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新しいコンテンツビジネスの実現へ。6年目を迎えた、地上波番組との連動型メディア『ハピキャン』に込めた想い ──編集長 大西真裕

2019年春にスタートした『ハピキャン』は、Web・動画コンテンツ・地上波番組を組み合わせた、複合型の情報発信メディアです。キャンプビギナーを中心に、アウトドア体験の「きっかけを生む」コンテンツを届けることを目的に運営されています。

Webメディア『ハピキャン』をはじめ、地上波番組『おぎやはぎのハピキャン』、YouTubeチャンネル『ハピキャンチャンネル』を軸に、Instagram公式LINE, X(旧Twitter)などのメディアも展開。番組制作における、キャンプ関連企業とのタイアップにも積極的に取り組んできました。

今回お話を聞くのは、ハピキャン編集長 / 事業マネージャーの大西真裕。複合型の情報発信メディアというテレビ局として「新しいコンテンツビジネスの形」に挑戦した背景のほか、Webメディア立ち上げ時の苦労や今後の展望、読者への想いについて語ってもらいました。


地上波放送と連動するWebメディア、立ち上げの背景

【プロフィール】大西 真裕(おおにし まさひろ)
ハピキャン編集長 / 事業マネージャー 
1999年に名古屋テレビ放送へ放送技術者として入社。放送システムの設計や管理のほか、カメラマン、IT技術者として従事。2016年にバラエティ番組プロデューサー、2018年にはコンテンツプロデューサーとしてコンテンツ企画を担うように。2019年2月にWebメディア『ハピキャン』を立ち上げると、地上波放送や動画コンテンツも含めた複合メディアを展開。現在は、ハピキャン編集長兼事業マネージャーとして運営に携わっている。2023年4月、ハピキャン事業は6年目を迎える。

──まずは、ハピキャン立ち上げの背景を教えてください。

大西 真裕(以下、大西):私がメ〜テレ(名古屋テレビ放送)で番組プロデューサーをしていた頃、テレビ広告とインターネット広告における広告費の逆転現象が起こり始めていたことと、コンテンツを活用したビジネス、つまりコンテンツビジネスを推進させることが課題としてありました。

テレビ業界ではデジタルシフトの流れが大きくなり、地上波よりもWeb媒体の価値が高くなっていた時期で、今までのように番組ごとの制作費をつかって番組を作るという在り方自体が問われていました。

2018年には東京支社へ転勤となり、作った番組を全国のテレビ局や動画プラットフォームなどに販売するなど、コンテンツビジネス業務により注力することになりましたが、コンテンツを単に販売する以外にも有効な施策があるのではと考え続けていました。

例えば、デジタルシフトの流れやWebメディアの勢いを活用し、かつ「地上波番組」を生かすようなビジネススキームはできないだろうかと。

そこで注目したのが、特定のジャンルに絞った形でWEB上で情報発信をする「特化型サイト」です。扱うジャンルは「キャンプ・アウトドア」にしました。

──なぜ、キャンプだったのでしょうか?

大西:当時、既に関東ではでキャンプブームがみえていましたし、ベンチマークとなるWebメディアもあったので、ある程度の数字の伸びが期待できると考えました。

あとは、私自身の幼少期のキャンプ体験も大きく影響しています。自分のなかで「普遍的で人の(子どもの)心を豊かにするカルチャー」という認識があって、自分の子どもとの時間の過ごし方として、次に何をやりたいかを考えたときに浮かんだのがキャンプをはじめとしたアウトドアでした。

大西と長男(小学5年生)


仕事として向き合うだけでなく、プライベートを通じてでも没頭して情報を集めようというモチベーションが生まれるジャンルであれば、メディアの質も上がって、熱量と継続性も担保できるはずだと考えました。

また、社内で別に進んでいた新番組の企画検討の中で、あるディレクターが「キャンプ企画」を起案していたんです。彼は私と同い年の演出家で、仕事の相談もよくしていた同志でした。

この流れもあって「ジャンルはもうキャンプしかない!」と思いましたね。彼は現在も、『おぎやはぎのハピキャン』の総合演出として関わってくれています。

複数のメディアを活用する、タイアップ広告が人気に

──改めて『ハピキャン』はどのようなメディアでしょうか?

大西:何よりも、キャンプの楽しさが伝わるメディアだと考えています。地上波番組『おぎやはぎのハピキャン』では、とにかくおじさんたちが、ゲストの皆さんが、楽しそうにはしゃいでいる様子が放送されているので、その雰囲気がWebメディアやYouTubeにも反映されているのだと思います。

2019年3月にメ〜テレで地上波放送がスタートした回では、おぎやはぎの2人がオープニングで、「ひと言もキャンプやりたいとは言ってないんですけど……(笑)」って言って始まるんですよね。最高のコメント頂いたな、と思いまして。

ここからスタートして、おぎやはぎさんも、そしてこの番組を見てくれる視聴者の皆さんもキャンプを好きになってくれたら本当に嬉しいですし、WebメディアやYouTubeのコンテンツからもそんなメッセージが届いてくれれば言うことなしですね。

──複合型の情報発信メディアとして、各メディア(媒体)それぞれの立ち位置はどうなっていますか?

大西:一番の看板となるエンタメコンテンツ「おぎやはぎのハピキャン」をマスメディアである地上波で展開し、IP育成のためにブランディングや認知度向上を目指しつつ、地上波はフローしてしまうメディアなので、一方のWebメディアYouTubeでアーカイブコンテンツを展開しています。

Webメディアはスタート時よりSEO対策をていねいに続けてきたことで、今では月間200万UU(2023年12月現在)のメディアに育ちました。

記事内容は番組との連動企画もあれば、キャンプ道具、ノウハウの紹介といった、読んで役に立つ情報もありますし、webメディア独自の企画性を売りにした特集記事も展開しています。

2020年に開設したYouTubeチャンネルも登録者数は27万を超え、アウトドアメディアの中では最多の数字(※2023年12月現在)を誇るまでに成長しました。こちらも地上波番組のアーカイブを公開しつつ、オリジナル動画も併せて公開しています。

──発信力の高いメディアに育ってきたことで、ビジネス面でも良い影響があるのではないでしょうか?

大西:Webメディアの立ち上げから3年ほどで、オーガニック検索からの流入も増えてきました。当初はWeb広告やアフィリエイト収益のみでしたが、営業活動のおかげもあって、純広告や記事広告、動画によるタイアップのご依頼も増えています。

中でも最近増えているのは、YouTube、Web記事、イベント出展を活用したタイアップです。さらに地上波番組の活用も可能です。私たちはこれを「立体展開」と呼んでいて、今もっとも注力する事業の1つになっています。

──どういった点が評価されているのでしょうか?

大西:Webメディアと地上波放送、YouTube、アウトドアイベントなどのリアルの場はそれぞれユーザー層が異なります。言い換えれば、企業が伝えたいメッセージをあらゆる媒体を駆使して、多角的に伝えることが可能になったと言えます。

オフラインのイベントと連携することもありますし、出版社さんとも連携しながら紙媒体に落とし込むクリエイティブを製作することもできます。大きく伝えたいメッセージは同じでも、訴求するポイントをそれぞれの媒体、それぞれのコンテンツで角度や軸を変えることで、読者や視聴者、ユーザーに届けることができるわけです。

品質重視で、読者ファーストのWebメディアをつくるために

──今では順調に見えるWebメディアの運営も、立ち上げ当初は大変なことも多かったのではないでしょうか?

大西:メディア運営チームの体制作りは本当に大変でしたね。番組作りに関しては経験もノウハウもあるので勝手がわかりますが、Webメディアは「記事ってどうやって作るんだっけ?」というところから始まりました。

番組の制作チームはスムーズに構成できたのですが、Webメディアを含むそれ以外の事業部分はメ~テレの人間としてはほぼ私しかいない状況でしたので、外部の方々に頼るほかありませんでした。

最初に計画したのが、クラウドソーシングを活用して記事コンテンツを量産する施策です。業務委託でまるっとお任せする形でスタートを切りました。ところが、サンプルで上がってきた記事の品質が納得いくものではなく、とても悩みました。

当時はまだ「SEO記事であればこれくらいの内容でも公開している」という意見もある一方で、ここで妥協したら思い描いていたものが崩れてしまう感覚もありました。

そこで、記事作成に関する業務をすべて内製に切り替え、ライターのネットワークを独自に構築。ディレクターも採用することで品質を維持できる体制をつくりました。

記事数は、多いときで月に80〜100本は作っていたので、安定して記事を公開していく上では課題も多くありました。今ではWebメディアの運営に明るいメンバーもチームに入ってくれたので対策も取れていますが、当時はかなり苦労をしながら運営をしていました。

──ハピキャンが成長したことで、どんな変化を実感していますか?

大西:最近では「認知」の変化を感じる場面が増えましたね。東京のイベントへ参加したときに、ハピキャンの名前を知っている人が予想以上に多くなってきたことには驚きました。個人的には、名古屋のテレビ局のコンテンツが東京で知られているって、すごいことだと思っています。

──認知が広まったのは、何が大きな理由でしょうか。

大西:『おぎやはぎのハピキャン』が24局、32都道府県でオンエアされている(2023年12月現在)ことも大きな理由だと思いますが、WebメディアやYouTubeでエリアに関係なく、そして地上波番組にも関係なくアーカイブコンテンツを発信できているのも相乗効果を発揮していると考えています。

番組の内容をほかの媒体で展開しても、視聴率が下がるわけではありませんし、とにかくいろんなメディアで積極的に良いコンテンツの発信を続け、さらなる認知の向上に努めていきたいと思っています。

キャンプ・アウトドアメディアから、ライフスタイルの提案へ

──最後に、今後の展望を教えてください。

大西:ハピキャンを通して読者や視聴者の方にお伝えしたいのは、アウトドアを生活のなかに取り入れると、心や人生が豊かになるよ、ということですね。キャンプにかぎらず、ハイキングでも釣りでもいいし、ガーデニングでもいい。究極は散歩だってアウトドアアクティビティだと思っています。

ハピキャンは「特化型メディア」としてキャンプ・アウトドアを中心に扱ってきましたが、最近では少しずつテーマを広げて、より衣食住を意識した「ライフスタイルの提案」も心掛けています。環境や教育に関する話題にもつなげていけると思っていますので、暮らしに密着したカルチャーを読者の皆さんと一緒に作り上げていくことが今後の目標です。

あとは、制作現場のど真ん中にいるメンバーが楽しく仕事をできていることが一番だなって思います。こういうのって、記事の雰囲気として自然に読者に伝わるものだと思うんですよね。イベントやロケに出掛けていく場面も多いので、そういった時に「中の人たちが楽しそうに動いてる」って思ってもらうことが、本当に何より大切だと思っています。


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