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松永光弘さん著『伝え方』から読み解くメリットとベネフィットの違い

編集家・松永光弘さんの『伝え方』を読んだのち、深くため息をつくことは多い。

発売初日に書店で手に入れ、即日に読み終えてから5ヶ月ほど経つのだが、いまだにページをめくると「はあー、そういうことだったか」と目から鱗が落ちる。

そのつど解決しようと取り組んでいるコミュニケーション上のお悩み、平たく言うとクライアントの課題がそれぞれ異なるからだろうな、と思う。

伝えるべきことをはっきりさせる
“コミュニケーションの橋”は、じつは2つある
伝えたいことを伝えてはいけない
“よさ”と“わけ”で魅力は語られる
既知にも、未知にも、人は惹かれない

ほかにもコミュニケーションには“高さ”がある、であったり「同分解展」モデルなど、はじめて知ることやなんとなくわかっていたけど言語化できていなかったことが、松永さんの手によってつまびらかにされていく。

いま、松永さんの「手」と書きました。

かなり話が脱線してしまいますが、松永さんは「手」だけでなく「声」も実に良いんですよ。某日、青山ブックセンターで開催された松永さんと梅田悟司さんのトークイベントにお邪魔したのですが、そこで魅了されたのは対談の中身に加えて松永さんの美声でした。

とても艶のあるバリトン。かつ、なめらかな喋り口。つい聴き惚れてしまいます。ラジオの仕事してほしいですね。しかも音楽番組。

松永さんは顧問編集者として企業の経営陣に参画されることも多いと聞きますが、会議室にこの声と説得力ある提案が持ち込まれるなんてめちゃくちゃすてきじゃないか、と想像するのは決してわたしだけではないはず。

すみません、話を戻します。

とにかく、この一冊から学べること、実践してプラスに働くことは枚挙にいとまがないが、おそらくすでに多くの方が直接的な効果については読書感想文として認めていることだろう。

なのでわたしは、そのことがそのまま書かれているわけではないが、読後に自分なりに解釈して得られた見解、あるいはメソッドを読書感想として書こうと思う。

「そんなこと書いてないじゃん」
「都合よく取りすぎじゃない?」
「原典に対する冒涜、愚弄也!」

いろんなご意見があるかとおもうがうるさいうるさい。ぼくのかんがえるさいきょうの『伝え方』からのまなび、だからこれでいいのだ。


松永さんの『伝え方』を読み終えて数日後。いつものように早朝、愛犬にひっぱられて有明湾岸エリアを散歩しているとき。

ふと、頭に浮かんだ。

メリットは伝えたいこと
ベネフィットは伝えられたいこと

であると。

そしてさらに考えが進み、

つまりメリットは発信者のもの
対してベネフィットは受信者のもの

なんだな、となり、

ということはメリットは求人企業のもの
ベネフィットは求職者のもの

となった。

この時点でわたしは「ユーレカ!見つけた!」という気分である。忘れないようにあわててスマホのメモアプリに書いた。

そして出勤中のりんかい線川越行きの車中で

整理すると
ベネフィットはメリットの中から受信者が伝えられたいこと

翻訳すると
ベネフィットは求人企業が有するメリットのうち求職者が欲しいと思うもの

という結論を導き出した。

メリットとベネフィット。これはわたしが前職エン・ジャパンで制作部責任者だった頃からの懸案事項であった。毎年のように入社してくる新卒社員、あるいは未経験中途入社社員たち。彼らにメリットとベネフィットの違いを教えるのが本当に難しかったのだ。

メリットは、特徴。ベネフィットは、利益。

と、言葉にしてみても、なんだかよくわからない。有名大学を卒業してきたヤングたちは果たしてわかってくれていたのだろうか。彼らのつくる求人広告の多くはメリットを提示する域をなかなか超えることができずに苦労していたので、わかっていなかったのかもしれない。

教え下手でごめんよ。

「週休3日制はメリットですか?ベネフィットなんですか?」
「うーん…」
「月給80万円はメリットですか?ベネフィットなんすか?」
「あ、いや、えーと…」
「海は死にますか?ヤマハ死にますか?ヤマハ発動機すか?」
「なんやねん何がヤマ発や」

ごめん、本当にごめん。

しかし、いまなら胸を張って言える(いまごろ?)。

ベネフィットとは求人企業が有するメリットのうち、求職者が欲しいもの

それが「伝えたいこと」と「伝えられたいこと」をつなぎ、求める人を動かすメッセージをつくることになる。

ああ、このことをもっと早く、できれば20年ぐらい前にわかっていれば。

さらに30年前にわかっていれば、あんなにたくさん格好悪いふられ方をせずにすんだ。

なんなら45年ぐらい前にわかっていれば、こんなに恥の多い人生じゃなかった。

いつだって大切なことは後になってからわかる。そして松永さんの『伝え方』はまさにタイムマシンがあったらいいのに!と思わせるにふさわしい一冊なのである。

えっ!?
メリットとベネフィットの違いなんて常識だって?わかってないのはお前だけだって?

ううむ…そうか。そうなのか。

いやいや『伝え方』を読んでから、の理解の方がよりハラ落ちするでござるよ。うそだと思ったら読んでみてほしいです!


今回、読書感想文のような、求人広告制作者向けのメソッドのような、どっちつかずの内容になってしまった。

書き始めたときは感想文のつもりだったけど、書いているうちに『伝え方』から間接的に、というか手前勝手に学んだ事柄は採用系コミュニケーションについて、ということがわかって自分でも愕然としている。

そして、ああ、自分はやっぱり、つくづく求人広告が好きなんだな、とわかりました。いま現役で求人広告をつくっている人がちょっとうらやましいぐらいです。とはいえあの鉄火場にはもう戻りたくはないけど。

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