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【読書】私の個性は、スコシ・フンガイ?~辻村深月の世界でドラえもんを

今年度4冊目は『凍りのくじら』。知人に「読後じんわりしてすごいよかった」と勧められ読み始めた。

実際、すごく良かった。
章ごとに1つのドラえもんの道具をテーマに、ドラえもんが大好きな主人公が、ドラえもんのエピソードとともに元彼について振り返り、自分を見つめ直す。

不二子先生のSF(スコシ・フシギ)になぞらえて他人に個性をつける主人公

不二子先生の描くドラえもんのSFの世界は、Science Fictionではなくスコシ・フシギな世界らしい。

これになぞらえ、主人公の女子高生は達観しすぎていて、他人を「スコシ・ナントカ」と個性をつける

・物事に対し何でも主張し、制服廃止運動をする生徒会長の友人には、スコシ・憤慨
・主人公が唯一聞き上手だと称する、物事の捉え方が多面的な先輩には、スコシ・フラット
・孤独を埋めるため、集まりには呼ばれたら行き、どの友人コミュニティにも所属できるが、そのどこでも本音を出さない主人公自身には、スコシ・不在

この「スコシ」に、他人も自分をも馬鹿にしている様子が伺える。誰とも本音で付き合わず、スコシ見えた部分だけで個性を付けているのだ。

*私も、「もっとこうすればいいのに」と思う事は言うし、気になる事は変えようとしてしまう。スコシ・憤慨な友人と一緒だな…と思った。

ドラえもんを改めて見たくなる、あたたかなストーリー

達観しすぎていて女子高生とは思えない主人公だが、孤独であり、その孤独を埋める為に友人と付き合う。

それがだんだんと、様々な出来事から身の回りの他人と向き合い、本当に大切にできる人と生きていくことになる。

ドラえもんって、誰もが好きで、「深く考えるストーリーではない」と思ってきたからこそ、ドラえもんの面白さも再発見できた。
読後、ドラえもんを Netflixで視聴した。

徐々に変わっていく主人公から、あたたかな、満たされた気持ちになることができる本だった。




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