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天空カフェ 忘れていた景色

テレビに映し出された景色を見て息をのんだ。

この景色。

見たことがある。

雄大に広がる空と、鏡のようにそれを写した浅い水面。

どこまでも広がっている。

テレビの声はボリビアのウユニ塩湖の景色と言っている。

そんな場所は知らない。

夢だ。夢の中で見た景色だ。

完全に忘れ去っていた。

記憶の深く暗い海の中から、突然鮮やかに蘇った景色。

思い出した。

あるとき、私は広い海岸のような場所でテーブル席に着き熱いコーヒーを飲んでいた。

これは夢だろうという認識はわずかにあった。

足元は浅い水に覆われ、裸足であった。

広い場所のあちこちに似たようなテーブルと椅子があり、そのいくつかに人影が見えた。

遥か彼方まで続く水辺に点々と席が用意されている。

天空カフェ、そんな言葉が浮かんだ。

水平線には日没前の太陽が見え、最後の光彩を放っている。

足元の水面にもその景色が映り、まるで空に浮かんでいるような壮大な空間が楽しめた。

沈む太陽から吹き付ける海風は柔らかく、頬や髪をなでていく。

静かだ。

周りのテーブル席の人影も動かない。

熱いコーヒーの香りだけが現実的だ。

ここ、いいな。

思わずにっこりしながら壮大な夕陽のショーをながめる。

強まる夕陽の輝きの中にテーブル席の人々は飲み込まれていく。

私もうっとりと楽しみながら白い光に包まれていった。

夢の中で意識が消える。



絵 マシュー・カサイ「天空カフェ 忘れていた景色」水彩



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