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切ないままの初恋

出会ったのは、彼女が転校してきた
小学5年生の春。

当時は転校生という物珍しさからなのか
彼女に興味津々だった。

クラスは違えど、隣のクラスに転校生が来たよ。
なんて情報はいち早く出回り、早速見に行った私。

小学生の恋愛なんて、ちょっと目立つ存在だったりすると
すぐに好きかも。なんて気持ちになり、いつの間にか消えていく。
少なくとも、私の周りの友人はそんな感じだった。

小学校の頃、私はバスケ部に入っていた。
転校生の彼女も女子バスケ部に入ったこともあり、
だいたい隣のコートで彼女は練習していた。

日頃は、関わることなく
顔見知り程度の関係性だったと思う。

6年生のバレンタインの日。
きっと彼女は気にもとめてないし、今となっては
全く覚えていないと思うが、男子バスケ部に配っていた
生チョコをもらった時の情景は今でも思い出せる。

こんなこと覚えていて、正直気持ち悪いな。
なんて、思うかもしれないが、記憶に嘘をつくことができないのも
初恋の怖いところだと思う。

結局、その時も
「ありがとう!」なんて、ありきたりで、会話を弾ませるわけでも
ない一言で終わってしまった私だった。

彼女とは、結局同じクラスになることはなく
小学校卒業を迎えた。

まともに話したこともないまま、同じ中学に進み
相変わらず、彼女のことが気になったままの私だった。


縮められないままの距離に切ない思いが増していく一方
このままの距離で、嫌われることなく好かれることなく
初恋の憧れの人。というだけの存在としてこの時間を過ごそう。

と煮え切らない感情の私だった。

もちろん、距離は縮まらない間に
私にも、恋人ができることがあった。
その間は、初恋の彼女の面影を感じることはなく
純粋に向き合えてたと思う。


ただ、恋人がいる時間に別れが訪れて
少し心が休まったと思ったら、また初恋の彼女の面影が蘇る。

先に言っておくが、
高校も同じ高校に行くことになる。
そして、高校でも同じクラスになることがない。

8年という月日、同じ学校で過ごしていたのに
一度も同じクラスにならず、話す回数も全く増えない距離だった。

「告白したらいいのに。」なんて言ってくれる友人もいたが
当時の私には、微塵も自信がなく、彼女との距離にさらに大きな距離が
開くことの方が嫌だった。そんな記憶がある。

こうして、距離を詰めることもなく
地元での学生生活が終了。

それぞれ、別々の大学へ進み
彼女への感情は憧れのまま地元での生活を終えた。


彼女と再会したのは
学生時代に免許を取るために行った免許センター。

見覚えのある顔に、一瞬戸惑いながらも
声をかけた。


「久しぶりだね」とたわいもない会話。
周り学生時代の友人もいないその場所で、
「高校まで全然話す機会なかったよね?」なんて、これまでの
距離を埋めるかのように、当時の話をしたのを覚えている。

やっと

少しだけ彼女との距離を近づけることができた気がしていた。
そこで、連絡先を交換した。

そこからは、少し連絡を続けていたが
特にデートに誘うことなどもせず、お互い忙しくなり連絡を
取ることもなくなってしまった。

それから、何もないまま大学を卒業して
社会人1年目にまた再会することとなった。


初恋の彼女は、私が所属していた高校のバスケ部のマネージャーと仲が良く
その二人で遊んでいるときに、たまたま遭遇したのであった。

どれだけ時間が経っても、憧れは憧れのままで
それまでいろんな人に出会ったけど、
変わらず、憧れの人としての彼女の存在は大きかった。


私は、そこで決心した。

これまでずっと伝えられずにいたこの気持ちを
彼女にちゃんと伝えたい。
このまま、もやもやしたままではいけない。そう考えた。

久しぶりの再会をきっかけに、また連絡を取り始めた。

たわいもない会話を続けていた時に思い切って
「今度、ご飯でも行かない?」と誘ってみた。
彼女とご飯を食べに行くこととなった。

まさに、止まっていた時計の針を動かすようにこれまでの
私の感情たちは、進んだように感じた。

良くも悪くもハッキリさせたい。
本当に自分勝手な感情に付き合わせている気もして
今となっては申し訳なさも感じる。


彼女は、県外の大学に進み
当時は大学院生でまだ地元に戻っていなかったため
車で2時間。ドキドキしながらも彼女の住む街に向かった。

彼女と過ごす時間は常にふわふわした感情に包まれ
平静を装うのが大変だった。

食事中や、運転中には
学生時代の話や今の仕事についてなど色々話した。


これまでの距離では感じれない魅力に、さらに好きになっていたと思う。


当たって砕けて気持ちをすっきりさせようなんて意気込みで挑んだのに
諦めるどころか、これまでよりももっと憧れる存在になってしまった。

やっぱり、この気持ちはちゃんと伝えたいと思い。


彼女に告白した。


「今まで、一度も伝えることができなかったけど、好きです。」


彼女の返事は、NOだった。

彼女いわく、
「恋愛の好きって気持ちがわからない。付き合うのは簡単だけど
あなたがそれだけ思ってくれてるのに、その気持ちに答えられないと思うから
ごめんなさい。」


この言葉の本意についてはどうでもいい。
嘘だろうが、本当だろうが、彼女なりの優しさが詰まった言葉だと思った。


そう思わされるほど、まんまと彼女に惚れ込んでしまったのだと思う。

食事に行ったことで、さらに好きになったり
案の定、玉砕してフラれたことは、切ない気持ちがある反面
自分にとっては大きな一歩だったと思う。

これからも彼女のことは忘れることはないと思う。

帰り道に聞いた失恋ソングを今聞くと
その時のことを思い出す。

嫌な感じはしない。
そんなことあったな〜なんてしみじみ思うくらいかな。

約10年間。思いを伝えられなかった
初恋の思い出。

#忘れられない恋物語

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