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#15 婚姻制度について思うこと

 アルさんと自分の関係を考えていく中で、同じように「差別」と呼ばれているものでも、マイノリティ集団がいることを前提とした差別とマイノリティ集団が存在しないかのように扱う差別で構造が少し異なっているのではないかということを考えるようになった。
 一般的に、女性差別は差別のラスボス、最後に残るのは女性差別と言われているらしいのだけれど、その理由も差別の構造を補助線に考えてみると納得がいくように思える。

 現在の日本の婚姻制度は異性愛で一夫一婦制しか想定していない。かつては「妾」という制度によって、一夫多妻制が認められていたがそれはそれで別の差別だし、どちらにしても異性愛者しか想定していない。

 つまり、制度そのものが「同性愛者は存在しない」ことを前提に作られている

 しかし、現実には同性愛者も両性愛者もその他様々なセクシュアリティが存在してる。存在しないことを前提とされている差別の場合、存在することを可視化して、彼らも包括する社会にしていくことで差別は解消できるはずだ。
 婚姻制度なら、異性婚だけではなく同性婚もできるようにすればいい。これまで異性婚をしていたひとには何の影響もない、そのまま異性婚を続ければいいし、今後も異性婚をするひとはたくさんいる。同性婚が可能になれば、婚姻制度を利用できるひとが増えるというだけのことだ。
 異性婚に拘ったところで、同性愛者は異性婚をしないのだから、だったら、同性婚を可能にして婚姻制度を利用するひとが増えれば、ブライダル業界を含めて経済も動くし社会全体にとってもプラスの面が大きい。
 だからこそ、日本で同性婚を求める声が無視され続けてきているのは、社会におけるホモフォビアがとても強いことを逆に証明してしまっているように思う。制度を作ったときに想定していなかったひとがいるなら、想定した制度に変えればいいだけなのに。

 では、マイノリティ集団がいることを前提とした差別はどうかと言うと、これは不利益を被るひとが存在することによって利益を得ているひとがいる状態だと考えていいと思う。
 医学部の入試において、女性を一律減点することで女性よりも成績が悪い男性の方が優先的に合格とされていた。これは女性の権利を奪うことによって男性が特権を得ていた分かりやすい例のひとつだけれど、その件については、詳しくは述べない。婚姻制度の例を挙げたので、その例で話を続けてみたい。

 異性愛者はマジョリティで婚姻制度を利用することができる。しかし、男性と女性で「婚姻制度が利用できる」の現実は同じだろうか?建前上は平等ということになっているが、夫婦別姓が認められていないため、多くの場合、女性側が姓を変更することになる。こうした男女間の不均衡を指摘し、選択制夫婦別姓を求めるひとに対して「妻の姓も選べる」「事実婚も選べる」「通称として旧姓を使えばいい」と言ってくるひとがいるけれど、多くの場合、男性は結婚しても名前も仕事も変わらないのに、女性は名前が変わり、場合によっては仕事を辞めたり減らしたりすることになる。これは世の中に女性差別があるからであって、夫婦で話しあって解決できる「個人的な話」では全くない。
 男性が名前を変える例が少ないのは「主たる稼ぎ手で仕事上困るから」「女は結婚して夫の家に入るから」など色々理由が考えられるけれど、後者は時代遅れの「家制度」という女性差別をベースにした考え方だし、前者は家事や育児などを一手に担ってくれる女性が家庭にいることを前提に、つまり無給の家事労働を女性に押しつけることで可能になっている差別に基づく社会構造がなければ生まれない発想だと思う。

 つまり、多くのヘテロ女性は、異性愛者というマジョリティだから婚姻制度を利用できるけれど、女性というマイノリティだからこの制度を利用するに当たって姓を変えたり、働き方を変えたり、無賃労働を請け負わされたりする

 その程度のことか、と笑い飛ばせるひともいるのだろう。姓を変えることが嫌ではない、むしろ嬉しい人もいるだろう。私自身、姓を変えることには特に抵抗がなかったので個人的には夫婦別姓が選べなくても困っていない。しかし、うちのように夫が専業主夫であっても妻の私が姓を変えていることにあれこれ言ってくるひとはいないけれど、これが男女逆だったら、きっと専業主婦の妻は「とんでもない嫁」扱いされるのではないかと思う。
 「“寿退社“の何が悪いの?むしろ勝ち組でしょ?」と思う人もいるのだろう。でも、女性が結婚し、妊娠・出産した場合、仕事を続けることが難しい社会であることは明白だ。男性は結婚しても子供が出来ても仕事を続けることが難しくなることなどないのに。家事労働についてはこれまでに色々と書いてきたので省くけれど、男性の「変わらなさ」に比べて、女性はあまりにも多くを背負わされる。

 婚姻制度を利用することは万人に保証されるべき権利だし、制度利用に当たって女性ばかりが強いられていることについては男性側が特権を返上する必要がある。
 権利を万人に認めることと特権を降りてもらうこと、両方が達成されてはじめて婚姻制度は平等なものになるのではないだろうか。
 同性婚も異性婚もどちらも当たり前の「結婚」として扱われること、そして、まずは選択制夫婦別姓の導入、その2つくらい今年中に前進してほしいと思っている。


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