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おもてなし

(わたしの好きなもの、を書こうとして最初に思いついたのがこれだった)

来客が多い家だと思う。
来客が多い家だった、と過去形になってしまったときもある。
でもわたしは自分の家が好きで、
人の家に行くのはちょっぴり緊張するから、人を招くことの方が多かったと思う。

大学生のとき、
同学年の軽音部の女の子で、ひとり暮らしだったのがわたしだけだった
というのにも起因していると思う。
そしてひとり暮らしをするまで、わたしはこの「特性」に気づかなかった。

わたしはお客さんに、お茶を出すのが好きらしい。

お茶だけではない。
コーヒーのときもある。
大学生のときは「わたしの家ではお茶が飲める」と女友達は思っていたに違いない。
マグカップを覗いて、「まだある?」「なんか飲む?」と執拗に問い掛ける。
「もうへいき」と言われても、別に寂しくないのだが
友達のカップを、わたしは何度も覗いてしまう。

最近にいたっては、仕事後に友達が遊びにくる。
夜なのでビールを飲む。(わたしは飲めない)
ビールを飲む友達は、ずうっとビールを飲んでいる。
それもやはり気にしてしまう。
自分が入れたコーヒーやお茶じゃなくてもいいのだ。
「ビール、まだある?」
ビールを飲む人は勝手にビールを勝手に来て、勝手にうちの冷蔵庫に入れているので
もちろん、勝手に冷蔵庫を開けて取って行くこともできる。
決して、わたしが勝ったビールでもおもてなしでもなんでもないのに
「ビール飲む?飲みなよ」と声をかけてしまう。
「いいよ、自分で取るよ」と言われたりすることも、もちろんあるのだが
「いいよ、立ってるからついで」と答え、
でも、ビールの種類は全然わからないので「なんてやつ?」と尋ねる。
お望みのビールを手に取り、友達がプルタブを開けるところを見守って
なぜだかとても満ち足りた気持ちになる。

よく遊びに行く友達の家、というのがある。
鍵を預かっているので、本人がいないときも出入り自由だし
気が向くと掃除をしたりするので、もうひとつの自宅だと思っている。
その部屋に、友達が遊びに来たときもやっぱりいうのだ。
「何か飲む?」「いま、お茶ならこの種類があるけど」
そしてわたしは、お気に入りのケトルでお湯を沸かし、
やっぱり満ち足りた気分でお茶を出すので、やっぱりこの行為そのものが好きなのだと思う。

料理は好きではないので、ふるまったりは決してしない。
(自分で作るぶんを自分で作ることはする、ていうのがわたしの料理だ)

でも、お茶だけは、コーヒーだけは、ビールだけは

そういえば、友達が泊まりにくるたびに
「冷蔵庫にコーヒーあるからね、朝時間があったら飲みなね」と声をかけていた。
おせっかいなおばさんみたいだ。
もちろん強要はしないし、コーヒーを飲む友達に限定しているのだけれど。

お気に入りのスイスミスのココアは、
「ね、おいしいでしょ??何袋か持って帰る??」と言って
大量に持たせたことが、何度もある。
やっぱりおせっかいなおばさんみたいだ。

でもなぜだか、とても満ち足りる。

わたしは、一杯をちびちび飲むので、自分ではあんまりおかわりをしないのだけれど
みんなにお茶を出して、たのしくおしゃべりして
お茶を淹れるついでに、わたしはキッチンで煙草を吸う。

だから、「何か飲む?」とわたしが尋ねたときに
必要だったら遠慮なく答えて欲しいし、何を飲みたいか言って欲しい。
わたしはあなたの前に、カップやらビールやらを置くだけで
なんだかしあわせになるのだ。

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