「報告書は魅力的(セクシー)な1枚でなければならない」を目指すて
年明けから、ずっと24年度の「事業計画書」の取りまとめ担当オーナーとして、関係各所とやりとりしながら作っているのだが、気がつけば400ページ近くのパワーポイントになり、容量としても化け物のような重さになっている。
プレゼンターである上司の意向を尊重しつつ、各施策担当が作る細かい話をつなぎ合わせ、一貫したストーリー構成を作るという非常に骨の折れる作業を行い、削りに削りまくって、この分量なのだ。
この雑誌のように膨れ上がったパワポの事業計画書をみて
もっと減らさない?
ページ制限したら?
というアドバイスをしてくれる人がたくさんいるのだが、現実は、ポイントだけで構成された、最小ページ数のものを作るほうが、難易度ははるかに高く、より時間がかかる。
上司から「1枚ペラでおねがい」と言われたときを思い返してみてほしい。ビジネスパーソンなら、その難しさをきっとわかってくれるに違いない。
この「会議資料、報告書が分厚くなる問題」においては、100人中100人が、少しでも少ないほうが良いと思っているが、実際はそうはならないのはなぜだろうか?
結論は上記に書いた通り、「むずかしい」からだ。短時間で、要点を網羅した端的な報告書を作れる人はわずかで、その他大勢にはなかなかできない。この点については自分にも他人にも期待せず、もう完全に諦めている。
しかし、そんなぼくでも、明日からは自分でも上司から高評価をもらえる1枚ペラ報告書が作れるとものすごく自信が湧いてくる二つの逸話がある。
今日は二つの逸話を紹介しよう。
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一つ目は、スティーブ・ジョブズがiMacのCMを制作するときの話。
iMacの発売を踏まえたジョブズはマーケティングの責任者へ「デザイン性・操作性・画面の美しさ。iMacの素晴らしさを100%すべて、このCMで伝えたい」という指示を出す。
その指示を受けたマーケティング責任者は目の前のメモ帳から5枚の紙をちぎり、丸めて紙玉をつくると、ジョブズに向かって投げた。
ジョブズは1つもキャッチできず、紙の玉は床に落ちる。
「これが悪い広告だ」
そして、今度は、紙の玉を1つだけ投げると、ジョブズはしっかりキャッチすることができた。
「これが良い広告だ」
この逸話のポイントは、「何かを伝えるときに、込めるメッセージは1つだけにすべき」にある。一つしか選べないなら、「何を伝えるかでなく、何を伝えないか」を考え抜く必要があり、一撃必殺のポイントを決断する工程は苦しいと思う
会議/報告資料もこれと同じことが言える。相手が受け取れる最小のメッセージにまでポイントと枚数をしぼることで、あなたの伝えたいことが相手に突き刺さる可能性が高くなる。
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二つ目は、最近知った逸話。
日本を代表するイノベーター濱口秀司氏が語る、「報告書は魅力的(セクシー)な1枚でなければならない」という話。
若き濱口氏はある日、海外事業を統括する上司へ分厚いプレゼン資料をもって、とある施策の提案に挑む。
しかし、その上司から「わからねえよ」という言葉とともに「Sexy one-page report〜報告書は魅力的(セクシー)な1枚でなければならない〜」 となぐり書きした紙をつき返される。
その後、より少ないページ数で、シンプルでわかりやす資料の重要性を学んでいく濱口氏。
あるとき、今後、会社(松下電工/インフラ事業として照明器具や配管を世界に売っていた)が事業拡大していくにあたり、どの国を狙うべきかを決めるという重要ミッションが発生。部下は外部のリサーチ会社などを使って分厚い資料を作ってきた。
こんな分厚い資料では、到底、経営層が納得できるようなものはできないだろう、ということで濱口氏自身が答えを出すことになる。
どうやって「Sexy one-page report」 でこの問いかけの答えを出そうかと一晩悩んだ結果、、、、NASA Earth at night (人工衛星から見た夜の地球の明るさ)というwebサイトを利用した1枚ペラを作る。
このサイトを眺めると、地球のどのエリアが、どのくらい電気・照明をつかっているか一目瞭然でわかる。
・北朝鮮真っ暗で南側(韓国)は明るい
・アメリカは国土全部明るいのかと想像するが、実は沿岸部だけ明るい
・中国は沿岸部だけ明るい
といったように、どの国も、特定の一部エリアが明るく、それ以外は暗いのが特徴的なのだが、一箇所だけ、国全体が明るいところがあった。
それは、インド。
三角形のインドだけが国土全体が均一に明るい。人口も世界一になり、カースト制があるため所得格差が大きいが、この国が持つポテンシャルは非常に大きいと判断した。
そこで、濱口氏はNASA Earth at night から、国土全体が明るいインドの写真をベースにもってきて、「ここが当社が狙うべきところです」という結論を1ページのレポート=セクシーワンページレポートに仕上げた。
その後、これは社内で大きな反響を呼んだという。
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この二つの逸話には、いわゆるレポート、資料など、誰かに何かを伝えるときの重要な要素がわかりやすく表現されていて、「こういう風にやればいいのか!」とわかったような気になるところが心地よい。
もちろん、実際にやろうとすると、ほとんどの人には簡単にはできないので、会社の資料は日々膨張し続けていく。
そんなとき、この二つの逸話を思い出して「ねえ、資料、もうちょうと少なくしない?」と声に出してみると、みんな我に返り、一時的に減ると思う。
また元に戻るけれど。
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