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その感情は、私たちがつくった枠組みの中で起きる

ケネス・ガーゲンとメアリー・ガーゲンの「現実はいつも対話から生まれる」を読んでいました。

心理学者であるガーゲン夫妻は、「社会構成主義」という考え方を提唱していて、私はその理論に沿って物事を考えることが多くあります。今回もいろいろ考えたので、シェア。

本はこちら


社会構成主義とは?


ざっくり言うと、社会構成主義とは「社会の様々なことは、人の頭の中でつくられたものである」ということです。私たちが普段から使っている概念は、もともとあったわけではなくて、私たちが生きていく中でつくりあげられただけだ・・・ということなのです。

たとえば、「障害」なんていうのはまさに、私たちがつくりあげたラベルの一つです。「IQ◯◯以下だと、知的障害と診断される」というのは、それが決められた時代に生きていた人たちが話し合って決めたことです。

時代によって概念はどんどんつくられるので、以前は存在しなかった「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」など、新しく出てくる障害もあります。「ある一定以上に注意散漫な人はADHDだ」と一度決めると、「あの人もこの人もADHDだ!」「私って、ADHDだったんだ!」と、当てはまる人が出てきます。

それは、もともと存在していた障害ではなく、社会の流れの中で私たちが作り上げた障害だということなのです。もっと言えば、「障害」と決めたのも私たちだし、「注意散漫だと困る」と決めたのも私たちです。


さらには、文化によっても概念は変わります。

たとえば、妄想(実際には起きていないことを起きたと思うこと)や幻聴(実際は聞こえない音が聞こえること)があると、現代の日本では精神疾患を疑われます。

でも、違う国では「神の子」と言われることもある。幻聴は、神からのお告げだというのです。悪霊に憑かれていると言われる文化もあります。

「治療する」も、社会的に構成された概念です。「精神疾患は医師が治療するもの」というルールをつくりあげたのは私たち。でもそれは日本に住む私たちが、アメリカやヨーロッパから来た方法を取り入れているだけです。別の国では、シャーマンとか、タンキーと呼ばれる人に「とり憑いたものを落としてもらう」という方法もあります。「幻聴と共に生きる」という選択肢が尊重される文化もあります。


そんなわけで、私たちは全て「私たちの集団が構成した概念」の中で生きています。最初から決まっていたことなんてひとつもない。私たちは日々、概念をつくりあげながら生きている。

私は社会構成主義という考え方に出会ってから、物事の視点がガラリと変わってとても人生を楽しんでいます。物事に正しい、間違いもなく、事実だと思っているあれもこれも、私たちの頭の中でつくりあげられただけなんだと。


感情も、つくられている

障害というラベリングの話はわかりやすいと思いますが、私たちの感情も「私たちによってつくられたもの」と考えるとどうでしょう。面白い。

たとえば、夫が他の女性とデートを繰り返していたことが発覚したとして。

私たちは「夫婦は他にパートナーをつくるべきではない」「不倫は裏切りだ」という私たちがつくった概念の中を参考に「悲しむ」「怒る」などの感情を体験します。

「夫婦は1対1」とか「二人は同時に愛せない」とか、それも私たちがつくった感覚です。これが一夫多妻が普通な時代や国であれば、また別の感情が湧くかもしれません。

この感覚を、「枠組み」と呼んでみます。【夫婦は1対1という枠組み】【不倫は裏切りという枠組み】と、呼んで考えてみます。

そうすると、私は自分の感情が出てきた時に、毎回「私はどの枠組みでこの感情を体験しているんだろう?」と思うようになってきます。

さっきの例ですが、夫が私じゃない人とデートしていることがわかったら、私こそ悲しみと怒りで大騒ぎすると思います。私たちがつくった概念とはいえ、嫌なもんは嫌なのです。社会構成主義は、「私たちがつくった概念だから、そんなこと気にしなくていいんだよ」ということを言いたいわけではありません。

ただ、その視点でいろいろ観察してみようぜ、という話。

きっと私は【夫婦は永遠!】とか【夫婦は1対1!】という枠組みを採用して、怒っているんだな〜と思うのです。

それ以外にも、【遅刻はだらしない】とか【嘘つきは最低】とか【誠実に生きると天国に行く】とか、いろんな枠組みがあります。みんな、私たちがつくった概念です。でも私たちはそれを採用して、怒ったり、しばらく会うのをやめたり、いいことしたりします。

他にもたくさんあるでしょう。美人の定義とか、優秀の定義とか。


そんなわけで、あなたは今、どんなことで感情が動いていますか?それは、どの枠組みの中で起きていますか?

観察してみると、楽しいよ〜という話。

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2024年のテーマは、やめるまで楽しむこと。手放すことを恐れず、その瞬間までを楽しめばいい。そんなハマダのこだわり記事はこちらに収めます。


ハマダユイ
ソーシャルワーカー12年目。大学教員をやりながら、相談室バオバブで個別相談を受けている。精神疾患にまつわる悩み事、家族のこと、人間関係のこと、仕事のこと…。いろんな人と一緒に作戦会議を開く毎日。

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