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中国景気の先行きは全人代次第

中国で春節前後の長期休暇が半分を過ぎた。当局からは春節期間中の旅行者数はのべ21億人に達するとの見通しが出ている(図表)。これはコロナ禍に苦しんだ過去3年間に比べ明確に多いが、19年との比較では7割程度である。中国経済は今もって「全戻し」ではない。

中国でゼロコロナが撤回されたのは12月であり、政策転換からまだ2か月も経っていない。コロナ前への回帰速度で参考になるのは、20年11月にワクチンを獲得した米国である。高頻度データである国内旅客者数によると、正常化開始後に人流がコロナ前の水準に戻るまで約6ヵ月かかった(図表)。仮に中国で春節時の消費が冴えなくとも、景気の復元力に見切りをつけるのはまだ早い。

とはいえ、中国景気の復元力が今後100%発揮されるかもまた疑わしい。ゼロコロナの足枷が外れても不動産の足枷は完全には外れていないためである。不動産業、その背景である不動産価格が戻らないことには中国経済の本格回復は遠い。

政策的な圧力を背景に、不動産価格は上値を抑えられた状態が続いている。このことは先行指標である住宅販売床面積が低迷していることからも今しばらく続くことが予見される(図表)。ニュースのヘッドラインでは「中国不動産テコ入れ」の文字が躍るが、現実問題として販売が上向かないことには価格が上向くこともまた難しい。

不動産価格が上向かない(ないし下落する)ことは、担保価値の下落を通じ経済全体を停滞させうる。社会融資総量に含まれる新規銀行ローン(家計+企業)は2021年以降完全に横這いとなっている(図表)。担保の価値が上がらないのだから融資が増えない=景気が停滞することは道理である。止まった融資の先にあるのは、実現するはずであった雇用や設備など実体経済そのものである。

昨年12月時点で中国不動産業に明るい兆しはまだ確認されていない。本邦投資家が好むkomtraxは12月も引き続き低迷している(図表)。その他粗鋼、セメント、板ガラス、ショベルカーなど、建設に必要な財の生産も軒並み冴えない(図表)。足元で資源価格や資源関連株が上昇しているが、期待先行の面が大きいだろう。

無論、先ほど挙げた状況証拠を吹き飛ばすような政策が打ち出されれば現在の値動きは正当化されるが、習近平主席は必ずしも共同富裕の旗を下ろしたわけではなく、政策担当者も不動産を噴かすような政策は取りにくいのではないだろうか。資源価格や資源株の上昇は、必ずしも強いストーリーに裏打ちされたものではないとみる。他方、中国政府が強調しているのが消費振興であり、政府がより強く打ち出すならこちらではないだろうか。

市場は中国景気の回復に様々な分野でベットしており、中にはやや行き過ぎとみられる分野も混在する。3月の全人代で財政赤字目標が市場を下回るリスクも引き続きあり、現在市場のマインドの一端を担っている中国景気、ひいては全人代の行方には引き続き注意を要しよう。

※本投稿は情報提供を目的としており金融取引を勧めるものではありません。

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