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蓮池で泣いたはなし

ー奈良・十輪院ー

ひとり旅で奈良を訪れた。
おひとりさま行動は好きだけど、とうとうひとり旅まで実行してしまった。

今思えば精神的に爆発寸前だったんだと思う。
毎日責任感と作り笑顔で必死に自分を押し殺していた。

誰かが怒られていたら私のせい
シフトじゃない時に起こった出来事も私のせい

すべてのことに胸を張れなければいけない
そんなことできない自分が好きになれない
常になにか背負っていなければいけない
私なんか甘やかされてはいけない

自覚していなかったがそんな状態だった。
もうボロボロだ、私。
笑っちゃう。

奈良にした理由は歴史に触れられるし、京都より人が少ないと思ったから。
1日目はメジャーどころを回って、疲れたから人力車に乗った。
2日目は朝から人力車の車夫さんから教えてもらった神社を中心に回った。

そのひとつに十輪院というお寺があった。
1日目に訪れたメジャーどころとは違い、私のほかに数人しかいなかった。
しかもみんなおじさまでカメラを持っている。
何を撮ってらっしゃるのかと思ったら

お庭に立派な蓮池があった。
訪れた時間がちょうど蓮が開く時間だった。

シンとした朝の空気と池に流れる水の音だけ。
そして一面の蓮の花。

あぁ、ここは極楽か

そう思った瞬間、急に涙が出てきた。
自分でも信じられなかった。
こんなところで泣くなんて。

その時思った。
浄化だ。
私、限界なんだわ。

そこまでにならないと自分の限界に気づけないなんて、
ちょっと不器用すぎるけど、それが私だからしょうがない。
そう思って、壊れる前に仕事を辞めることにした。

すぐには不器用な性格は変えられない。
今も心のどこかで誰かに言い訳しながら生きている。
そんな性格の自分も受け入れながら、ブラッシュアップしていきたい。

自分のことを、まず自分が一番好きであってほしい。
残りの人生、自分を大切にして生きよう。

十輪院のお庭はあの時の私にとって本当に極楽で
蓮池のほとりで泣いたことは、クモの糸だったのかもしれない。

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