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白藍の目ざめ

きのうの夜、深型フライパンになみなみ作ったハヤシライスをお腹いっぱい食べて、倒れるように眠ってしまった。
寝支度もせずに朝まで寝入ってしまうだなんて、信じられない、と思われるかもしれないが、我が家では眠る人は眠るままにしておく。
私は意識のないなかズボンを脱いで、パーカーにパンツ一枚の姿になってベッドの上でうなされていた。

翌朝、いつもよりずいぶん早く目が覚めた。
外はまだ暗い。
のそのそと起き出して浴室に行き、湯船に熱いお湯をはる。
お湯がいっぱいになると「お風呂がわきました」という明るい機械音声がリビングに響く。着替えを持って浴室に行く。

浴室はまだ寒く、湯船の中からは作りたての綿あめのような微かな湯気がたちのぼっていた。
湯船に沈みながら、体の内側が少しずつ温まっていくのを感じて、ほお、とため息をつく。
洗い場に出て、シャンプーを泡立て、髪に絡ませて流し終えるとようやく自分の輪郭がはっきりしてくる。

珪藻土マットに足の水滴を染み込ませ、
浴室を出ると、リビングの明かりがまぶしい。
コーヒーケトルがしゅんしゅんと蒸気を吹いている。
ちょろちょろと夫がコーヒーを淹れる音。
淹れてもらったコーヒーにたっぷりの牛乳を注いで、飲みながら、藍色からうす水色になっていく空を眺める。

ねこがどたばたと家中を走り回って、やり遂げた顔でトイレをする。
「えらいねえ」
「うん、えらい」

私と夫はねこに最大限の賛辞を送り、
そうして朝の時間は過ぎていく。

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