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あかんたれにいちゃん9

にいちゃんVS社会保険事務所&税務署

以前も話したが、売上が厳しい企業にのしかかる負担、特にスタートアップ企業が直面するのが社会保険料と税金。社員の給与・事務所の賃料・各種経費と経営には何かとお金がかかる。この運転資金を確保できないと経営を断念せざるを得なくなる。売上が厳しい兄の会社も例外ではなく社会保険料滞納と税金滞納が問題となった。

社会保険事務所と税務署の担当者に事情説明をして、支払い猶予をしてもらっていたようだが、担当者が変わり、急に高圧的な態度に出てきたのだ。支払わなければ差し押さえも辞さないとの通告であった。もちろん支払っていない方が悪いのは百も承知だが。。。。銀行の融資まちでなければ、この問題には私は関わらなかったはずだったが、ここで差し押さえになると銀行の融資話は立ち消えとなる。今となっては、そうなってお手上げになった方が、兄にも家族にもよかったかもしれないと思うが、その時はそんな判断はできなかった。

この金額が想像以上に大きく、頭を悩ませた。結局、私が借金をして兄に貸すことになったのだが、これは売掛とは違い、行ったきりのお金である。そこが私にとっては恐怖でしかなく、早く融資が下りることを祈るばかりであった。

特に税務署の担当者は上から目線で非常に高圧的であったようで、私が兄に交渉することを勧めたが一切聞く耳をもたなかったようだ。なんとか税金の支払いを終えたのだが、蓋を開けてみると税金が二重引き落としになっていたのだ。兄に確認するように伝えると担当者は間違いはないと言い張ってきた。しかし、どう考えてもおかしいと思い、兄の友人の弁護士先生と兄で担当者に面会をしたところ担当者が過ちを認めたのだ。弁護士先生と同席していたこともあり、問題になることを恐れた税務署の担当者は、次回の税金の支払いに猶予期間を設けてくれたのだ。ほんの少しだけ半沢直樹の倍返しとまではいかないが、1/4返しをしたような気になった。

通常このような税務署の対応は稀だと思うが、私も同じような経験がある。昔スピード違反で捕まった時、警察官が青切符を切ったのだが
登録番号を間違えて記載したのだ。私は気づかなかったのだが、あとから警察から電話がかかってきて登録番号を間違えているので、今回の青切符はなかったことにしますとのことだった。私にとってはラッキーだったが、その警察官は上司に相当叱られたのではないかと思う。

話を戻すが、兄が税金滞納しなければこんな面倒なことにならなかったと思うと、誰一人ハッピーにならない事態を引き寄せる兄は、疫病神に好かれているんじゃないかと思わざるをえなかった。

やきとん屋での説得

この社会保険料と税金負担は非常に厳しい金額だったが、その後も、車検代がないとか家賃がないとか、ちょこちょこお金を貸さざるを得ない状況が続いた。
私の感覚も麻痺してきたのか、一発逆転を信じるばかりに、お金を貸し続けていくのであった。銀行の融資が下りることを信じて疑わなかったのは保証協会の担当者等のエピソードがあったからだ。それと当事者でなかったために、兄から情報しか入ってこず、自分で確かめることができなかったかったからである。
そのため、都合のいい情報を都合のいいように信じてしまった。まさに人間の性である。
兄はもう事業をあきらめサラリーマンに戻って、コツコツ働き、少しづつでも返済をする方がいいと私は思った。いや、そうすべきであり、それがみんなが幸せに戻る道だと思ったのだ。

ある日、話があるといい兄と私の行きつけのやきとん屋に行った。
私はもう事業はあきらめて、サラリーマンに戻るように説得した。兄は、大学時代に塾講師のアルバイトをやっていたのだが、私の知る限りでは唯一うまくいっていた仕事であった。だから、塾講師に戻るのがいいのではないかと説得した。兄は、どうにもならない状態になったら塾講師に戻ると約束したが、これだけ家族を犠牲にしているにも関わらず、まだどうにかなると思っていることに驚き、いや呆れるしかなかった。その時、兄に対しては恨みと怒りしかなかった私だが、少し酔ったのだろうか・・・。兄との別れ際に「俺は・・・兄貴にも幸せになってほしいんだよ!」と兄に言ったことを覚えている。その言葉を兄がどう思い、どう心に刻んだかわからないが、兄は猪突猛進どうにもならない状態まで突き進んでいったのである。
                                 つづく


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