いくら“無風”とはいえ・・・

かつて野党に“風”が吹いていた国政選挙について時の首相が「(無党派層は選挙に)関心がないといって寝てしまってくれれば、それでいいんですけれど……」と発言して大炎上したことがあった。民主主義の根幹である選挙を自分たちの勝敗だけで認識しているというホンネがダダ漏れである。

昨日の参議院石川選挙区の補欠選挙の投票率が29.93%だったと報じられた。3人に2人以上が「関心がないといって寝て」いたことになる。結果を見ると自民党の候補がトリプルスコアで圧勝していて、なるほど「わざわざ投票に行っても行かなくても、どうせ結果は同じ」と思ったのかもしれない。その気分、わからないでもない。

3年前の参院選の投票率は47.00%だったという。接戦かどうか、候補者の知名度、全国的に選挙ムードになっているかどうかなどいろいろな要素があろうが、それにしても17ポイントも急落するものなのか。

私が駐在していたころ、東南アジアのタイでは選挙の前日から当日は酒類の販売が禁止されていた(軍政になった現在がどうなっているのかは知らない)。カミさんは「呑んじゃって選挙に行かなくなるから?」と推察していたが、正解は「酒を呑んで政治談義が熱くなり過ぎると喧嘩になるから」。クーデター騒ぎを繰り返すお国柄。それだけに与えられた参政権への“想い”も熱いのだろう。

選挙は民主主義の根幹。普通選挙が行われるようになった戦後生まれとして当たり前のように享受している。しかし、しっかり調べた訳ではないが、公正な選挙が機能している国は実はそんなに多くない。「朝鮮民主主義人民共和国」を謳っている国のありさまはあのとおり。たとえ結果がわかっていても、とにかく参政権は行使する。与党候補を支持するならそれを表明できるし、野党に投票すればそれは批判票という民意の反映になる。

「家で寝ているだけ」という姿勢は、いつかこの大切な権利がなくなるような事態を招いてしまうかもしれないではないか。
(22/4/25)

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