自分に牙を向ける

9月17日
バイト先に新しい人が入ってきた。

健康的に焼けた肌と白い歯、そして隆々とした筋肉が印象的な男性。自己紹介のときの笑顔も抜群に明るい。
元来、愛想笑いは得意なほうなので、そつなく笑みを浮かべて挨拶をしたが、内心は自己嫌悪に陥っていた。あの人がすこぶる仕事のできる人だったらどうしよう。明るくて、背筋も伸びてて、ハキハキしてて、それで仕事ができたら、陰気で猫背でどんよりしてる私の価値なんて0突き抜けてマイナスになるんだろうな。
鬱蒼とした感情を決して露わにしないよう、大好きな漫才を聴きながら仕事をして明るさを保った。

私はこの職場の人にどう思われているのだろう。
いつも明るく振舞っているつもりだし、仕事もそこそこちゃんとしているつもりだ。たまに突然お休みをもらってしまうので扱いづらいと思われていても仕方ないかもしれないが、それでもクビにされていない現状を思うと労働力にはなっているのかもしれない。
でも結局、人からどう思われているかなんてわからない。面と向かって言ってもらえるようなものではないので、これからもずっとわからずモヤモヤし続けるのだろう。……かと言って「お前のこと嫌いなんだよね」と言われて正気でいられる自信は微塵もないので、このままでいい。

そんなことを考えながら自宅でテレビを観ていたら、気がついたときにはめちゃくちゃ爪を噛んでいた。
もともと癖としてはあった。不安になったり、イライラやプレッシャーを感じるたびに爪を噛み、ハッとしてヤスリで形を整える。何とかギザギザとした棘を取るも、白い箇所がすっかりなくなった弱々しい爪を見て、本日何度目かの自己嫌悪タイム。
SNSで自分の手首を切りつけた跡を載せたり、大量の処方薬の画像をアップしている人たちと私は違うと思い込んでいたが、爪を噛む行為も立派な自傷行為らしい。気づかないふりをしていたが、私は信じられないくらい弱い人間なのである。こんな時にポジティブなことなんて思いつきやしない。

それでも生きてる

息をしてるだけで褒めてほしい。

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