IT業界からアパレル業界に来て感じた「展示会」についてのこと。
インターネットメディア業界からアパレル業界(まぁ正確にはアパレル業界により近いIT業界だが)に移って、早くも半年が過ぎた。
インターネットメディア業界にいた時もファッション業界と接点がなかったわけではない。大きく変わったのは、コミュニケーションをとるのが年商が数千億程度ある大手アパレル企業だけではなくなったことである。様々なアパレル企業と話すことで、改めてデジタルマーケティングの本質について考えさせられた。
それは、
A:「どこで」B:「誰に」C:「何を」伝えるか
を
①決めて ②振り返って ③チューニングする
ことが必要だということである。
展示会の威力
アパレル業界に慣習的に根付いている「展示会」はスタイリスト・バイヤーや、芸能関係者、もしくはブランドのファンにのみ案内される。
より商品を広く認知させたい場合、前時代(インターネット普及前)には展示会が有効だったように思われる。そこには「関係者と一般消費者」の間に明確な情報格差が存在した。一般的に、ファッションのトレンドは、スタイリストや芸能関係者がそのブランドを愛用し(時には愛用しているように見せかけ)一般消費者に伝わり、爆発的な認知を獲得するという方程式すらあったように感じられる。
つまり、ファッションピラミッドでいうところの「ファッション感度が高い層(芸能人・モデル)」から、「ファッション感度ミドル層」への情報伝達が有効だったのだ。
インターネット普及前までは。
既存手法の進化と効果測定が進化のカギ
今や情報はどこでも閲覧することができる。google、Instagram、Twitter、Facebook、その他インターネットメディアなど‥‥、つまりスタイリストや店舗を経由しなくとも新しい顧客に出会えるのである。
だからこそ、中小ブランドは「展示会」という手法だけにこだわることなく、自社の「こだわり」を、「どこで」「誰に」伝えることが有効なのかどうかを再考する必要があるのではないか。(中小ブランドのモノづくりへのこだわりは本当に本当にレベルが高い)2018年現在、スタイリスト・芸能関係者という(誤解を恐れず言うと)いわゆる「ホームランを打てる」チャネルだけで勝負する必要はないのである。
また、展示会を認知に限らずファンのエンゲージメントを促進するチャネルだと定義したとしても、ファンのエンゲージメントを促進するチャネルとして必ずしも展示会が有効なのかどうかは検討すべきである。さらに言うと、展示会もやりようによっては新規顧客の認知創出にも繋がるとも考えられる。ファンにファンを連れて来てもらえばいいのだ。
要約すると、展示会のような既存の手法の意味を再定義した上で、他の活用方法はないのか、現在の必要条件を満たした結果ができているのかを考えることでファッション業界のマーケティングは今よりももっと進化する可能性ががあるのだ。
そしてその際に、施策の「効果」は必ず「定点観測できるもの」である必要がある。
足元の指標をとにかく達成すれば確かに気分はよくなる上に会社も社員もみんなハッピーではある。しかし、再現性がない手法で達成しても意味がないのだ。なぜその手法がうまくいったのか、うまくいくまでの推移はどのようなものなのか、当初の仮説はどのようなものだったのか‥‥その知見が社内に蓄積されないのはまずい。そのような環境下においては、(特に在庫リスクがある会社にとっては)一時的な成功はむしろ悪である。
だから、
A:「どこで」B:「誰に」C:「何を」伝えるか
を
①決めて ②振り返って ③チューニングする
ことが必要なのだ。
現在自分は、様々なアパレルブランドのマーケティング支援を実施しているが、上記のような考え方の整理を実施するだけで、今後の打ち手がクリアになるケースがかなり多い。
要するに思考整理の方法がないだけなのだ。クリエイティブな人、感度の高い人はアパレル業界には本当にたくさんいる。
だから、斜陽産業と嘆かれているファッション業界でも、この業界で働き始めてからは、明るい未来を感じることの方がむしろ多いのである。
*追記(6/18)
アパレル業界の方々から、展示会はバイヤーの買い付けのためだとご指摘をいただきました。記載が漏れており恐縮です。ただし、バイヤーの買い付けのためだとしても同様に目的に対しての効率の再考は進めた方がいいというのが筆者の考えです。
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