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お婆さんの井戸 − #1分マガジン−

「誰じゃ!人参を盗んだ奴は〜!舌ちょんぎっちゃうぞ〜!どいつもこいつも本当に!」ワシはどうせ嫌われ者の婆さんだ。ガキは面倒だっ。物は盗むしギャーギャーピーピーワシの顔を見ては泣きよる……。

お婆さんは毎日井戸の水を朝と夜に汲みに行きますが、夜は何故か手ぶらで井戸へ向かうのでした。

「今日も子どもらを怒鳴ってしまった。本当はどの子も膝に乗せたいくらい可愛いんじゃが。
だけんど、あの子らの前に出ると、口が悪くなってなぁ…人参なんて何本盗まれてもいいんじゃ…母ちゃんにシチューでも作ってもらえば。それなのに…」お婆さんは一日あったことを真っ暗な井戸の中に向かって毎晩話していたのでした。

そんなある日お婆さんは思い切って子供達に言いました。「おーお前たち、こっちさこーい!」
子供達はお婆さんの乱暴な言い方に驚いて、泣きながら逃げて行きました。
「……。」
お婆さんの右手には溶けかかった飴玉が何個も握られていました。

井戸だけは知っています。
お婆さんが子供達に向けた愛情の深さを。

《おしまい》

⌘⌘⌘

こちらの企画に参加してまーす👍
楽しんでくれたかな🙄
幸助ドンどうかな!?

#ショートショート #掌小説 #小説    みたいなもの 

書くことはヨチヨチ歩きの🐣です。インプットの為に使わせていただきます❤️