見出し画像

【記録】ダ・カラ読了の頃の樋口円香感想メモ(2023年5月15日頃)

※ダ・カラ読了の頃に、樋口円香をわたしに都合の良いように好みの解釈に無理やり当て嵌めて思考をおさらいする感想メモが残っていたのでそれを貼るのみです。


樋口円香。
wingプレイ済みなら存知の通り、素晴らしくチャージショット均衡の取れたストーリーから成る一種の脳味噌破壊兵器アイドル。

そもそもノクチル自体がシャニマス従来の一般人からアイドルへのサクセスストーリーとは少し作風が違って、
浅倉透も樋口円香も市川雛菜も、ストーリーとして巧妙に出来すぎているところがあると思う(福丸小糸は、従来型に近く、素直なサクセスストーリーだと思っている。それはそれとして、七草にちかは前者寄りのチャージショット均衡が取れ過ぎている出来過ぎストーリーだとは思う)けど、
その中でも樋口円香wingは巧妙で難解な進行ながらも、終わってから全体を見たところツンデレ概念に近いという点で一番解りやすくて素直な感情の揺さぶりをかけてきていると思ってる。

前半から(1周目から3周目、朝コミュ)大人を舐め腐った態度で本気でヘイトを溜め、
そこから4周目の最後にその感情を吐露する場面(読者不利から一気に同格にまで格上がりした時のカタルシス)にて、
それまでのプレイヤーが知らなかった彼女の努力と、その不快な言動の背景にあった理に適った真意に、思わず心を撃たれる事となるし、
俺は完全敗北を喫して声を出して笑う羽目になったのを忘れていない。

樋口円香にリアリティがあるかと言えばあまりに創作臭いけれど、
でもツンデレとしてはリアリティが強いツンデレとして括っても良いと思う。
ツンデレキャラというと、
ありふれた記号通りに言えば黛冬優子が当て嵌まる事になると思うけど、
樋口円香には人間的面倒臭さがふんだんに込められているために、
黛冬優子と比較するとあまりにもリアリティが強い。
リアリティののめり込みやすさとしては『比企谷八幡』に近いまであると思う。
樋口円香の世間での人気の秘訣はそこにあると思われる。

チャージショットを得るに当たり、
樋口円香は生半可なヘイトではなくて本気のヘイトを貯める。
ヘイトと言う点で言えば七草にちかに並ぶキャラも居ないけれど、
にちかに関しては本人に余裕が無い事と、年相応のクソガキ言動によって、
にちかの背景と感情を知っている為に読者は大人として寛大に許さざるを得ないところがある。
でも樋口円香に関してはシーズン4までそれが解らない。
思考が解らない相手からの攻撃は正体がわからない。
特に本人から焦燥や不安を感じないからこそ判断材料が少なく、
それは悪意や敵意や害意だけなのではないか、と疑ってしまう。
樋口円香に苛ついて彼女と関わる事への希望を折られてしまった人は、
彼女の術中に嵌まってしまったと言ってもいい。
そこに樋口円香の真意がある。

樋口円香は、シャニマスの中でもトップクラスに聡い(多分一番賢いのは市川雛菜だと思っている)。
頭の回転が早く、視野が広い。
でもそれは本人の望まない能力であって、それに性格が見合わず(精神が弱く)、持て余している。
要するに樋口円香には、観え過ぎる。
自分の置かれている状況から、見たくもない他人の状況とその感情が、苦労や苦悩が、観え過ぎてしまう。
樋口円香が望んでいるのは現状維持。
時間が経つといずれ必ず失ってしまうであろう現在を、在るうちに楽しむ事。
間違っても失ってしまわない事。
失わず、でも突出もせず、何者にも成らない事。
身の丈に合わない努力をしない事。
世界を広げて見たくもないモノを見ない事。
そして可能なら、可能な時まで4人で居続ける事。
そして、最たる望みは浅倉透の隣に居続ける事。
でもそれら全てを叶え続ける事は不可能で、
浅倉透は好き勝手に何処かへ行ってしまう。
それに伴い、自身を含めてみんな身の丈に合わない努力をしながら進んでしまう。
己も努力をして進む以上、様々な人達の困難が嫌でも視界に入ってしまう。
樋口円香は浅倉透によって望むもののおよそ全てを失ってしまう。
己の願いと矛盾した状況へどんどん飛び込む事になってしまう。
それでも浅倉透の隣にいる事だけは諦められずにアイドルになる、
という樋口円香にとって何もかもを失ってゆく物語が樋口円香wingの前半。

樋口円香は、何者かに力添えをして欲しくないから、誰かにとっての力になりたくない。
認めて貰おうと思わないから、認める気も無い。
(見たく無いものなので)理解しようとしないし、理解されたくも無い。
期待されたく無いから、自身が何かに期待する事は無い。
とにかく放っておいて欲しい。
誰にも関わらないで欲しい。
私は私に出来うる限りを持って、自身だけの責任の中で自分の欲しい物を守り、それを手に入れ続けるだけ。
というスタイルでアイドルを始めたものの、
プロデューサーが大きく予想に反した人物であり、
それが樋口円香に変化を齎す事となる。
期待を背負いたく無い樋口円香は、当然プロデューサーに期待をしない。
勝手な期待をしても理想通りにはいかないし、損をするだけ。
この世に善人なんか居ない。
そう思って全ては打算の上での言動なのだと辟易しながら活動を続けるも、
プロデューサーは純然たる善意で、裏表の無い純粋な真意で、小細工の無い過労働で、利己的とは程遠い自己犠牲の上に成り立つ利他主義を貫く人物であり、
ある意味期待を大きく裏切られた樋口円香は、
諦観の上に成り立っていた人生の望みの殆どを失うことになっても、
自身の可能性が広がりによってその諦観の前提が崩れ、
現状維持せずとも希望を追い求める(または新しく見つけ出す)事ができるかもしれない、
欲しい物を得ることが出来るかもしれないと感じる。
そして現状を守るはずであった努力を、自身の未来を拓く努力へと変化させることが出来るようになる。
というのが樋口円香wing終盤。
(現状維持は自分以外の環境に対しての望みであり、ここへ来て初めて自分自身に対して望みを持った)

wingだけで見れば思想がサラッと移り変わったかに見えるけど、
樋口円香の諦観の上に成り立つ希望の一つ一つを丁寧に塗り替える物語が、
他のSSRプロデュースシナリオなので、
樋口円香は(正確には、読者は)一年から一年半かけて、じっくりと、綿密に、計画的に、それでいて確実に、じわじわ溶かされている。


おさらい

・現状維持したいけど、儚く崩れてしまう

・身の丈に合わない努力をしたくない

・自身の身の程と能力を知っているから今まで自分に期待して来なかったけど、今から自分の能力と、アイドルとして先の見えない未来に向き合わないといけない

・(放って置けない気持ちがある。観え過ぎるあまり感情移入もしてしまうから)人の苦悩も見たく無い。
小糸だけでいい。

・浅倉透は、美の化身。樋口円香が思う、この世の美の最高峰。
故に、不可抗力として樋口円香の意思決定のおよそ最上位に存在する。
コイツにさえ出会わなければ、振り回される事も、感情が掻き回される事も無かった。

・常に思考がぐちゃぐちゃして、それを整理しながら当たり障りの無い言葉を選ぶ事に神経を擦り減らし続けている身からすると、悩みなんて無いみたいに自由な言動の市川雛菜が羨ましいし、苛つく。

・本音は隠して生きてきた筈なのに、追い詰められて本音を話してからは自分を隠す必要が薄れてしまい、プロデューサー相手には比較的本音で(本当の自分として)接する事になったのに、
プロデューサーはプロデューサーで、プロデューサーとして私に接している事がフェアじゃなくて気に入らない。
本音を隠す事の努力は知っているから、貴方も無理せずに本音で相対してくれれば良いのに、大人として社会人としてプロデューサーとしての殻を脱ぐ素振りがない。
しかしながら信じられない事に、それが裏表の無い貴方の真実の姿なのかもしれないという事に(認めたく無いものの)気付いてきており、
であればもうそのままでも良いから「プロデューサーとして、じゃなく俺個人として」接してくれればそれで良い。
今は。

・浅倉透はプロデューサーが好き。プロデューサーを追ってアイドルになった。(樋口円香はそれを本当に知らない?)

→樋口円香は、プロデューサーへの感情と、浅倉透への感情をどう整理する?(どう転んでも精神が死んでしまうのは確定してると思われる)

コーラを飲ませていただきたい。コカの。