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木漏れ日の道 

五月のいい風が吹いている。

こんな天気の日は、あそこに行かなきゃ。

大きな公園の隅っこに、あまり人の通らない小道がある。

小道の突き当りには木造の小屋があり公園の管理道具置き場になっている。

まるで、童話に出てくる森の不思議な小屋。

小道の両側には欅やイチョウ、モミジバフウなど大きな木が鬱蒼と茂っていて薄暗い。

この季節は緑が美しい。

誰もいないこの小道に、両側の木の上から無数の木漏れ日が差し込む。

公園の中心より温度が低く、ひんやりとした空気。

静かだ。

スズメやシジュカラなどの小鳥の声以外は風の音だけ。

時折強い風が吹くと、木の葉のざわめきが潮騒のように広がる。

差し込む日差しも揺れて、海の中から水面の光を見るようだ。

足元の草むらを見ると、小さな白い蝶が2匹チラチラと飛んでいる。

湿気を感じさせないカラッとした風。

まだ暴力的ではないが、白く眩しい日差し。

草や木の匂い。この懐かしい匂い。

春と夏の間の、むんとするほどの緑の季節。

草木の勢いが強いからこちらまで生気が増す。

なんだか光合成だって出来そう。

寝不足で疲れた目に清涼剤の景色。

毎年、一人で楽しむ五月の光と緑。

秘密のささやかなパワースポット。


絵 マシュー・カサイ「木漏れ日の小道」 水彩・ペン


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