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中医学の応用④症状別の考え方〜『不眠』

『睡眠障害』とは、満足な睡眠がとれていない状態を自覚することで、睡眠時間が短くても本人が満足し日中の生活に支障がないようなら睡眠障害ではありません。

逆に、寝ている時間が長くても、睡眠が浅く日中も眠たい、夢ばかりみて寝た気がしないなど、睡眠に不満があれば対処が必要となります。


睡眠リズムと陰陽


中医学では睡眠のリズムを陰陽のリズムとしてとらえています。

睡眠リズムは、主に五臓の『心』がコントロールしていると考えられています。

太陽が昇って『陽気』が盛んなときには、心神が活発で意識がはっきりとしているために心も体もしっかりと活動ができます。

太陽が沈み陰が盛んになる夜には心神も安静になり、眠りに入るのです。

何らかのトラブルで、陰陽のリズムができなくなると、睡眠障害として現れると考えています。


睡眠障害に使われる漢方薬は、大きく

①過剰な陽気を除く
②不足している陰を補う
に分けられます。


①のタイプでは、陽気が盛んになりすぎているため、夜になっても陽気が神経を掻き乱し、眠れないという一過性の不眠の状態が多く

②のタイプでは、心を養うための陰の不足のために比較的慢性的に不眠を感じる場合が多いです。


急性(一過性)の不眠


 突発性の不眠は、原因が明らかな事が多く、それが取り除かれれば眠れるようになることが多いのが特徴です。

2、3日眠れていなくても、日中の極度なだるさがなく、次の日からは眠れていれば特に漢方薬を使う必要もないでしょう。


そうはいっても、できるだけ早く通常の眠りを取り戻さなければ、日中の活動に支障をきたしたり、慢性化する場合もあるので、1週間以内に通常の眠りを得られなければ漢方薬の服用を考えましょう



急性の不眠は、過度なストレスや悩み事、暴飲暴食などで体内に『熱』が生まれたときに発生しやすくなります。

心火タイプ

想い、悩み、過度の喜びなどによって心気が過度に亢進して化火し、心神をかき乱して神経を刺激するために不眠を引き起こします。

旅行や遠足が楽しみすぎて眠れないというのも、このタイプです。

一過性のものであれば特に治療は必要ありません。


心火タイプの症状



●強い不眠・悶々として眠れない
●眠っても夢をよくみてすぐに目覚める
●胸が暑苦しい
●焦燥・動悸・顔面紅潮
●口が苦い・舌尖がしみるように痛み赤い
●口内炎がよくできる


このタイプでは、まず熱を冷ますことが優先です。

心火タイプに使われる代表的な漢方薬

●黄蓮解毒湯

 

肝うつ化火タイプ

精神的ストレス、怒り、情緒の抑うつ等で肝気の流れが悪くなり、くすぶった肝気が熱となって心神をかき乱すために不眠を生じるものです。


多くの場合には肝火が心にも波及して心火を引き起こすため、心肝火旺の状態になりひどい不眠になります。

肝うつ化火タイプの症状


●あれこれ考え、イライラして眠れず・眠っても夢をよくみて目が覚める
●朝早くに起きる
●怒りっぽい
●目の充血・頭痛・耳鳴り
●胸脇部がはって苦しい
●舌の尖辺が紅

肝うつ化火タイプの不眠に使われる漢方薬


竜胆瀉肝湯


胃気不和タイプ

 暴飲暴食、就寝前の飲食などにより胃内に食べ物が滞留して不消化物による濁気が熱をおび、心神をかき乱すために不眠となるもの です。

胃気不和タイプの症状

なかなか寝付けない
寝ても夢をよくみてすぐ目が覚める
腹満・げっぷ・腹痛 

胃気不和タイプの不眠に使われる漢方薬


保和丸
加味平胃散


食べ過ぎ、飲み過ぎた日の夜には、よく眠れないというのはありますよね。

夕食が遅かったり、夕食に食べ過ぎてしまうと夜間の低血糖が起こりやすくなり、その反動で交感神経が亢進して眠りが浅くなったり途中で何度も起きてしまうということも報告されています。

このタイプでは、寝る前の飲食をなるべく控えたり、内容を見直し胃腸のはたらきを高めるために六君子湯などをしばらく服用するのも良いでしょう。

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睡眠は、身体を休めるだけではなく、脳の情報整理や細胞の代謝が活発に行われる大切な時間です。


睡眠時間をしっかりと確保し、充実した睡眠をとることは、日中の活動を活発にし、生き生きとした楽しい人生を送るためには不可欠。

陰陽バランスを整えることで、ゆったりとからだを休める時間を持てるようにアドバイスできるといいですね。

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