見出し画像

ヨミマシタホン No.11

『もう死んでいる十二人の女たちと』パク・ソルメ(Bak Solmay) 斎藤 真理子訳 (白水社 2021年 2,000円+tax)

新聞で紹介されているのを読んで興味を持ち図書館で借りた。どんな風に紹介されていたかは例によって忘れてしまったが、読んで良かったと納得している。

この本は韓国の女性作家が書いた、八本のストーリーから構成されている短編集である。巻末にある解説によると本国で出版されている四冊の本から集めたものだそうだ。

先ほど「納得している」と書いたが、一つめを読み始めた時はすぐに期待していたものとは違う話だと思った。とてもオカルト的で暴力的な要素も入っているストーリーで戸惑ってしまった。しかし怖いは怖いのだが、独特な・・・可笑しみ? とも読み取れるような不思議な感覚にやがて惑わされ、最後まで読み切ることができた。

それ以降は最終話のストーリーまで、各話全体に流れるなんとも言えない敢えて言えば無気力ファンタジーのような、と勝手に呼んでいいいのかどうかのこの面妖な想像力と、初めて遭遇したかもしれない話の不可思議な流れ方、を時に何故か心地よく感じてしまいながら、読み継いでいった。

ただ最終話は、また少し怖い世界に戻っている。怖さの質が最初のストーリーとは違っているけれど。


『「個性的」「独創的」「前衛的」「果敢」といった言葉がこの人にはつきもののようである。』 ー とは同じ解説からの引用である。


別の言い方をすれば文字がただ羅列されているだけなのに、そこには文字しかないのに、それらを読んでいくだけでそこには今まで見たことも思ったこともない、世界が必然のように現れているーーー。

とは、彼女の文章には何かの呪文でも混じっている・・・のだろうか。

脳が痺れを起こしたのかもしれない、という感覚を忘れないうちに、これを創作意欲につなげようと思った。納得したと満足で終わらないように。




この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?