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【第5回】匠大塚会長がそれでも家具販売に「説明と接客」を貫く理由を読んで

~大塚家具創業の地から徒歩3分に住むMBAデザイナーnakayanさんが読み解く~

2018年1月17日公開:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ
https://ameblo.jp/naka-yan/entry-12345247422.html 


▼2018年1月15日付 ダイヤモンド・オンライン掲載記事

(以下記事内一部転載)
桐箪笥職人だった父の下で商売を学ぶ

私が生まれ育ち、大塚家具の創業の地でもあるのが埼玉県春日部市だ。ここは家具と共に生きてきた町だと思う。

江戸時代の初期に、日光東照宮の造営に関わった腕のいい宮大工たちが、日光街道の宿場町であった「粕壁」に住み着いたのが今の春日部の始まりと言われる。彼らは、作った長持や指物を船に乗せ、現在の大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)を下って江戸に向かい、着物をたくさん持っていた江戸の富裕層に売っていた。…

「流石です!ニッチャーの雄らしい戦略です。常識を覆す周りと違う事をやる!」 

市場において家具を求める消費者ニーズが変化した現状において、あくまでも緩やかな縮小を許容した現状維持を目的とするならば、これまでのニッチャー戦略を継続しても問題ないのかもしれません。しかし、チャレンジャーやリーダーへと成長することは望めません。仮に、消費者ニーズがニッチャー戦略を後押しする状態ならば、ニッチャー戦略を継続することでチャレンジャーの地位に自動昇格可能なケースもありますが、残念ながら現在の消費者ニーズはニッチャー戦略を後押しするところか、むしろ縮小させるニーズになっていると言えます。 

191115マズロー欲求5段階説

市場全般における消費者ニーズを、マズローの欲求5段階説(※図参照)に当てはめて考えるならば、かつての高度成長期(1954-1973)の消費者ニーズは低次の欲求である生理的欲求や安全欲求をベースとした社会的欲求を満たすことにありました。この社会的欲求を換言するならば、「中の上の暮らし」と表現できます。 消費者たちの多くは中流階級に位置し、この中流階級のニーズは、「周りと同じことをし、周りよりも少し高級品を手にする事」で満たされていました。 

飽食の時代への入り口となったバブル期(1985-1991)の崩壊以降から経済は低迷し貧困層が増加する中、モノ自体の供給は豊かな状態が続くことで慢性的なデフレ経済となり、2001年小泉内閣が発足し大幅な規制緩和を行なったことにより「セルフ・ヘルプ(自助努力の精神)」を有する一部の消費者は富裕層への入り口を手にしましたが、結果的には残りの大半が貧困層に陥るという消費者の二極化を加速させることになりました。つまりは、かつて消費者が一元化していた時代とは異なり、消費者ニーズは大幅にパラダイムシフトしているのだと言えます。 

飽食の時代における消費者ニーズとは、マズローの欲求5段階説における低次の欲求がすでに満たされた状態が前提条件となり、高次の欲求である承認欲求や自己実現欲求を満たすニーズが高まることになります。この高次の欲求を満たす為には、「モノ」よりも「コト」の方が適していると言えます。 換言するならば、消費者が求めているのは高価な製品という「モノ」でなく、製品やサービスを通して体験や経験出来る「コト」であると言えます。つまりは、「モノ」が求められていた時代においては、この製品やサービスには、どんな背景となるストーリーがあるのかという要素が、「モノ」の価値を決めニーズを増幅させる要因になっていました。

しかし、消費者ニーズがパラダイムシフトした現在においては、この製品やサービスを購入するとどんな体験や経験ができるのかという「コト」が重視されるようになり、製品やサービスの購入を決める際の判断材料に大きな影響を与えるようになっています。 もちろん、これまで重視されていた背景となるストーリーが全て不要になった訳ではありません。背景のストーリーがあるに越した事はありませんが、無くてもいいということです。むしろ、製品やサービスの購入を通してこれから先の未来に、どのような体験や経験が齎されるのかという「ワクワクした期待感」が必要とされています。 

更には、このパラダイムシフトによる消費者ニーズは前述したような「モノ」から「コト」への単純なパラダイムシフトではなく、これらの要素に消費者の経済状況が二極化しているというファクターが4次元的に加わる事で「複雑系のパラダイムシフト」に変化しつつあるのだと言えます。 

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