宿命に抗ってもムダ

退職した五年前の今日は初めての専業主婦で、アンケート欄に『無職』と記入するたびに落ち込んでいた。結局直ぐに会社の監査役になったので、専業主婦だった期間はほんの一瞬。とは言え、名ばかり役員の実質セミリタイア生活なので、働きたくてウズウズして知り合いのリクルーターに接触してたら、生憎のコロナ禍。

そうこうしているうちに五年が過ぎ、無我の境地に至った今は結局誰もが宿命には抗えないんだな、と実感。貧乏な実家の親の世話が肩にのしかかって、気儘な海外暮らしを諦めて、超日本男子のお坊ちゃんと結婚して、愛国心皆無でも日本社会でワンオペで会社員を続けたおかげで実家の親に尽くし乍ら、自分の老後資産も形成できた。妻の稼ぎに無頓着な夫には干渉されず、自分の稼ぎだけで趣味のボランティアに没頭出来る私は幸せの実感は薄いけど、多分凄く幸運なのでしょう。

資産家の親のお金で四十でカナダに語学留学して現地で彼を捕まえて結婚した知人は、DINKS で年に二か月は海外に滞在している旅行ガイド。親の面倒をみることなく親に常に尻拭いして貰い、幾つになっても自分を最優先して生きている我儘な彼女の生活はまさに私の夢だったけど、バンクーバーの田舎暮らしが大嫌いで日本に帰国したくてしょうがない彼女にとっては、都会でアルマーニのスーツを着て仕事しながら夫も子どももいる私の人生が完璧に見えるらしい。隣の芝生は青い。

手に入るものを大切にして、手に入らないものは欲しがらない。好きとか嫌いなどの感情に惑わされず、乗れない波はスルーするのがリスクを回避して賢明な生き方だけど、『楽しい』という観点からはそれは幸せとは言えないかもしれないが、楽しくはなくても、自分は大人としてするべき責任を果たしている安堵感はある。

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