三年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

三年生の皆さん へ

 三年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。卒業式がいつなのかは存じませんが、大方そろそろ卒業ではないでしょうか。

 おかしいですね。どうして三年生なのに卒業してしまうのでしょうか。どうして。私の中ではまだ、皆さんは三年生なのです。四年生になった皆さんのことを、私は知りません。一度も会っていませんから。皆さんのことを、一年間「三年生」と呼んでいました。だって、そこにはまだ別の「四年生」がいらっしゃったからです。

 とは言え、時間は一年経ってしまいました。何も知らないままどこでも交わらないまま、一年間が過ぎてしまいました。単位の回収に焦っていた皆さんが、就職だそうです。笑っちゃいますよ。皆さんは前進しているのに、私は何も変わっていません。何も、変われていないのです。まだ、皆さんのことを三年生と呼んでしまう、そこにしがみついているのです。

 三年生の皆さんは、私にとってとても大切で大好きな先輩方です。二つ学年が上で、つまり、私を部活に入れて下さったのは皆さんなのです。三年生の部長、副部長、その他皆さんが用意してくださった会場で、私はその部活に入ることを決めました。

 入部当初、女子校上がりも相まって人見知りを爆発させていた私を、近くのお寿司に誘ってくださった先輩。「はのとちゃん、お昼食べてないよね?」「いや、食べましたね。」「よし!一緒に寿司いこ~~!」なんて、話を聞いているのかきいていないのかよく分からない先輩でした。そうして部屋を出ると、別の二人の先輩方。「お!はのとちゃんも行くの!」「やった~一年生と一緒~!」今思うと、仲良し三人の昼食に飛び入り参加してしまった私。先輩3人に囲まれた私も、いつもの輪の中に後輩一人が入ってきた先輩方も、双方に緊張していましたね。

 でも、あのときのおかげで、私は先輩方と話すことが出来るようになりました。特にその場にいた三名の先輩とは、その後もよい関係で関わり続けることが出来たと思います。優しくて、可愛くて、どこか抜けていて。でも、生意気な私の面倒を懲りずに見てくださいました。本当にありがとうございます。私と先輩方を繋いでくださった、最初の先輩方。

 入部して二回目、一回目は新入生お披露目だったので、実質最初のライブ。初めて同じバンドを組むことになった部長と副部長。2バンド組んでいて、それぞれに部長若しくは副部長という重圧。出来ない難しいとは言えない雰囲気。失敗できない雰囲気。そのバンドの練習前、私本当にお腹壊したんです。

 特に部長は、新入生に事務的な連絡をしたり、前に出て仕切ったり、時には厳しく接する先輩でした。だから、本当に怖かったんです。でもその練習後、そのイメージは一瞬にして覆ることになります。部室で自分の楽器を片付けていると、部長が入ってきました。狭い部室に二人。心臓バクバクで、一瞬でも早く出ていきたい。でも、片付けも終わらないし、終わったと思ったら部長とタイミング被るし、心臓爆発するんじゃないか、くらいの緊張感。

 そんな中で部長は、「はのとちゃんって、家遠いんだっけ。夜遅くまでごめんね。」と優しく一言。そこには、今まで見たことのない温かい笑顔がありました。きっと、私の緊張を察していたんだと思います。だからあえて、話しかけて下さったんですよね。その後も何度かバンドを組むタイミングがありました、というか、部長と組んだ回数めちゃくちゃ多いですね。私にとっては。ずっと優しくて面白くて、親近感を下さる部長でした。

 そして副部長。部長とは別のバンドで一緒になり、当時から何を考えているのかよく分かりませんでした。いつも笑顔で、というかへらへらしていて、みんなのまとめ役、というか、なだめ役というか、なんとなくその場をまとめる感じ。正直、よく分からないままそのライブは終わってしまったような気がします。

 副部長の印象が変わったのは、もっと後のことです。いつの間にか、はのとちゃん、と呼んでいたところが、はのと、に変わっていました。そのときだと思います。少しは仲良くなれたのかな、と思えました。仲良く、というと先輩後輩という感じではないかもしれませんが、そんな感じです。その後も何度も同じバンドを組みましたね。その度に、私の生意気な軽口を受け止めてくださって、ありがとうございました。

 私には、もう一人怖い先輩がいました。演奏がお化け並みに上手くてかっこよくて、ストイックな先輩。下手くそと努力しない人は嫌いなんだろうな、というイメージ。初めて同じバンドを組んだあの時も、実は最後まで抵抗していました。だって、怖いんですもん。私、そんなうまくないですし。てか、やろうとしてたバンド難しすぎるし。

 初めての練習のときも、ビビり倒しながらやっていました。当たり前ですが、特に問題も起きず、私たちは、私以外が精鋭部隊だったので、トリ2を任されることになりましたね。おかげさまで余計にビビりました。練習中はとっても優しいし面白かったし、多少はイメージ変わりましたが、でも、直接話すことは勿論ないし。それでトリ2なんて…私のプレッシャーは留まるところを知りません。

 でも当日、音出し中にアイコンタクトを送ってくださったとき、演奏が終わって地面に座り込む私に拳を差し出してくださったとき。すべての印象は覆り、残ったのは、優しくて不器用でかっこいい先輩、というイメージでした。その後に組んだバンドで、「このバンド、はのとちゃんじゃなかったら正直やばかったな」と私の技術を褒めて下さったときは、「一生ついていきますアニキィ」という感じでした。

 魑魅魍魎のような三年生の中で、落ち着いた雰囲気だった三人の先輩は、私にとって温かい居場所でした。いつでも優しく話しかけて下さるし、とにかく笑顔が可愛い。笑顔がよく似合う三名でしたね。お二人とは合宿で一緒のバンドをやりました。お一人は、結局一度も組めなくて本当に残念です。

 合宿は、私にとって地獄でした。色々と。一番の原因は、きっと忙しさです。4バンドも組んでしまって、一日8時間の練習でした。私にも遊ぶ時間を…そんな感じで、毎日時間になるとスタジオへ向かう日々。そんな中で、ひと時の安らぎを下さったのが先輩方です。頑張ってて偉いね、なんて笑顔で言われたら、「いや全然!私にかかれば余裕ですよ」とか言ってしまいます。全部のバンドで同期はいなかったので、先輩方に本当に助けられました。

 合宿の後、前よりも沢山話すようになりました。お二人とも、はのと、って呼んで下さるようになったし、というか、もうそれが何よりも嬉しいです。

 もう一方は、バンドこそ組んだことがありませんでしたが、いつも相談に乗ってくださいました。目指すものが同じだったからです。でも、先輩は私には絶対に真似できないくらい沢山のことに一生懸命で、眩しい存在でした。少しでも近づこうとしたけれど、やっぱり難しいです。向上心の権化みたいな先輩は、バンドでも大活躍で、いつも輪を笑顔にされていましたね。一度でいいから、一緒にバンドがしたかったです。

 総じて言えることは、皆さんもれなく大好きということです。皆さんもれなく思い出いっぱいということです。皆さんもれなく最高だということです。今年の最高学年は皆さんそろって卒業できたのでしょうか。うちの部活はそれが危ういので分かりませんが、とにかく、皆さんは一緒にいるところがよく似合います。皆さん楽しそうにじゃれ合う姿が大好きなんです。

 これからもどうか、末永く元気に生きてください。願わくば、折角20歳になったのだから、一緒に飲みたかったです。いつか叶えてくださいね。

2021年3月22日 はのと

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