの端山の向こう側まで 赤く沈んでいたのだった 野あやめを焙煎したような匂いに おれのからだはいまも騒ぐが かなしみはあれっきりだった 釘打

      • 【俳句】春の消しゴム 5句

        虹たつや春の消しゴム借りにけり 繚乱の桜に入るや露天の湯 考えているのだ花も散りどきを オール・オブ・ミー流るる別れのロビーかな ゆく春やはやばやと身を固めけり #俳句   #自由律俳句 #現代俳句 #春 #桜 #花 #露天風呂 #オール・オブ・ミー #ジャズ

        • 【短歌】花はマリリン 5首

          五十年筋の通らぬ世を生きてさくらさく頃の我が身なりけり 解せぬこと云いておんな花にきゆ夢のあさせに残るうきはし 斉加年のトロフィーモフがあらわれかたる午前三時のはなびら 見上ぐればはなびらはなびらマリリンの笑みがきらめく洛北のそら   行く春を近江の人とおしみける 芭蕉 「猿蓑」 友なくも天守は花に浮かぶらむ近江にくだる春はたけなわ   ※斉加年・・・米倉斉加年、俳優(1934年ー2014年)   ※トロフィーモフ・・・チェーホフ「桜の園」の登場人物 #短歌 #現

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        記事

          【詩】蛇

           蛇 あなたは左なの? そうだな、少なくとも君よりはね じゃあ、そのまま左へすすんじゃったらどうなるの? そうだな、ぐるっとまわって右になる じゃあ、まっすぐすすんだらいいんじゃない だめさ、まっすぐ進めば・・・ 山あり谷あり そして 海 または 崖 ないしは 壁 だな じゃあ、抜け道をくねくねよじれながらいくってのはどうかしら なんか君みたいだな 神様にまた叱られるかな ああ、人間に裸の羞恥を教えたやつだからね 余計なことをして迷惑だった?  まったくだな、おかげでおれ

          【詩】蛇

          【詩】後朝(きぬぎぬ)のうた

           後朝のうた 春はあけぼの山ぎわに目覚めた泡立つ光にふたりのときは美しくこわれ 薄もやのたえだえにしずかに身を横たえるせぜのあじろぎ 水おとはさやけくほそくまだ草むらに這うものの 雲はすでに峰をはなれてたなびき 人の袖の 涙もそのようにまたうつろいゆくものか しのぶもじずりわれならなくに また巡り逢う日をおもい ゆっくりと剥がれた ときの表皮を 抱くのみの わたくし なので す #詩 #現代詩 #自由詩 #詩のようなもの #和歌 #百人一首 #後朝 #本歌取り

          【詩】後朝(きぬぎぬ)のうた

          【詩】猫の噂

          猫の噂    春雨のふるは涙かさくら花              ちるを          をしまぬ人しなければ   黒主 細い路地に入ってたぶん ふと気を許したのかもしれない その猫は笑ったのである ちょうどそこに廃棄されたカーブミラーが放置されていたのが いけなかった どうもその猫は当局に拉致されたみたいだ その前夜は春雨だった ある子供が猫に踊りを教えていたという 密告もあったようだ 夜があけると 春雨は朝靄となり その子供を連れて沖のほうへ去っていった 突堤には

          【詩】猫の噂

          【詩】春のわかれ

           春のわかれ あの日 とぼとぼと歩いた その足跡を 波がさらっていった 浜辺でもないのに     ぼくは あのとき 泣いていた  のかも しれなかった ただ 立ち去っていく背中だけがみえた  あれは なんだったのか  女といえばきこえはいいが     そうだ あの波は 街の白昼の断崖まで ぼくらが わずかになった春をむしり取るように無言で働いた  あのビルの解体現場まで たぶん 達していたんだ もはや疲労は疲労でしかなく 心地よさはすでに掘り起こしようがなく  金

          【詩】春のわかれ

          【詩】薔薇のはなし

             薔薇のはなし ばらばらになったものをひろいあつめたってジグソーパズルのようには つながるわけではない 夜と朝もめったにないたまたまで つながっているようにみえてるだけだ 空き瓶に挿した薔薇がまだあるという奇蹟 曇り窓に朝のひかりがとどまり、ヘアピンが部屋の隅に咲いている ハンガーにはワンピースが生乾きのままぶらさがり シンクの皿に残る薄切りのレモンと青白いシーツが 昨夜の雨をよみがえらせている  この朝の部屋には いつもと同じ いくつかの断片が 川辺の小石のよ

          【詩】薔薇のはなし

          【詩】ミモザの頃

             ミモザの頃 用心しなければならない 今日が 無事なのは 川面がひかりをはじき 鳥の声がきらめいているからなのだ  朝からのこの道には ささやかな三月の平穏がながれ  午後のいつもの公園につづいている そこには 昨夜の褥の春雷はなく ミモザの匂いの 記憶があの噴水にたちあがる やわらかなはるのうれい ああ 喪われている現在 恋は 剪り時がむずかしいのだ #詩 #現代詩 #自由詩 #詩のようなもの #ミモザ #花 #春

          【詩】ミモザの頃

          【俳句】わが早春賦 5句

          あたたかやゆっくりとあゆむによき道 ひかりはじかれて三月がながれをり 春雷のしてあるひとのそばにいて シュレッダーに書類そそぐやわが早春賦 悔い改めもせずに終点春津和野 #俳句   #自由律俳句 #現代俳句 #早春 #早春賦 #春の句  #津和野   #貴婦人号 #春雷   #季語  

          【俳句】わが早春賦 5句

          【詩】たぶんジブラルタルまで

           たぶんジブラルタルまで 俺は共産主義者だが このトラックを盗んだ その理由がけっさくだ つまり、オンボロだったんだ わかるかい 小僧 廃棄するんだとさ まだ六十キロは出せるのに 書類に印鑑が押されたんだ だから 俺はこの相棒と一緒に党を辞めたのさ ことわっておくが 俺は今でも共産主義者だぜ 運転手はそんなことを陽気に言った 夕立があがると彼は窓を開けて タバコを吸いながら どこへ行くのかと聞いた 僕はどこへでもと答えた そのトラックは 西の方に向かっていたから たぶんジ

          【詩】たぶんジブラルタルまで

          【詩】哀歌(エレジー)

          やっとひとりになれた夜 おれは波止場の見える安ホテルの一室で  情交の名残りでもあるかのようにシーツに落ちていた あの時の 一本の縮れた女の陰毛を思い出していた 湖水を染める晩秋の夕焼けはとっくに終焉し もうじき窓には無影灯のように青白い 女の貧相な乳房が姿を見せるだろう おれが女をはじめて抱いたのは いや 抱かされたのは どうでもいいような研修会のあとの五階建ての薄汚れたこのホテルだった 初めてだったと女は嘘をつき おれは三人目だと見栄をはった おれたちがもう一度抱き合

          【詩】哀歌(エレジー)

          【短歌】長い橋のある町 5首

          夏からちょっとおかしくなりましたふっくらかわいいお尻よりとメールあり あの店を右に折れれば長い橋城への道を教えて菊の香 猫ふりかえる石畳 のぼれば島々見ゆる城の丘 彼の地は浜菊の頃なり ゆく秋のわが城下町ホォーホォーとパン屋過ぎゆく托鉢の雲水 年の瀬に老舗がふたつ店たたむ諸行無常の鐘は西空 #短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #自由律俳句 #菊 #城下町 #ゆく秋

          【短歌】長い橋のある町 5首

          ある女の肋骨

          いいですわ お貸しします でも明日のこの時間には返してくださいね 女はそう言うと身を起こし背を向けると何やらごそごそと裸なのに下着を脱ぐような仕草をしてはいどうぞと自分の肋骨を渡した そしてもうじき時雨がきますからこれで運んでくださいとバイオリンケースを渡した 私は高級娼婦を買うために用意していたそれなりの金額を女に渡し、これで弟によくしてやれますわと礼をいう女の声を背に夜の街に出るとすぐにタクシーを拾った なるほど女が言ったとおり雨になった    ルームミラーの運転手の目は

          ある女の肋骨

          【俳句】囓りかけの林檎 5句

               ふたりして揺れてコスモス陽のなかに   うつくしき夜となり囓りかけの林檎   壜に投げ挿す一輪夜の曼珠沙華   秋風に独りを拾うふたりかな   胸の蛍を放つ四畳半冬隣 #俳句   #自由律俳句  #現代俳句 #コスモス  #曼珠沙華  #冬隣  #季語  #恋  

          【俳句】囓りかけの林檎 5句