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高3でもキャンプ

高校の間、なぜかクラス替えがなかった。担任の丸山一也先生は男前で温厚な性格の上、ユーモアもあったので、クラスの生徒たちとの関係は上々だった。



■反逆児

その丸山先生が夏休みに入る日、挨拶の最後に一言付け加えた。

「今年はキャンプは止めるといいね」と。

高1、高2とキャンプをしたので今年は受験勉強に専念するようにとの親心である。

しかし、親の心、子知らず。

くわえて、クラスには一人だけ性格のひねくれた反逆児がいたのだから、なお悪い。そいつは、先生が教室から出ていくときに、聞こえよがしに声を上げた。

よーっし、今年もキャンプに行くぞぉ!

先生からすると、僕は嫌な奴だったに違いない。そういうことをする自分は先生との距離を感じていたが、それは先生も同じだったのではなかろうか。

すると、「行くか!」の声に乗ってきた仲間が何人かいた。彼らは皆、大学受験や国家試験等を控えていたし、僕よりも先生との仲が良かったので、巻き込んでしまったと悪い気がした。が、キャンプは実行された。

仲間たちと。


■顔、洗わないわよ!

二日目の朝がきて、

「顔を洗いに行くか?」
と女子に声を掛けると意外な返事が返ってきた。

「洗わないわよ。どうして?」

「どうしてって、朝だから、顔を洗うべや」
「でも、あんた、去年私たちに、言ったじゃない!」

「なんて」
「キャンプに来て顔洗ったり、歯磨きする馬鹿いるかって!」

「そんなこと、言ったか?」
「言ったわよ! だから今年は洗っちゃいけないと思ってたのよ!」

こういうさりげない風景が好きだ。知らないうちに撮影してくれた友に感謝。


そう言われればそんな気もした。キャンプという非日常的な中で、いつもと同じルーティンを持ち込むのは馬鹿げている、顔を洗うならサロマ湖の水で洗えばいい ―― そのくらいに思っていたのは確かだった。

よって、女子からは「まったく無責任!」と軽蔑されまくる始末。だから、卒業アルバムにこんなことを書いた女子がいたのも当然か。

3年間なんてあっと言うまに過ぎ去ったけど、入学式の時変な人だなあと思ったけど、やっぱ変だった。もうお別れだと言うのに、こんなこと書いて悪いけどさぁ、教室で一番みだけて(乱れて)いた貴方のことは、忘れたいけど忘れられないと思うよ…。


結構、無責任に振舞っていたのだろう。そんな気がする。だって、キャンプが終わった時、

「みんな、明日からしっかり勉強しようぜ。先生に『キャンプしたから』と言われないようにしようぜ!」

と、偉そうに檄を飛ばしたけど、僕が一番成績が悪かったのだから(汗)。



■♪ギターよお前は♪

中学の合唱部、そして高校3年間で行ったサロマ湖のキャンプ。あの時、もし片思いの人が一緒だったら、どうだったろう? 幸せだったろうか、それとも、近づけない虚しさが増しただろうか。そんな気持ちを振り返り、大学の時に歌にしてみた。


ギターよおまえは

1.ギターよ おまえは 覚えているかい
去年の浜辺の もう一つの影を
風に流れた お前の口笛を
やさしくつつんだ あの人の黒髪を

けれど今年は おまえと二人
波のささやきは 去年と同じ だけど
ギターよおまえは 分かってくれるだろ
さよなら告げずに 別れてきたことを

(語り)
悲しんだよ とってもさ。
だって 無理したんだ、いい人だったから
あれ、ぼく、ぼく泣いちゃうよ
でも、泣かないの…
泣かないんだから…
泣かないよ…

2.ギターよ おまえも 忘れて行くだろう
夕陽が重ねた 僕たちの影も
砂に残った 海鳥の足跡が
寄せ来るさざ波に 消されていくように

そして明日も おまえと二人
さわぐ潮風は 想い出語る けれど
ギターよ おまえも 分かってくれるだろ
なんにも言わずに 別れてきたことを

なんにも言わずに 別れてきたことを…。

(まこと)


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