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感想 「龍が如く7外伝」は作り手の愛に溢れたシリーズ最高傑作だった※ネタバレなし※

先日、龍が如く7外伝をクリアした。
シリーズを通して18年間見てきた桐生一馬の物語がいよいよ終盤に差し掛かろうとしているというのが、7外伝の事前プロモーション、同時に展開されている8のプロモーションでも強く伝わっていたから、後悔の残らないよう噛み締めるようにじっくりと味わいながらプレイした。なんでも単独主人公としては最後となるらしい。
終わってみればトロコンしてしまうくらいドップリとハマってしまっていた。
やはり「龍が如く」というゲームは素晴らしい。

本作のレビューをする前にシリーズや7本編について語っておきたい。
私は、龍が如くシリーズは「オブジエンド」と「クロヒョウ(1は途中までプレイ)」を除いてリアルタイムでプレイしてきたファンの1人だ。
1をプレイして、重厚でハードボイルドがはち切れんばかりの男の世界に心臓を撃ち抜かれて以来、いちファンとして桐生一馬を中心とした男たちの物語を長年にわたって見てきた。
桐生一馬の物語には、いわゆる「ハッピーエンド」が用意されていることはない。次から次へと誰かに頼られ、桐生自身もそれを望んでいるかのように暴力の渦巻く世界へと度々舞い戻っていく。男としての圧倒的な強さを備えながらも、幸福ではなく圧倒的な悲しみが蓄積していく人生。得る幸福を覆い隠さんばかりに悲しみが増していくといった方が正しいかもしれない。常人なら到底支えることのできない悲しみの量だと思うのだが、それを受け入れてなお憮然と立ち続け人生を進み続けるかっこよさは「男の理想形」の1つであり、ファンを惹きつける魅力の1つなのだと思う。

桐生一馬以外にも脇を固め、時には主人公としてシリーズを支えさらなる輝きをもたらした他の出演者の面々、真島や冴島、秋山や伊達らも桐生に負けず劣らず魅力的だ。この辺りは語るとキリがないので割愛するが、主人公やキャラクターが増えながらもシリーズは一貫して桐生が物語の中心に据えられ、その半生を描くものとして作られ、厚みを増していった。

「実在する役者」をキャストとしてフィーチャーしている点もまた1作目からの大きな話題であり作品の魅力を語る上でも欠かせない要素の1つでもある。これまた名前を挙げればきりがないほど、テレビや映画をいろどる名優や大物俳優といった面々がもったいぶることなくふんだんに出演している。
特に4や6は凄まじい面子だ。
個人的には4で主人公の1人だった「谷村正義(成宮寛貴)」は、キャラクターやバトルスタイルに加えて役者さんの名演技と相まって大好きなキャラクターである。
毎シリーズ、誰がフィーチャーされるのかというのもファンの楽しみの1つだった。

もちろんゲームシステムも欠かせない。
龍が如くの世界やシナリオをプレイヤーに擬似体験させるためのゲームフォーマットとして「神室町」という箱庭が作られ、プレイヤーが主人公を通して神室町を存分に駆け回り暴れ回る。その没入感が龍が如くの世界を際立たせ、ドラマや映画と同様にあたかも現実に存在するかのような世界を作り上げる。
ゲームシステムもまたシリーズを重ねる度に洗練されていき、蒼天堀や琉球街、月見野や尾道仁涯町といった箱庭の追加や新たな主人公やバトルスタイルの追加でその遊び方の幅を広げていった。

これらの「シナリオ」「ゲームシステム」「キャスティング」「フィールド」が龍が如くを語る上でとても大事な要素であり、桐生やその仲間たちと共にフィールドアドベンチャーを通してプレイヤーが繋がるというプレイ体験が大きな魅力の1つだ。

だがシリーズものの宿命とも言えるだろう。作品を重ねるにつれて、桐生は幸せとは逆の方向へと追い込まれていき、問題を解決する度に東城会や裏社会と桐生のしがらみは濃くなる一方で、毎回新たなチャレンジでプレイヤーを楽しませてくれるゲームシステムの改良や役者陣のキャスティングサプライズも、一旦は6で最高潮に達してしまった感も感じていた。
当然シリーズを続けるうえで新たな設定や登場人物は言わずもがな、プレイヤーを楽しませるための工夫やシナリオギミックを作り上げ更新し続けなければならない。しかし一方で、その主軸にある2大組織の抗争が制約となってしまってきているのではないかと感じることもあり、この先「龍が如く」と「桐生一馬の人生」はどういう展開を見せて行くのだろうと思っていたのだが、シリーズは予想もしなかった展開を見せる。

7の発売だ。
前述の通り、これまで一貫して桐生一馬を主人公として任侠の世界に生きるその半生を追ってきたのが「龍が如く」だ。
6を経て桐生一馬はどこに向かうのか。
しかし最新作は、その続きとして用意されたものではなく、主人公の交代に加えて、ゲームシステム(ターン制RPGへの変更)や世界観(バトル時にキャラクターや敵がファンタジー方向にモディファイされる)が大幅に刷新されており、それまでの流れを大きく変えるものであったため、かなりの衝撃を受けたのを覚えている。

おそらくは、制作体制の変更と今後のシリーズ展望を考えに考えた末の制作陣の挑戦だったと思うしそれは当時も感じてはいたのだが、プロモーションで解説されるシステムや桐生とは真逆の春日一番のキャラクター(実は根底にある人情や人間性はかなり似ている)をすぐには受け入れられず、発売を迎えてもしばらくプレイすることができなかった。
桐生一馬と一緒に龍が如くから卒業したような気持ちでいた。

だが、しばし寝かしたことで気持ちの整理がついたこともあり、発売から数か月後、プレイヤーからの賞賛と新たなファンを獲得した7をプレイしてみることにした。

驚いた。
根底に流れる人情やドラマといったシリーズの魅力は、衰えるばかりか新たな主人公や仲間とともにさらに輝きを増していた。逆境や不幸にも負けず挫けず底抜けに明るい春日は一見すると桐生とは対照的に見えるものの、表現の仕方が違うだけで行動原理は共通してして、ひたすらに「熱い」。
弱さを見せずに孤高に耐え忍び進む桐生に対して、弱さをさらけ出しながら仲間とともに立ち向かっていく春日。
物語は重厚でゲームを通して揺さぶられる感情体験はまぎれもない「龍が如く」のそれであり、新たな視点を加えたことで私如きの危惧していたマンネリ化は、刷新されたゲームシステムとともに圧倒的な突進力でぶち破られていた。

「龍が如く」をずっと好きでいてよかった。卒業しなくてよかった。心からそう思った。

そして、作り手は桐生一馬を過去のものとして捨てたわけでもなえがしろにしていたわけでもなかった。
それが「7外伝」であり、おそらく「8」なんだろうと思う。

「7外伝」のプレイレビューのはずが前作までについて語りすぎてしまった…

さて、本作のゲームシステムは7から入ったプレイヤーにも楽しんでもらえるように配慮されており、アドベンチャースタイル初心者でも快適に遊べるように調整されているのだが、制作側は「シリーズファン」を1番念頭に置いて作ったであろうと思う。
外伝でありシナリオボリュームはナンバリングと比較して少ないが、密度は過去最高なのではなかろうか。
噛み締めながらプレイしたからかもしれないが、実に噛み締めがいのある内容だ。

バトルシステムもこれまでのシリーズの集大成かと思いきや全く新しいチャレンジもされていて、「応龍(桐生一馬の代名詞とも言えるケンカスタイル)」と「エージェント(全く新しいガジェットアクションスタイル)」を切り替えて戦うのがとても楽しかった。
エージェントは1対多数に強いスタイルなので、雑魚戦ではエージェント、ボス戦では応龍(素早いバスにはエージェントも効果的)と言った切り替えをベースにとしつつ進めつつ、レベルカンスト後は、敢えて「蛍(タバコ爆弾)」のみで戦うなどの縛りプレイで楽しんだりもした。タバコ爆弾で吹っ飛ぶ敵を残して颯爽とその場を去るというような「アクション映画のワンシーン」のようなシチュエーションを作ってみたり、個人的にはこの「蛍」をどう織り混ぜていくか考えながらバトルするのが楽しかった。
(使いやすい&最強なのは「蜘蛛」一択だと思う)

本作の主なフィールドは蒼天掘なのだが、あちこち行ったり来たりすることがない分、余すことなくフィールド散策を楽しめた気がする。
特に「蜘蛛」を使った鍵やアイテム探しは、フィールド散策を楽しむのにも一役買っており、いつもだったら走り回るところを、キョロキョロと歩きながらじっくりと堪能することができた。

「闘技場(醍醐味は集団戦/育成してオールSまで頑張った)」「ポケサー(後半の難易度がかなり高くライバルがめちゃくちゃ多かったが最後まで頑張った)」「カラオケ(全曲100点達成)(「ばかみたい」は言わずもがな「さよならSilentNight」が個人的には最高の1曲)」「キャバクラ(写真より動いている生キャバ嬢が◎)」「ダーツ(キャバクラに負けずダーツも最高)」まで、桐生一馬との別れを惜しむかのように楽しみ尽くすことができた。

ストーリーについてはネタバレになるので詳しくは書けないが、私は「7外伝」をプレイして「3」の思い出が強烈に蘇った。「アサガオ」を拠点にした子どもたちと沖縄での生活を中心に描かれた作品で、当時は1,2からの流れの大きな変化もあり、個人的には記憶の薄い作品だったのだが、このタイミングでそのプレイ体験や思い出がオーバーラップしてくるとは思っていなかったし、時を経てこのタイミングで大きな意味をもつ作品になったのは間違いない。もちろん3をプレイしていないからといって「7外伝」を楽しめないわけでは全くないので補足しておく。
本作は、シリーズファンの気持ちに寄り添うように、過去のゲーム体験によって更に味わい深くなるようにシナリオが構成されているようで、物語の終盤にはプレイヤーは桐生とのシンクロ率がどんどん高まっていくのだ。
おそらくはファンであればあるほどに。

「8」の最新プロモーションで、桐生一馬は「エンディングノート」をしたためるそうだ。
これまでのプロモーションで明らかにされているのだが、彼は ガン を患っているらしい。
そこにきて「エンディング」だ。
我々プレイヤーと桐生一馬にはどのような別れが用意されているだろう。
それが永遠の別れになるのか、そうでないのか。何もわからない。別れは怖い。
せっかくまた彼と再会できたのに。

だが、7外伝を通して龍が如くスタジオの桐生一馬への想い、プレイヤーへの愛が心の底まで届いたから、桐生一馬の物語が8で終わるのかその先があるのかは分からないが、この先もずっと「龍が如く」のファンでいたいと思う。

私と同じようにもし7を機にシリーズから離れてしまったファンがいるなら、一旦その気持ちは脇に置いてまた龍が如くに触れてみてほしい。
きっと、「また会いにきてよかった」と思えるはず。

変わらずネオン輝く街で、いつまでも熱い男たちが待っていてくれてるから。


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