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三重で生まれ、冬の京都で仕上げた旨味の雫|冬季限定かぶせ茶「雪の洛北」

<本記事は2024年1月に内容更新しています>

<「かぶせ茶」とは>

「かぶせ茶」とはお茶の分類の1つであり、「煎茶」と「玉露」の中間にあたるお茶と言えます(「玉露」についてのnoteはこちら
そして、その最大の特徴である旨味は、被覆栽培から生まれます。

被覆栽培とは、寒冷紗と呼ばれる布などを新芽に被せて、日光を遮ることで、茶葉の光合成を抑制して育てること。
その結果、渋みや苦味の由来であるカテキンの生成は進行せず、旨味と甘味を感じやすい茶葉が育ちます。

寒冷紗と呼ばれる布などで新芽を覆うことで
自然由来の旨味を茶葉に閉じ込めます

旨味と甘味を備える「かぶせ茶」ですが、玉露との違いは被覆栽培の期間です。

一般的な玉露の被覆期間は16日~20日前後。
たとえば八女伝統玉露の場合、藁(わら)で編んだ自然素材で16日以上、直射日光を遮る棚被覆をおこない、人の手によって新芽を摘む、という明確な基準があります。

それに対して、かぶせ茶の被覆期間は1〜2週間程度。

「かぶせ茶」を表記するにあたって、被覆期間や摘採方法に明確な基準はありません。

そこにあるのは、

被覆栽培によって茶葉の旨味を引き出しつつ、煎茶ならではの爽やかな香りを残すこと

という目的のみ。被覆栽培の期間や摘採方法は、その手段という位置づけです。

明確な栽培基準が無いことへの賛否もありますが、かぶせ茶の柔軟な栽培方法は、茶葉の旨味を広く楽しむことを優先するお茶づくり、といえます。

<茶産地 三重>

当店のかぶせ茶は毎年、三重県で生産された茶葉を主原料に使用します。

なぜ、三重県なのか。
実は三重県は、かぶせ茶の生産量が全国1位の産地です。
年間生産量は1,250t。これは全国のかぶせ茶生産量50%以上を占め、なんと2位の奈良県の生産量と比較すると、約6倍と圧倒的な生産量を誇ります。

かぶせ茶を含む三重県の茶生産量は
静岡県、鹿児島県に続き、全国第3位

当然ですが、生産量の多い産地だからといって、それがそのまま高品質な茶葉とは限りません。

また、三重県が国内最大の産地であっても、日本茶全体から見れば、かぶせ茶の生産量は5%にも満たない希少な茶葉です。

そのため当店では、国内最高品質のかぶせ茶を安定的に仕入れるため、「全国茶品評会出品茶」の入札販売会により原料を調達します。

全国茶品評会は「各年の全国No.1(=最高品質)の茶葉を各種別において審査・決定」する場。その舞台には「自分の茶畑のなかで、今年はこれが一番美味しい!」という自慢の「かぶせ茶」のみが全国の産地から集結します。

当店の釜炒り茶「ごえもん」も同様、国内生産量が少ないため、全国茶品評会より国内最高品質の釜炒り茶原料を仕入れています。

三重県だから仕入れるのではなく、全国の産地から集まった高品質な茶葉を公平・公正な場で吟味した結果、三重県の生産者さんから毎年、かぶせ茶を仕入れさせていただく。

この調達システムに加えて大切なことは、三重県水沢町で生産者の方から直接伺った想いです。

「かぶせ茶だけは、他の産地に負けられない」

静岡県、鹿児島県に続く、全国3位の茶産地ながらも知名度で劣る三重県。
そこで、かぶせ茶だけは譲れない、と国内最高峰の地位を守ろうと切磋琢磨する生産者。
そんな生産者さんと当店との出会いの場となる「全国茶品評会」

これらの要素により、数量は限定されるものの、当店は最高品質のかぶせ茶を適正価格にてお客様へお届けできます。

三重県四日市市水沢町の一乗寺
平安時代、茶栽培の起源と史書に記される茶産地です

<冬の京都仕上げ>

全国茶品評会で仕入れた三重県を主原料とした茶葉は、真冬の京都・宇治田原町にて最終仕上げをおこないます。

日本緑茶発祥の地 京都・宇治田原町にある永谷宗円の生家
当店では50年以上にわたり、宇治田原町の提携工場にて
当店オリジナルの最終加工をおこなっています

実は、かぶせ茶には旨味に加えて、もう一つの特徴が。
それは、茶葉と水色に潜む「青み」です。

被覆栽培下では日光が遮られると、茶葉は少しでも光エネルギーを吸収しようと葉緑素(クロロフィル)を増やします。その結果、かぶせ茶の茶葉は、やや青みを含んだ緑色になります。

この茶葉に含まれる「青み」は、現在の日本緑茶を広めた人物 永谷宗円とも深い関係があります。

江戸中期、お茶(抹茶)は僧侶や貴族階級のごく限れられた人のみが楽しむもの。一般庶民は黒茶と呼ばれる、カテキンが酸化して変色した、見た目が黒っぽい風味の落ちた煎茶を飲んでいました。

そこで、京都・宇治田原町で茶農家だった永谷宗円は、一般庶民にも広く美味しいお茶を飲んでもらうべく、味と香りを兼ね備えた製茶方法の開発に取り組みます。

そして1738年、15年という月日をかけて「青製煎茶製法」を完成させます。

日本緑茶は日本独自の製法です

生葉を蒸し、揉み、乾燥させることで、茶葉本来の旨味と香りを閉じ込める。そこに、ひとたびお湯を注げば、湯呑みのなかで茶畑の香りと味が再現される。
従来の黒色のお茶にはない、見るも鮮やかな、その香りと旨味を備えた緑茶は、江戸を中心に日本各地で瞬く間に普及しました。

衛生的で身体に良い、美味しいお茶を広く一般庶民へ広げたい、と京都宇治田原で生まれた「青製煎茶製法」

そして、豊かな栄養素を茶葉に閉じ込めようと創意工夫された、煎茶の進化形ともいえる「かぶせ茶」

冬季限定かぶせ茶「雪の洛北」は、日本茶づくりの伝統と進化に支えられた商品ともいえます。

<プロダクトについて>

玉露の良さである旨味と甘味。煎茶の持つ爽やかな香り
さらに「かぶせ茶」は、覆い香と呼ばれる青海苔のような個性的な香りを備えます。

この覆い香は、新茶の時期よりもひと夏を越し、熟成されることで「強さ」と「まろやかさ」を増します。
一見すると矛盾する要素ですが、時間経過とともに茶葉成分は化学反応を起こし、角のとれた甘い芳香を生み出します。

当店では、この個性溢れる香りをお届けしたく、あえて冬のこの時期まで低温貯蔵にて茶葉を寝かせたのち、最終仕上げをおこないます。

一年に一度、かぶせ茶の「旬」とも呼べる
この冬の時期だけのお届けです

茶葉から引き出される旨味と甘味。越冬により深みを増した芳醇な香り。
日本茶に備わるそれぞれの良さを最大限に伸ばすように最終仕上げをしています。

数量に限りがあるため、発売後の数ヶ月で売り切れてしまうお品物です。皆様にも是非一度、お早めにお試しいただけますと幸いです。

<販売ページのご案内>

30gと80gの2種類をご用意しています。

<淹れ方&楽しみ方>

〈お薦めの淹れ方〉
 【お一人〜二人用】
  茶葉の量:6g
  湯量:100ml
  湯温:65℃
  抽出時間:60秒

 【三人用~】
  茶葉の量:9g
  湯量:180ml
  湯温:65℃
  抽出時間:60秒

上記の淹れ方は、「かぶせ茶」の個性を楽しんでいただく提案です。
より煎茶らしい「爽やかさ」がお好みの場合には、温度をやや高め(75℃)、抽出時間やや短め(45秒)で、お試しください。

【湯温の調整方法】
①沸騰したお湯を湯呑みに移して湯量をはかり、その後、湯冷ましへ
②再度、湯冷ましから湯呑みへお湯を戻し、急須へ注ぐと湯温は65℃前後です
 ※急須へお湯を注ぐ際は、お湯を茶葉に直接当てず、急須の内側を滑らせるように注いでください(そこでも湯温が下がります)
 ※湯冷ましがない場合はマグカップ等でも問題ありません

【美味しく淹れるポイント】
・湯呑みにお茶を注ぐときは、一気に注ぐのではなく、3回程度に分けて注いでいただくことで、急須の中の茶葉が適度に揺られ、旨味が抽出されます
・最後の一滴は、茶葉の旨味が凝縮された「ゴールデンドロップ」です。急須の中にお茶を残さず、最後の一滴まで湯呑みに注ぎきってください
・2煎目は1煎目より少し熱め(70℃前後)のお湯で、10秒程度でサッと抽出してお淹れください

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皆様の日常の「一服」のお役に立てるよう、作り手の方の想いやおすすめの淹れ方をお伝えしてまいります。

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