見出し画像

月明かりの街 海月の夢

白い月光の中、街を歩いた。

満月の明かりは静かに街を照らす。

今日は満月。それも、スーパーブルームーン。

夜なのに、空の遠くまで見える。

街は昼間の喧騒はなく、別世界のように静かだ。

時間の流れがゆっくりしている。

ビルや街路樹、花壇の花々、街灯まで、みんな月を見上げているような気がする。

月光に力を得た雲が、大きくうねって大空を征く。

月から吹き下ろす風が、かすかな歌声とともに頬を撫でる。

物語が始まる不思議な青の世界。

見上げた大きな月から目の奥に光が差し込んだ。

一瞬のめまいの後、目を開けると世界は一変していた。

町の風景は海の中になっていた。

高層ビルは深海から聳える巨大な岩礁群になり、広場になっていた足元は真っ黒な深海になっていた。

レストランや商店の明かりは、岩礁群にへばりつくサンゴや発光プランクトン、ホタルイカの群生に変わり、キラキラと輝いている。

見上げるとはるか上空に海面が広がり、月の明かりを受け煌めいている。

雲は巨大なクジラやマンタやダイオウイカに変わり、悠々と海を泳いでいる。

呆然として自分を見ると、小さな白いクラゲになっていた。

燐光を発しながら海中に浮かんでいる。

手を伸ばすつもりで触手を伸ばしてみる。

ふーん、クラゲだったんだ。

なんとなく納得した。

ユラユラと揺れながら、周りの景色に見とれていた。

ちょっと怖いけど、雄大で幻想的な海の中。

どっちが現実でどっちがまぼろしなのか。

まあ、どっちにせよちょっと冒険してみよう。

ふわりふわりと泳ぎながら輝いているサンゴ礁の方へ向かった。

ワクワクしながら、流れに乗り移動する。水流の感触が気持ちいい。

ふと、思った

元に戻れるかな?

まあいいか。

だって、今夜は、大きな満月の怪しい夜。



絵 マシュー・カサイ「月明かりの街」水彩・鉛筆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?