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「☑暴言・暴力あり」この情報、必要ですか?

「認知症ケア研究会」in蓮田 (いきやすくなる彩kaiカフェ・ご縁をつむぐkaigoカフェ)
後半は三好春樹さんと友野剛行さんの対談でした。

三好さんといえば「介護界のシーラカンス」と呼ばれ、生活リハビリ講座など全国で多くの講演活動などを行い著書も多数。あとはWikipediaをみてください。
友野さんのことは、今回初めて知りました。船橋市で障がい者支援をおこなう株式会社ふくしネット工房の代表。世間では「断らないふくし」と言われ、受け入れを断られ居場所を失った人たちが全国から集まってくるそうです。
また、職員の独立支援(のれん分け)を積極的に行い、独立後のサポートもしています。

高齢者介護分野の三好さん、障がい福祉分野の友野さん、お二人の初対談では、本質的な話がバンバン出てきました。

「断らないふくし」とは言ってない

周りからそう言われるけど、実は友野さん自身は「断らないふくし」とは言っていないそうです。「だって、断らないのが福祉でしょ」とひょうひょうと話します。

「でも、よそで追い出されて行き場のない人を、友野さんのところでは受け入れられるのはなぜ?」と三好さん。

この問いに対する答えは意外なものでした。

「フェイスシートを見せないんですよ」

「書類で判断するのではなく、自分で感じてくださいと職員には伝えています。」
フェイスシート(アセスメントシート・看護サマリー)には、病院やその前にいた施設での”問題行動”がびっしり書かれています。それを読めばスタッフも「この人は暴れる人」「この人はすぐに怒り出す人」と先入観をもって見て、その情報を元に相手に関わります。すると本人も職員に警戒されていることを”空気”で察します。その結果、両者の間に緊張関係が生まれるのです。
本人が安心していれば”問題行動”は起きません。周囲の人たちとの間の緊張関係が高まりそのストレスが限界を超えるから”問題行動”が起きるのです。

たしかに高齢者介護のフェイスシートにも、病気や心身機能の情報のほかに、”問題行動”についての項目があります。中にはご丁寧にチェックシート形式で。

▢暴言・暴力 ▢介護拒否 ▢異食 ▢被害妄想 ▢収集癖 ▢虚言・・・

チェックが付くと、この人は「暴言暴力の人」ということになります。
そもそもそんな人いるでしょうか?
嫌なこと、不快なことがあるから、感情が乱れる。その感情の乱れをうまく表現できないから、暴言や暴力という行動になるのではないでしょうか?

暴言・暴力の人など存在しません。目の前にいるのは、何らかの不快や不安を感じている人間です。

僕もこれまで「入居前にはフェイスシートをよく読んで」と考えてきましたが、フェイスシートには”不必要な情報”もあるということに気づかされました。
「問題行動のある人」という情報は介護するうえで、何の役に立つのでしょうか。暴力をふるうから安易に近づくなというメッセージにしかなりません。

自社のフェイスシートが、職員とお客さまにどのような影響を与えているのか、改めて見返し、改善策を検討しようと思いました。


めでたしめでたし

立崎直樹


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