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それに対し、戦前に来日した米外交官のグルーは「神道はそんなに悪いものではない」と弁護した。日本史に詳しい英外交官、サンソムも同じことを言っています。

それに対し、戦前に来日した米外交官のグルーは「神道はそんなに悪いものではない」と弁護した。日本史に詳しい英外交官、サンソムも同じことを言っています。
2022年01月04日
以下は前章の続きである。
東京裁判には誤った先入観多い
平川 
ハーンが日本の怪談に注目したのは日本人が神道で死後の世界をどうみているか興味を持ったのと同じですね。
ところが戦争中、神道は日本のナショナリズムのバックボーン(背骨)だと、特に米国で非難された。
それに対し、戦前に来日した米外交官のグルーは「神道はそんなに悪いものではない」と弁護した。
日本史に詳しい英外交官、サンソムも同じことを言っています。
ところが米紙ニューヨーク・タイムズは社説でグルーを名指しで非難したのです。 
戦争中、日本のものはすべて悪いことにされていました。
私は明治神宮の近くに住んでいますが、昭和20年4月13日の夜に米軍は明治神宮に焼夷弾を千数百発、集中的に落とした。
それで本殿が炎上して、炎が天に沖した。
今泉
それを実際にごらんになったのですね。 
平川 
西洋人の戦中の敵国憎しでできた先入観でもって神道や天皇制の日本を断罪するのは間違いがあると私は感じます。
戦後、同じような歪んだ見方で東京裁判が行われ、あれもずいぶん間違っている。 
戦中、日本論壇でナチスの非をはっきり述べた独文学者、竹山道雄が私の師で、その娘と結婚したものですから、竹山の没後、蔵書を引き継ぎました。
東京裁判関係の書物が多く、竹山先生がやり残した仕事もしたいと思いました。 
竹山は『竹山道雄セレクション』に収められた『昭和史と東京裁判』(藤原書店)で「日本も悪かったが、東京裁判の判決が認めた意味で悪かったのではなかった」と書いている。
その通りだと私も調べて思いました。
それで月刊「正論」で16回にわたって東京裁判を再検証させていただいたわけです。 
―編集部にも「連載を真っ先に読む」「楽しみにしている」といった声が多く寄せられました
軍備も精神も非武装徹底 
今泉
先生の連載では、GHQの手で日本人の精神の非武装化が戦後2~3年間に徹底的に行われたと記されています。
それに関連して印象に残ったのは、明治神宮外苑の聖徳記念絵画館でも、幕末から明治の壁画80点のうち、日清・日露戦争を描いた18点の展示が禁じられたことです。
実は、日本人がマッカーサー元帥に手紙を書き「軍国主義的だから撤去すべきだ」と進言したというのですね。
 
平川 
そういう時局便乗の正義派は、どこにでもいるんです。
そうして固められた戦後に出来上がったタブーを破った江藤淳氏の『閉された言語空間』(文芸春秋)は、米ウィルソン・センターで戦後日本の占領軍ならびにそれに協力した日本のマスコミ関係者による言論統制を調べたわけですね。
偉いなと思いました。 
昨夏、産経新聞の三井美奈・パリ支局長が東京裁判のオランダ判事、レーリンクの日記や手紙を紹介しましたが、これは興味深い(『敗戦は罪なのか オランダ判事レーリンクの東京裁判日記』=産経新聞出版)。
東京裁判の判事たちはこの程度の人だったのか、とよく分かる。 
ところで、竹山はそのレーリンクと面識がありました。
来日した連合国側の判事、検事の誰一人日本語は読めない。
日本の弁護団が提出した弁護資料もことごとく却下する。
それで公正な裁判など出来るはずはない。
その中で一番若かったレーリンクだけは、日本の事を知りたがった。
それで鈴木大拙以下の日本人にも会った。
裁判そのものについて竹山の意見もそれとなく聞いた。
竹山から言われて、レーリンクは広田弘毅元首相や東郷茂徳外相、重光吾元外相、畑俊六元陸軍大将らは無罪ではないかと考え直したのです。 
東京裁判を論じる人はレーリンクが竹山から感化を受けたことに言及してしかるべきなのですが、日本の歴史学研究会の左派の学者たちは一切、触れません。
史実を伏せる、こういう人たちは卑怯だと思いましたね。



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