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育児も仕事もガムシャラにやってきた。次は頑張る女性たちの役に立ちたい。

あなたが、「これからどうしよう?」と迷ったとき、他の女性たちの話を聴いてもらうことで、なにかヒントを見つけられるかも。そんな思いで、【L100】自分たちラボが紹介する「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューエピソードも、第14回となりました。

今回のお話は、「目の前のことを懸命にやってきた経験が、全部つながっている」と語ってくださったゆきこさん(仮名)のお話です。

ゆきこさん(50代後半)
経歴: 家庭用品メーカー勤務。研究所を経て、40代は生活者研究部門、50代は品質保証部門で活躍。異業種交流などを通じてカウンセリングに興味を持ち、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント資格を取得し、社会人大学院も受験。息子さんは二人とも独立して、今は夫と二人暮らし。

#ライフデザイン #インタビュー #働く女性 #ワンオペ育児 #ワーキングマザー #社会人大学院

子供が好きで、子育てって面白いと思いながらも、仕事は辞めまいと頑張ったゆきこさん。子育てが一段落して仕事にギアが入り、天職と思ってやっていた部署から異動となり、50代で自身の棚卸しをしたとのこと。定年後を見据えて資格をとり、大学院の受験も。そして、ゴスペルやテニスも楽しんでおられる。「今」が最も満足度が高いというゆきこさんが、そこに至った経緯とは?

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?

50代でキャリアの棚卸しとしての振り返りをして、これから先を考えたりしたんですが、今回改めて10年ごとに見直してみると、大きな流れがあったなと思いました。10代の頃と今とでは価値観が違うので、曲線の高さをどうするか迷いましたが、縦の軸は「自分が自分らしく生き生きとしていられているかの満足度」で描きました。満足度が高いのは「今」ですね。
30代は子育て期で超多忙だったので、あえてグチャグチャにしました。

ゆきこさんが書いた人生曲線

怒涛の子育て期。仕事が7掛けでも、育児も仕事も頑張りたかった。

30代:出産・育児

―――30代はギザギザの線で描かれたのですね。
29歳で結婚して一人目が、2年後に二人目が産まれたのですが、ずっとワンオペ育児でした。夫は子供ができたら仕事を辞めると思っていたと思います。夫の周りでは、妻が働いている人はいなくて、「嫁さんが仕事をしているのか」と言われて「肩身の狭い思いをしているのだから、それだけで十分自分は努力している」という論理で、家事の協力はほとんどゼロ。自分の親には全面的に手助けしてもらっていましたが、この頃の記憶がほとんどないくらい、ガムシャラだったと思います。だから、曲線がグチャグチャなんです。
私は子供が好きで、自分の子供は絶対に欲しいから結婚したようなものなんです。子供はかわいくてしょうがなかったし、子育ても面白くてしょうがなかった。でも、どういうわけか仕事を辞める気にはならなかったんです。子供に対して「お母さん」を120%やってあげたかったけれど、仕事は絶対に辞めまいとも思っていました。その結果ジェットコースターのような毎日を過ごすことになり、無理がたたって私自身がダウンすることも時々ありました。

―――仕事は辞めない、と思ったのは何か理由があったのでしょうか?
しいて言えば中学の社会の先生(女性)が「仕事を持っていた方がいい」「資格があれば続けやすい」と言っていて、その言葉をすごく覚えていたことです。本当に「そうだよな」と思って、これって大きいですね。その時には学校の先生になりたかったんですけど、その後は、薬学とか医療系の資格を考えていました。
もう一つの理由は、私が男女雇用機会均等法2年生で、1つ上の先輩たちが、出産後も仕事を続けるパイオニアとしてやっている姿を見て、「できるんだ」と思ったことです。その先輩が、一人目は育休も取れずにいた私に、0歳児保育園の情報を教えてくれたりもしました。
私の両親には、しょっちゅう熱を出していた子供を看てもらったり、怪我の時には包帯を取り換えるため毎日通院など、とにかく頼りっぱなしで、足を向けて寝られないです。

―――今、その時期を振り返ってどう思いますか?
今となっては働き続けたことはすごく良かったと思います。私の性分なのかもしれませんが、「やろう」と思ったことは途中で辞めない。母や妹は専業主婦ですが、私は、自分の欲しいものを夫に尋ねてから買うなんてあり得ないと思ったんです。また、大学で資格は取らなかったので、仕事を辞めたら復帰できないだろうとも思いました。だから、仕事は7掛か6掛しかできなくても、辞めずに続けていた方がよいと思いました。結局それで良かったのだと思います。

仕事が本当に面白くてウキウキと輝いていた時期

40代:部署異動 子育ては一段落してギアチェンジ

―――その大変な時期がおさまっていったのは?
40代になって、研究所勤務からマーケティングのニーズ探索の部署に異動したんです。上の子が中高一貫校に入ったこともあり、そのへんから仕事にギアがぐっと入るようになりました。ニーズ探索の仕事は本当に面白くて、ウキウキと9年間夢中でやっていて、傍目で息子2人の成長を眺めていた感じです。ニーズ探索のインタビューの仕事は私に向いている、天職だと思ってやっていました。仕事で一番輝いていた時期だと思います。

異動で落ち込み、キャリアの棚卸しをしてみる

50代:再び部署異動 私らしくやればいい

―――50代の頭で曲線がぐんと落ちていますが。
品質保証の仕事へ異動して落ちました。それまで、与えられたところで楽しくやってきたのですが、このときばかりはちょっとショックでした。品質保証の仕事では、トラブルが起きたら帰宅できないこともあるんです。40代の頃の子供の年齢だったら続けられなかったと思うけれど、次男も大学生になり、仕事のことだけ考えればよいというタイミングだったのは良かったと思います。
上の人からは、ニーズ探索の経験を活かし、「お客様目線」で品質を見てほしいと言われましたが、最初の1年は本当にじたばたしました。他の部門から問合せが来ても誰に聞けばよいかわからないし、私は研究所出身と言っても製品の中身の研究経験はしていないし、鬼に金棒どころか、金棒しか持っていない状態。2年目になって、いろいろな人に聞けばいいんだ、ネットワークを広げればいいんだとわかってきて、それで曲線が上がっていったんです。

―――浮上のきっかけは?人に頼ればいいと気づいたきっかけはあるのですか?
私を品質保証に引っ張ってくれたセンター長の女性の言葉です。1年経った時、もう無理!と思ってセンター長に相談したら「シンドイのはみんなそう。経験がなくてもそのうちわかる。お客様目線が役に立つのかについては、もうちょっとやってみたら?」と、シンドイと思っていた部分をぱっぱと跳ねられてしまって。でもそこで吐き出したことで「私らしく」やればいいんだと思えました。人見知りでもないし、これまでに築いたネットワークや新たに頼りになる人にも巡り合えたので、このまま私らしくやればいいと。そこから経験値を積んで、他の部門の人から、「品質保証部門のゆきこさん」と言われるようになりました。それでグーッと上がりました。
私は人好きなんです。他の部門の人への飛び込み方は自分流で、ギブ&テイクの形で。そんな関連部門との関係なくしては、品質保証の仕事は成り立たないですからね。

カウンセリングで自分を知れた、自分の軸を持ちたい

今後について

―――これから先についてはどう考えていますか?
50代で資格を取ることにしたんですが、それはこれから先を考えてのことです。
品質保証に異動したとき、「もう50代だし、この先は自分のやりたいことを考えてもいいんだよ」と先輩に言われたり、異業種交流に出て人生100年時代の働き方を考えたりして、カウンセリングのようなことを定年後にやれたらいいかなと思ったんです。それで産業カウンセラーとキャリアコンサルタントの資格を取得して、この夏には社会人大学院も受験したんです。
そもそも人が好きだし、プラス、企業でワーキングマザーを続けてきた経験を活かして、頑張る女性たちの役に立てればいいなと思っています。60代になって延長雇用で残るならば、品質保証ではなく、カウンセリングの仕事をしたいですね。それとも、大学院を卒業してキャリアコンサルティング活動をするのもいいか、と漠然と考えています。

―――思い描いていたことと比べてどうですか?
多分私は、こうなりたいと思って進んでいく人ではないんです。目の前のことをどんどんやっているうちにいつの間にか、という人なんです。大学院を受けたり資格をとったりしているのも、道のりがすべてつながっていて、今、私はここにいる、と思えるんです。自分が大学院に行くとは夢にも思っていなかったのですが、心理学の理論で自分の課題意識を整理したい、心理学という武器、軸を持ちたいと思っています。
カウンセリングの勉強の一環で、今も産業カウンセラーに相談をしているのですが、最初に、「できないことばかりおっしゃっていますね」と言われ、その言葉がとても印象に残っているんです。品質保証の仕事に移った頃で、あれもできないこれもできないという話をしてしまったのですが、カウンセラーは、あなたはこんなに豊富な経験を積んできたのに、ここ最近のことだけ取り上げて、できないことばかりおっしゃっていますよ、と。それは目からウロコでした。
大学院に行くことも、「アカデミックの世界の人から見ると実務キャリアを積んだ人はとても貴重ですよ」と言われ、背中を押されました。

私ってこんな人だったのかとか、全部の経験がつながるんだということに気づかせてもらった。自分の中でグルグルしていたものが、「できないことばかりおっしゃっている」という一言でハァーとすっきりして、こういうことができるカウンセリングってなんてすごいんだろう、と思ったんです。

迷ったら自分の状況を書き出してみよう

女性たちへのメッセージ

―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージがありますか?
 すごく落ち込んだり、自分が何をしたいのかわからなくなってしまったりした時は、自分の状況を書いてみる。文字にして吐き出してみるとよいです。「何が苦しいのか、何が気持ち悪いのか」「あの人がこう言った、でも私はこう思う」など。書いたものを眺めてみると、「あ、こういうことか」と自分がこだわっていることや、嫌がっていることの本質が見えたりするんです。あぁそういうことかと気づいたら、違うアプローチをしたり、気晴らしをしてみたり、気の合う人に吐き出したり。吐き出せない人でも客観視ができるので「書いてみる」ことをお勧めします。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか? 
楽しかったです。カウンセラーさんに相談していることは50代のこと。それより前のことは相談していないので、今回(インタビューに参加して)、中学時代の自分のルーツも思い出せました。人生曲線をグチャグチャ描けたのも良かったです。
(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーコメント

目の前のことに一生懸命に取り組んでいくことで、困難を乗り越えてきた方だと思います。「続けることを大事にする」「周りの人の助けをうまく取り込める」というご自身の特性や、ワーキングマザーとしての経験に、学問的裏付けが付加されると、これこそ「鬼に金棒」の状態になるのではないでしょうか。豊かな表情で話がどんどん弾む方で、時間を忘れてのインタビューでした。ゆきこさんのこれからの活躍が楽しみになってきました。

【L100】自分たちラボ からのお知らせ

ライフデザイン研究会【L100】自分たちラボでは、働く女性に対するインタビューを行っています。詳細は『働く女性の人生カタログ』~プロローグ~をご覧ください。

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