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スポーツビジネスは「海外市場」に目を向けると、もっとおもしろくなる!

スポーツのもつ大きな特徴に「海外」とのつながりやすさがある。

スポーツは万国共通のコンテンツ。その特性をうまく活用して、ビジネスに繋げる動きがいま注目されているんだ。

ぼくは全国のスポーツクラブの経営支援をする会社をやっていて、日々いろんなクラブや企業、行政と話をしている。そのなかでも、海外市場に注目する動きが増えてきているのを感じている。

「スポーツ×海外市場」は、ビジネスとしてもかなりインパクトが大きく、可能性のある分野だと思うので、詳しく掘り下げてみたいと思う。

スポーツが好きな人はもちろん、海外での事業展開に興味のあるビジネスパーソンにも、ぜひ読んでもらえるとうれしい!

スポーツが「企業の海外進出」の足がかりになる

海外市場といえば、インバウンド需要をイメージする人が多いかもしれない。

確かに、スポーツでもインバウンドを捉えることは欠かせない。アリーナやスタジアムを充実させ、スポーツのエンタメ性を高めて「観光資源」にする。VIPルームを用意すれば、客単価も数百万円に上げられる。

また、北海道のニセコのようにスポーツを「する」ことへの需要もある。空手や柔道など、日本が本場の競技がこれに続く可能性もあるだろう。

でも、注目されてるのはそれだけじゃない。

スポーツクラブは「日本企業の海外進出の足がかり」としても活用できるんだ。

どういうことか? かんたんに説明したい。

そもそも、企業が東南アジアに進出するのってめちゃくちゃ難しい。いわゆる「袖の下文化」があったり、詐欺に遭うことも多いからだ。組む相手を間違えると「不動産の月額料金だけを請求されて、まったくお店の開発が進まない」なんてこともよく耳にする。

そこで、安全な企業とつながるために、スポーツクラブが役に立つんだ。

というのも、アジアのスポーツクラブのオーナー企業は、財閥のトップや王族であることが多い。タイやベトナムのチームと提携している日本のクラブのスポンサーになることで、クラブを介して現地の財閥を紹介してもらえるわけだ。

いきなり現地のトップ企業とつながることができる。スポーツを介することで、リーズナブルに、効率よく海外進出のコネクションが得られるわけだ。

スポーツを介したことでアジア進出に成功

実はスポーツを通じた海外展開は、すでに複数のクラブでおこなわれている。

たとえばJリーグの北海道コンサドーレ札幌は、クラブのネットワークを活かして、スポンサー企業のタイへの進出をサポートしている。

この記事で紹介されているのは、「ガリガリ君」で有名な赤城乳業株式会社の事例。

コンサドーレを介して、現地の財閥チャロン・ポカパングループ(CPグループ)とつながったことで、赤城乳業はタイのセブンイレブンで商品を販売できるようになったんだ。

コンサドーレには2022年まで「タイのメッシ」とよばれるスター選手、チャナティップ選手が所属していた。そのときはコンサドーレのスポンサー企業がタイでプロモーションをする際に、チャナティップ選手に販促のアイコンになってもらったりもしている。

販促だけでなく、現地法人の社内研修や社内広報にチャナティップ選手を起用したインナーブランディングの取り組みもおこなったそうだ。

海外展開といえば、商社やコンサル会社を使うのがまだまだ一般的だと思う。でも、こんなふうに「企業の海外展開」と「スポーツ」はめちゃくちゃ相性がいい。まだ知られていないだけで、企業さんに話をすると「めちゃくちゃアリですね」といってもらえることも多いんだ。

セレッソ大阪とタイのシンハービール

海外の大手企業が、日本のスポーツクラブのスポンサーになった事例もある。

セレッソ大阪は、タイのビールメーカー「シンハーコーポレーション」とスポンサー契約を結んでる。「シンハービール」で有名な、財閥系のすごく大きな企業だ。セレッソとコラボしたプロモーションをやったりして、日本でのシェア拡大に活かしている。

なぜ、タイの企業がセレッソ大阪にスポンサーをすることになったのか?

セレッソ大阪は、タイの「バンコク・グラスFC」(現在BGパトゥム・ユナイテッドFC)というサッカークラブと交友があった。セレッソ大阪はバンコク・グラスFCに対して、サッカーの技術指導のサポートをしたりしていたんだ。

そしてバンコク・グラスFCのメインスポンサーについていたのが、シンハービールだった。 バンコク・グラスFCという現地のクラブを介して、セレッソ大阪とシンハービールは繋がったわけだ。

これだけでもおもしろいんだけど、この話にはさらに続きがある。

もともとセレッソ大阪には「ヤンマー」という耕運機の企業がスポンサーについている。

セレッソ大阪は、シンハービールの財閥ネットワークを通じて、ヤンマーをタイとベトナムに進出させている。東南アジアでヤンマーの耕運機が売れてるらしいんだ。

つまりまとめると、

・シンハービールの日本市場拡大を、セレッソ大阪がサポートする (タイ→日本)
・ヤンマーのタイ市場への拡大を、バンコク・グラスがサポートする(日本→タイ)

どちらの国のスポンサーにもメリットがあったわけだ。クラブの存在が国をまたいで企業をつなぎ、大きなインパクトを生んでいる。これはすごいことだと思う。

日本の「コーチ」はアジアで高い需要がある

日本のスポーツは、アジア圏ではトップレベルの強さだ。サッカーもそうだし、バスケも強い。野球もWBCで優勝したわけだし、ラグビーや卓球も強い。

一方で東南アジアのスポーツは、これから伸びていくところ。ちょうどいま、すごく伸びてきてるところだ。伸び始めだからこそ「現地に選手育成のプロがまだまだ足りない」ことが課題になっている。

そこで、日本の優秀な「コーチ派遣」への需要が、アジア圏で高まっているんだ。

セレッソ大阪の場合もそうだった。

セレッソはタイのクラブに対して、Jリーグの育成コーチを派遣したり、育成ノウハウを提供する。そのつながりを活かして、セレッソはタイのスポンサーをつないでもらう。そういう提携が可能になったんだ。

アジア枠を使って交流する

選手の移籍もうまく活用できるとおもしろい。

JリーグやBリーグには「アジア枠」というものがある。超ざっくりいうと、アジア人選手は「外国人枠」とは別枠で、チームに入れてもいいよというルールだ。

日本のチームが東南アジアの選手を獲得すれば、現地の企業と繋がるきっかけになる。向こうのファンに日本を知ってもらえたりもするわけだ。

そうやって、コーチや選手を通して提携したり、親善試合をやったりするのが、海外連携への最初の一歩になると思う。

イギリスの証券会社が名古屋のアリーナと契約

海外の会社が、日本市場への進出のためにスポーツを活用することもある。

最近は名古屋のIGアリーナが、日本最大、アジアでも最大規模の価格でディールした。契約したのはイギリスの証券会社「IGグループ」だ。

IGグループは世界で31万人以上の利用者がいる証券会社。だけど、日本での知名度はまだまだ低い。そこでアリーナの命名権をもつことで、知名度と信頼感を得て、日本での展開がしやすくなることが狙いだそうだ。

スポーツは万国共有のコンテンツ。さらに公共性が高いので、信頼感も得やすい。だからこそやっぱり、グローバルに進出したい企業の相性がとてもいいんだ。

琉球ゴールデンキングスの覚悟

最近、新たに海外へと目を向けはじめたチームがある。

Bリーグの「琉球ゴールデンキングス」だ。

8000人のキャパシティと最新の音響やビジョンを誇る「沖縄アリーナ」をホームとし、昨年のBリーグでは見事優勝を果たした。いま、とても勢いのあるチームだ。

彼らはもともと「沖縄をもっと元気に」という理念を掲げていた。それに加えて新たに、2023年からは「沖縄を世界へ」というメッセージを打ち出したんだ。

実は、検討段階でのコピーは「沖縄から世界へ」だった。でも「沖縄から」という言葉だと、沖縄を置いて世界に出ていくようにも見える。キングスがやりたいのはそうじゃない。地域を引き連れて世界にいくこと。観光大国である沖縄のプロモーションを、自分たちが背負っていくことだ。

それで「沖縄を世界へ」という言葉になった。

地元を代表する覚悟が感じられる、かっこいいメッセージだ。こうやって、世界を見据えたメッセージを大々的に掲げたことは、ブランディングとしてもかなり大きいと思う。

那覇空港にも大きなクリエイティブを掲示していて、キングスの覚悟がしっかり感じられる。

実際に、台湾のチームを招待してエキシビションマッチをやったり、EASLっていう東アジアの大会の中で台湾のチームを迎えて試合をしたりしはじめているんだ。

スポーツを通して、日本の魅力を世界へ

スポーツクラブはもともと「地域に根差している」という特徴をもっている。そこに「万国共通のコンテンツである」という特徴が加われば、すごくおもしろい展開になると思う。

つまりスポーツクラブが、地域の魅力を外に発信するメディアになれるということだ。地域の魅力を、広く世界にまで発信していける。スポーツクラブはそういう可能性のある存在だと思う。

キングスも今後、台湾などで試合をやることもあるだろう。そのときに沖縄のコンベンションビューローなんかとコラボして、会場に沖縄県の魅力を伝えるブースを用意したりできるはず。それをやれると、本当に「沖縄を世界へ」を体現できていくはずだ。

日本には、世界に誇れる技術がある

技術力がある日本の会社や工場が、スポーツチームを活用して、海外に展開することもできるかもしれない。目立たないけれどすごい技術を持つ会社。それがスポーツを通じて海外の商圏に進出し、日本の技術を展開していく。

日本のスポーツがいろんなジャンルでどんどん強くなって、存在感が増せば増すほど、育成や選手の移籍などをきっかけに海外と繋がりやすくなる。スポーツが強くなればなるほど、日本のビジネス界にも大きなメリットがあるーー。

そんな世界観、すごくおもしろいと思うんだ。

「外貨を稼ぐ」ことは、スポーツだけじゃなく日本経済にとっても、絶対にやらなきゃいけない課題だ。いま日本では再エネなどの環境ビジネスが、外貨を稼ぐための大きな柱になっている。そのポジションを「スポーツビジネス」も狙えるんじゃないか。

スポーツが盛り上がるほど、経済的にも、日本全体が元気になっていく。そんな未来をぼくは期待しているし、そうなるように仕掛けていくつもりだ。

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